どうしても生きてる
朝井リョウさんの「どうしても生きてる」を読みました。
6編からなる短編小説です。短編小説と言うには壮大すぎるほどの、どうしようもなく生かされている6つの、いやそれ以上の人生たちです。
その人生のそれぞれについて 私の中で浮かんだことを。
1、健やかな論理
再配達を頼んだ人間は自殺をしないのか。違和感なく存在する論理を嫌う狂気。世の中は矛盾こそが美しい。(ただ、意図された、美しさのために計算された矛盾は美しくないとおもう。) 大きなきっかけがなくても、まあいっか、とすべてを捨てたくなってしまう瞬間が不意にくる。不意に、誰かを愛おしくなる瞬間だってくる。
2、流転
そうじゃない人生を送りたかった。それが叶うのは限られた人間だけ。少しずつ嘘も覚えて 誰かにも自分にも。だからこそまっすぐに生きている人間が輝いて見えて、同時に羨ましくて大嫌いだった。
3、七分二十四秒めへ
この世の中は、生きづらい。ちゃんと、うまく、生きようとすればするほど、その生きづらさに苦しめられていく。社会は生きていくためのたくさんの情報が溢れているはずなのに 私の命を延ばし私を生かしているものは、そんなものより、誰のためにもならないような ”情報” だったりするのです。
4、風が吹いたとて
ルールを破る人間も 誠実な自分に苦しむ人間も 傍観しているふり、をしている人間も 正義を外から振りかざしてくる人間よりはよっぽどマシ。正論を言うことでしか自分の地位を誇示できない人間、いいからさっさと自分の人生生きろよ。家族のため子どものため、愛し合ったことを忘れてしまっていく。あぁこれが夫婦か、ってリアルだなって思ったけど、そんな悲しくて寂しくて空っぽに見える日々でも、共に過ごす相手がいることが、私には少し羨ましく見えた。
5、そんなの痛いに決まってる
限界のときに限界だと 痛いときには痛いと そう言える場所はありますか. 大人になればなるほど、世界を知れば知るほど、思ったことを何も気にせず漏らせる場所が減っていく、プライドはって人の目気にして、大丈夫じゃないのに大丈夫って。誰も私も 私を知らないところへ行きたい。
旅が好きだ、遠くの旅が。あなたが旅を好きな理由はなんですか。
6、籤 (くじ、と読みます)
私たちが普段感情を動かされるフィクション、のように 人生はうまく切り取られてはいません。どうしたって、決断も、明日もやってくる、カットはかからない。
私は当たり籤の人生か、外れ籤の人生か。答えることができない、のは私がきっとまだそこまで人生を歩めていないから。だから期待をしてしまうし、満たされることができない。だから、人生は間違える。
以上です。以下、全体の感想です。
どうしようもない、どうしようもなく生きてる のだけれども、それで済まされないのが人生なのではないだろうか。
この作品の中の人生は、どんなハッピーエンドの物語よりも、感動的な物語よりも、人生でした。どこまでも人生でした。これが生きるってこと。私としては 籤 が一番刺さりました。(結局どれも最高で最低でしたが!)
人生の重さに、最後少し泣いてしまいそうになりました。と同時に、こんな本が本棚に並んでいる人と 生涯生活を共にしたいな、と思いました。
それぞれの人生に触れて自分を深掘りし、感じたことを書かせていただきました。しかし、ネタバレの要素はほぼ入っていません。ので、この私の文章を読んでおもしろいと感じてくださった方は 作品を読んでいただければもっと楽しめると思いますし、自分なりに解釈することも楽しんでいただければと思います!
私の人生観を作ったと言っても過言ではない作品です。この年で この時代で、この作品に出会えたこと、私はとても幸せなことだと思います。
ー幻冬舎「どうしても生きてる」 朝井リョウ
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