手抜きではなくシンプルという考え方
一時期、丁寧な暮らしというのに憧れた。
前日にとっておいた出汁で、体を目覚めさせる朝のおみそ汁とか。下ごしらえに余念のない、じっくり時間をかけて仕上げた和定食とか。
現実は、平日は18時まで仕事をして、それから遅くなり過ぎないように夫とふたり分の夕飯を手作りするわけで、とてもじゃないけど丁寧に料理しているヒマは、ない。
とはいえ、私は食べることが好きだ。お酒も大好きだ。
たとえ節約でも、ダイエットでも、自分がおいしいと思えるものを食べたい。我慢して食べるのは違う、と思う。
講談社文庫の『彼女のこんだて帖』という短編集のなかで見つけて、ずっと共鳴している言葉がある。
節約だから、ヘルシーだから、時短だから、手抜きで作れるからという理由ではなく、おいしいからをいちばんに考えたい。
とはいえ、毎日丁寧には暮らせそうにないから、シンプルに作れておいしいもの、というのが、平日ごはんのテーマだ。
今のところの、その成果をまとめてみた。
朝時間の有効活用
私は早起きが得意で、基本的に朝時間には余裕がある。
モーニング・ページをつけて、朝ごはんを食べて、新聞を読んだり洗濯をしたりエトセトラ。それから平日の2〜3回はキッチンに立ち、お昼や夕飯に食べる作りおきをしておく。
たとえば薬味たっぷりの味玉。
半熟が好きなのでたまごの茹で時間は約7分。そのあいだにハンドルをブンブン引くだけでみじん切りできる文明の利器(キッチンツール)で長ねぎと玉ねぎを刻み、調味料と合わせておく。
そこに殻を剥いたゆでまたごを加えて、冷蔵庫で漬け込む。朝作っておけば夕方には食べごろになっており、がんばった1日のお楽しみとご褒美を兼ねられる。
じゃがいもがあればいい
じゃがいもは遮光性の袋に入れておくと、常温で長期間保存がきく。そしてビールやハイボールに合うレシピが数多く、我が家の食卓に欠かせない野菜だ。
たとえば、コロコロとしたサイズに切ったじゃがいもに片栗粉をまぶし、油を多めにひいたフライパンで火が通るまで焼く。バターと塩昆布、めんつゆで調味したら外サクッ、中ホクッの1品が完成。
もうひとつ、細切りにしたじゃがいもをフライパンで炒める。挽き肉と刻んだ搾菜を加えて、醤油、砂糖、酒で味付けする。食べる直前にラー油をまわしかけると最高。朝作りおきしておく場合が多い。
大本命が、じゃがいものロースト。オリーブオイルと乾燥ローズマリー、塩を絡ませたじゃがいもをクッキングシートに並べ、200度に余熱したオーブンで30分加熱すればできあがり。ワインを飲むときにもよい。
※いずれもじゃがいもはカットした後水にさらし、しっかり水気を拭き取ってから調理している。
火を使わないって有り難い
生のまま食べられる野菜や刺身用の魚介で1品作るのも、個人的にはハードルが低くてやりやすい。
たとえば、お気に入りにスペインのサルピコン風というのがある。パプリカや玉ねぎなどお好みの野菜を小さく角切りにし、同じく食材と馴染むようにカットしたゆでダコと合わせ、塩、オリーブオイル、レモン汁、ブラックペッパーでマリネして完成。
魚介が高ければ、きゅうり、トマト、玉ねぎだけを角切りにして混ぜるだけのサラダでもおいしい。タバスコでピリッとさせるのもお気に入り(玉ねぎは事前に水でさらして苦味をとっておく)。
ズッキーニを細切りして、しらすと和えたもの(オリーブオイルと塩でシンプルに)。スライストマトに、刻んだ甘らっきょうを汁ごとかけて冷やしたもの(塩をかるく振ると味が引き締まる)。
言わずもがな、これがまたどれもお酒に合うのだ。
【おまけ】電気圧力鍋には頭が上がらない
去年、両親から結婚祝いとして電気圧力鍋をもらった。
最初は、生活に馴染むほど使いこなせるか不安もあったが、「加圧3分(トータルで45分くらいで仕上がりのブザーが鳴る)」でトマト缶を使った野菜スープも、鶏むね肉ときのこの黒酢煮込みもほったからしで作れてしまうのだから、頭が上がらない。
特に鶏むね肉のしっとり柔らかい仕上がりときたら、安いから、ヘルシーだからという理由を軽々飛び越えて、シンプルにおいしい。でもやっぱり料理によっては、もも肉のほうがおいしい場合もあるので、そこは我慢しない。
人生で食べられる食事の回数は決まっている。そう思うと、毎日おいしいものを食べたいという自分の思いには、手を抜きたくないなと考えている。
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