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共感される書評の書き方。大切なのは●●であること

「書くことが好き」そう思うようになってから、書評はずっと気になるジャンルのひとつだった。自分の書いた文章で、自分がよいと思った本を、誰かが読もうと手に取ってくれるかもしれない。これって、とてもワクワクすることじゃないだろうか。

だから『書評の仕事』(印南敦史/ワニブックス)をAmazonの新刊コーナーで見かけた時、これは必ず読もうとチェックした。

著者の印南敦史さんは、複数のウェブメディアで年間500冊もの書評を執筆している人。生活や仕事に役立つ情報を紹介するウェブメディア「ライフハッカー」で、土・日・祝をのぞいて毎日書評を公開している人、といったほうが、この本の著者紹介としてはぴったりかもしれない。

念のため、この記事を書いている途中でライフハッカーにアクセスしたら、やはり土・日・祝をのぞいて書評記事が公開されていた。2012年8月から、すでに約7年半もの間、ライフハッカーで書評を公開し続けている人、それが印南敦史さんなのだ。

この本に、文章の書き方はひとつも出てこない。と、言ったらウソになるかもしれないけれど、文章術と呼ばれる類のものはないはずだ。しかし『書評の仕事』を読み終えた今、私はなんだか、書評が書ける気がしている。

書評とは何か、どんな書評を書けばいいのか。書評家の1日、お金のこと、本の選び方など、書評を書いてみたいと思う人が知りたいであろう、そのすべてが詰まった1冊である。大げさではなく、書評の仕事がしたければ、この本を読めばいい(もちろん、趣味のブログで本のレビューをしたい人にもおすすめだ)。

この本を読んで、ひとつ刻んでおきたい言葉ができた。これは書評に限らず、文章を書くすべての人にいえることでもある。

それは、「誠実である」ということだ。

書評家としてすべきことのひとつに、印南さんは「(読者の)共感をつかむこと」を挙げている。そして読者に「読んでタメになった」「いい情報を得た」などの“おトク感”を提供し、読んでみようと思ってもらえることを書評の仕事としている。

しかし共感してくれる人がいれば、反感を抱く人も必ずいる。ネガティブではあるが、反感もまた、ひとつのリアクションだからだ。

好意的な人がいれば、そうでない人もいる。だとしたら、後者が納得せざるを得ないような文章を書くことが書き手の役割なのではないでしょうか。
そしてその際、やはりなによりも重要なのは「誠実さ」だと思います。(p.200)

どんなにいい書評が書けても、どこからともなく反感は生まれてくるものだ。だったら書評家にできることって、読者に、そして書くことそのものに「誠実」であることじゃない? ということ。

誠実さとは、反感は避けられないことだから…と手を抜いたり、開き直ったりすることではなく、文章に隙を作らないように完成度を高めていこう、という姿勢なのだ。

その文章が誠意を感じさせてくれるとしたら、たとえ筆者の主張が自分の意見とは正反対のものだったとしても、読者は不快感を覚えることはないはず。「自分とは考え方が違うけれど、この人にはこの人なりの考え方があるんだな」と受け入れることができるということです。(p.69)

書評をしてみたいという人の多くは、書くことと同じくらい、本が好きな人が多いだろう。

そんな人たちが選んだ本の書評を、私はたくさん読んでみたい。そしてやっぱり私も、こうしてお気に入りの1冊を紹介していきたいと思うのだ。


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