「好きなことやりたい」じゃなくて「嫌だと言いたい」だった。
平日の昼、息子の病院の帰り道、保険会社のお姉さんに声をかけられた。
「子育て支援に力を入れてまして〜」以下略。
私はめちゃくちゃ騙されやすい純真無垢なハートを持っているが、ラッキーなことに元営業マンだ。
感じよく話しかけて無害を装い、心に寄り添うように見せて自分のノルマのためだけにセールスする人もいることを、ちゃんと知っている。
育児中の家庭は保険のニーズがあり、狙い目だ。
初見では、善意が本心から来てるかわからない。
が、知らないフリしてはい、はい、と話を聞く私。
説明するのが面倒なのだ。
は〜いって言って、バラマキちらしを貰って開放されるなら、それでいいと思った。
ちなみに話を聞いてる間も、息子が
「見てこれはっぱ🌿!」(手に持ってた)
「これからお買い物行くの!」
「お荷物いっぱいだね、何入ってるの?」
とお姉さんに絡みまくっている。
お姉さんが反応してくれてたから私は無視した。
「最後に、職業などのアンケートいただいてもいいですか?」
…職業!
これはめんどくさい。
まず今の私の職業は?一応まだ会社員だが休職中。主婦か?ライターとは書けない。説明がめんどくさい。
あと、知らないフリして聞いてたのに同業種かい!ってなるの、お互いに恥ずかしい。
と、思うものの、「○○いいですか?」と聞かれると「はい」と勝手に口が答えてしまうので、最大限の抵抗としてすごい嫌そうな(当社比)「はい」が出た。
そしてお姉さんがアンケートを出そうとバッグをゴソゴソしてる間に考える。
こうやって嫌なことを嫌だと言わないから私は変われないんだ。
実は、断った方がいい正当な理由もある。
それを言わずにアンケートを書いて情報を与え、お姉さんにとっての「新規顧客候補リスト」になるのは、お姉さんにも無駄な期待と手間をかけることになるのでは…?
断ることが、お互いにとっていいことなのでは…?
私は決意した。
「夫の親戚が〇〇生命さんなんです。だから、ややこしくなると思うから、やめます。あと買い物行くんで…」
お姉さんは、嫌そうな顔をせず、そうでしたか、と去っていった。
できた。
言えた!
嫌だと、言えた!!
爽快感が凄まじかった。嬉しかった。
お姉さん、嫌な顔してなかったな。
いい営業さんだな。
買い物行くんで、は別に余計だったな。
そして思う。
次からはもっと早く断った方が、お互いにとって利益があるな。
相手を傷つけたくなくて、嫌と言わないことは、全然美徳じゃない。
薄々、わかってはいたけれど。
私の変なこだわりだったのだ。
はじめて、そのこだわりを捨てられた。
こうして、これからひとつずついらぬこだわりを捨てるのだ。
たった一度、それができただけでも、すごく身軽になった感じがした。
昨日までの自分とはまるっきり違う気すらする。
私は嫌なことを嫌だと、言いたかったのだ。
もし結局やることになるとしても、嫌である、という意思を伝えたかったのだ。
どんなに好きなことをしても気が晴れないのは、その効果が薄いのは、少しでも嫌なことがあると、私の中の「嫌なことを嫌と言いたい中学生の私」が、いちいち反抗しているからだ。
本当に、気づけてよかった。
これからこんなことが山ほどあるはず。
なんてワクワクするんだろう。
そうして身軽になったら、
ふわふわ自由に羽ばたいていきたい。
それでは。
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