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新しい出版のカタチー第2回ー「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」に参加してきた備忘録

 LINEノベル 新しい出版のカタチ 第2回「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」参加してきました。

 ものすごく脱線しながら備忘録的に綴っておきます。まずは自分で感じたことを書こうと思ったので、公式のレポートは未読です。解釈違いがあったらごめんなさい。ちゃんとしたレポートをお探しの方は他あたったほうがいいかもです。

開催場所

 開催場所は六本木「文喫」。入場料は1500円(19:00~23:00は1000円)で、時間内は好きなだけいていいみたい。今回はイベント参加なので、受付でその旨を伝えて、バッジをもらって中に入ります。

 しょっぱなからオシャレ空間にちょっと気後れする。すごく素敵な空間でした。
 カテゴリごとに分かれた書架にずらりと、そして美しく配置された本たち。それだけでもちょっとテンション上がる。大判の写真集や美術書もたくさんあった……と思う。実は時間があまりなくてちゃんと見ていない。(ざんねん)店内の本はすべて購入できるようです。

 店内には集中できそうなデスクがあり、開放的なテーブル席があり、ゆったりソファ席がありました。ドリンク&フードを提供するカウンターでは、コーヒー・煎茶が飲み放題。煎茶が濃くておいしかった……もっとがぶ飲みしたかった。有料のフード類もあっておいしそう!

 そして、とても静かな空間でした。

 T-SITEもソファやベンチで自由に本が読めるし、カフェも入っている。しかも入場は無料。飲食をしなければ、お金はかからず本は読み放題。

 それは曲がりなりにも本を出したことのある人間としては微妙に切ない気持ちにもなるのだけれど。自分の本がその書店に置かれることがなかったとしても。消費者としては、座って吟味できるというのはありがたいですが。

  しかし、その手の店はいつもいい席は埋まっている。それにちょっとガチャガチャしている。他にもカフェと合体している書店はあるけれど、落ち着いて読みながら選ぶという雰囲気ではない。

 だから、静かに読書をしたいのなら、1500円払ってこういうところを利用するのもアリかなぁ。そのお値段なら文庫本2冊買ってドトール行くわ! という考えもよぎったけれど。
 静寂にお金を払うというのはなんとも贅沢で美しい行為のような気がするので、たまにはそういう時間を買うというのもいいかもしれない。

イベントのはじまり

 さてさて本題です。
 席もみっしりと埋まり、イベントの始まり。
 登壇されたのはこちらの4名。

 森啓さん:LINEノベル事業プロデューサー
 高橋裕介さん:新潮文庫nex編集長
 三木一馬さん:ストレートエッジ、LINEノベル編集長
 河北壮平さん:講談社タイガ編集長

 こんなに編集さんが集まってお話をされる機会なんてとても珍しいのではっ? と興味をひかれてLINEノベルがどんなものかよくわからないまま秒で申し込んで、無事チケットをゲットしたのでした。(第1回は気づいたときには終わってた……)

 いやなんか、いつも思うんだけど、頭のいい人ってだいたい話が上手だなぁ……と。わかりやすくて面白い。
 
 発言する、受け取る、また発言するの流れがとてもスムーズで聞いていて飽きない。職業柄なのかなぁ、コミュニケーション能力が高いのだろうなぁ。

 今回登壇された4名は、和気あいあいとお話されている体を保ちつつ、テーマに沿ったご自身の体験や思いを表現されていて、すごいなぁ。
 前回は司会の方がいらしたようだけど、今回は三木さんがその役割をしていらしたのかなという印象。楽しく進行しつつ、さりげなく他の方にお話を振る感じが素敵でした。場を回すって特殊技能だと思うのですよ。

 ここからは、特に印象に残ったところを感想を交えつつ書いておきます。

編集者の役割

 自己紹介のあと、それぞれ編集者の役割についてお話されました。

◉編集者黒子論
 編集者にはプロデューサー、ディレクター、マネージャー、タレントの四つの顔がある。(タイプがある?)

 以前は編集者は黒子で縁の下の力持ち的な役割だった。作家=タレント、編集者=マネジャーのような関係。現在はタレントのように前に出る機会が増えた。

 タレントの顔を持っているのは、一部の名物編集者と呼ばれる方だけの気がします。多くの人がイメージするのはマネージャー的な存在かなぁと思う。実際の業務はそれだけではなくて、というか、仕事多すぎないですか、編集さんて。

 わたしは作家も前に出てほしくないなぁと思っています。だから作家さんがテレビとか出てると、うーん……ってなる。その人のイメージが先行すると作品を楽しめなくなるかも、と思ってしまうのだ。読みながら作家の顔がちらちらしたら嫌だなぁ、と。作品の裏話とか、興味もあるけれど、聞きたくない気もしている。

 作品は作品として、独立した世界として存在して欲しいという、こんなに情報が溢れた世の中では非現実的なドリームを密かに持っているのだ。

◉ディティールに真実が宿る
 細部を作り込まなければいけない。ディティールにこそ真実が宿る。

 これはほんと、それな!!!!! ってなりました。

 『神は細部に宿る』というのは建築家さんの言葉だったか。建築の意匠を集めた写真集で知った……気がする。(記憶曖昧)

 小説だけではなく様々な創作物で言えることだと思う。意外に、嘘くせって感じちゃうのって、ほんの小さなことだったりする。それはねーよって思うのは。それは設定とか物質の描写だけではなく、心理描写もそう。いやいやいや、なんでそう思っちゃうのよ??? ってなると冷めてしまう。本を閉じてしまう。酷いときは投げる。リアルに投げたことある。わたしも投げられたことがあるかもしれない。(あー)。

 もちろんわくわくドキドキはらはらも必要だけれど、読者を現実に引き戻さず物語世界に引き留めるのは、そういう地道で繊細なディティールなのかなと思う。

◉情報を売るということ・時間の効率化
 たとえばファッション誌は、ライフスタイルを提供する。情報にアクセスする時間を省略できる。このようなライフスタイルを得るにはどこのブランドの何を買えばいい、など。ファッション誌を読むことで効率的に情報を得る。グーグルは最適のツール。

 これは小説とは直接関係のないお話だったけれど、ライフスタイルを売っているのだと改めて言われると、そうだったのかーと思いました。もう少し泥くさい言葉でいうと生き様なのかな。ナチュランを読んでいる人はたぶん小悪魔agehaを読んだ少女時代を過ごしてはいない。たぶん。
 家具を買い換えるときにIKEAに行くかカインズに行くか。とか。
 ライフスタイルかー。(気に入ったらしい)

◉例えば大災害が起きたときに、娯楽は必要ない。

 これは本当にそうだと思う。娯楽どころではない。
 だけど生命の危機は去ったものの依然辛い状況……というときは、実は娯楽はとても必要なのではないかなと思っている。
 わたしは災害に遭った経験はないのでまた話が違うかもですが。自分が入院していたとき、あるいは両親共に入退院を繰り返していた時期、ほんの少しでいい、現実から自分を切り離してくれるアイテムが必要だった。

「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」について

 そして今回のテーマである「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」について。

◉Web発信の小説がそのまま書籍になる。編集者はいなくてもいいのではないか。
◉情報の価値、仕事の移り変わり。
◉届く環境、形が変わってきている。

 編集者がいらない? そんなわけあるかーい!!!!
 と、激しめにつっこみたかったこのイベントのテーマ。いやいや、実はこういうショッキングなテーマを掲げて引きを作っているだけで、本当はつゆほどもそんなこと思ってないんでしょ? でしょ? と思ってました。

 事実そうだと思う。お話されていた三名の編集者さんは、みなさんすごい経歴をお持ちで、経験豊かで、口調こそソフトで優しそうだけれど、そのお顔付きからして食えない感じが満ち満ちていましたもの。わたしだってそれなりに年齢を経ておりますから、それぐらいお見通しなのです。

 時代が代わり、昔よりもぐぐっと個人で何かを発信するのは楽になった。そうやって発信された中で書籍化され、ヒット作が生まれる。そんな中で編集者不要論が生まれる、ということらしいのですが。

 わたしのざくっとした感じ方では、作品を商品にするのが編集者さんだと思うのです。なのでWebなり同人誌なりで発表されているのは、たとえ金銭が発生しても「作品」であって、商業ベースに載せるためのあれやこれやを行うのが編集者さん。
 本を買って、Webで続きが読めることを知り喜んで読みにいったら、めちゃくちゃ読みにくかった……という経験もありますし、Web発信だとしても編集さんの仕事はそんなに変わらないのではないかなぁ。

 Web小説といえば異世界転生なイメージがありますが、実はもっと前から悲恋ものの携帯小説が大ヒットとかもあったし、そんなに最近の話でもないのかなぁという印象です。

◉作家とはちょっと仲が悪いほうが言いたいことが言える。

 これはちょっと面白かったです。この方は仲良しだとダメ出しがしにくくて、ちょっと仲悪いくらいのほうが言いやすいのだそう。それでよかったら、ぐわーやられた! 的な。何その関係性、ちょっと萌……。
 これは個人の性格とか、性別もあるのでしょう。女性同士だと、仲良しのほうが何でも言い合えるような気がする。

◉作家と編集者は運命共同体、パートナーである。
編集者は失敗してもダメージがないと言われる。成功したら作家のおかげ、失敗したら編集者のせい。(という心構えで仕事をしている?)
◉作家の心の支え。メンタルを保ち続ける。

 編集者さんって失敗してもダメージないんですかっ? 自分が担当した本が売れなかったら、編集部内で立場が悪くなったりはしないのかな……。それならば、実はちょっと安心なんですけど……。編プロさんとかだと、また立場や事情が違いそうな気もします。どうなんでしょう。

 結論としては「編集者がいらない」のではなく「いらない編集者がいる」のだそうです。
 そこはちょっと、え、え? ってなりました。編集者として優れていない人がいる、ということでしょうか。
 まぁ、いるのでしょう。ある程度の数の人間が集まれば、そのうち何割かが無能なのはそういうものなのだろうなーと思います。働き者の代名詞となっている蟻も実は何割かは怠けているらしいですし。そして働き者が休むときに働くらしいですよ。
 なので「いらない編集者」と言われる人も、もしかしたら誰かがピンチのときにじゃじゃーんと敏腕編集者になるかもしれません。

 というかっ。狭いジャンルの話ではありますが、わたしこれまでの担当さん、みなさんめっちゃいい方なんですけど。これは運なんでしょうか。わりとついてない人生送ってるなと思ってるんですけど、もしかしたら担当さん運だけは強運の持ち主なのかな。
 もちろん、心の支えでした。この人に面白いって言ってもらいたいって、思いながら書いていることもしばしばありました。本来ならば読者さんに面白いと言ってもらいたいと願うべきだしもちろんその気持ちは常に持っているのですが、一番最初に原稿を読んでくれる担当さんは、やはり特別な人でした。

「99ダメでも1を面白がれるのが編集者」

 これはその「1」の面白いを何倍にもできるという自信があるからこその発言に思いました。「価値を上げる」のが編集者の仕事というようなお話も出ていました。
 ……いや、なんかもう、99ダメとか、ほんますみません……と、なんとなく胃がきゅーっとなりました。いやそんなこと言われたことはないんですけど、ほら、優しい方ばかりだったから……。

情報発信について

 ここからは、どうやって読者に届くかのお話。あまりお話をされていなかったLINEノベルプロデューサーの森さんが発言されていました。

◉紙の本の価値
 流通手段があるなら残る。普遍的である。

 小説は長い歴史がありほとんど形を変えていない。そこは改めて考えてみると本当にすごいことだと思う。
 あと、消費者目線で言えば、物語を消費する手段としてたいへんコスパがいい。本の値段は高くなったとはいえ、だいたい六〇〇円くらいで文庫本が買える。しかも比較的長い時間楽しめる。
 映画は一八〇〇円(値上がりするんでしたっけ)。演劇は著名な劇団だと諭吉覚悟だし、そうでもない劇団でも最低三〇〇〇円くらいは必要かな。

◉目利きの書店員さんが減っている

 そうなのかなー。

 売れている本が(作家が)売れる、という現状もあって、どこの本屋行っても一緒でつまんねーって思うこともある。(一方で、どこ行ってもだいたい一緒というのは安心感もあるので一概に否定はしたくないけど)
 だけど、売り場作りに熱を入れている書店さんもたくさんあると思う。
 何年か前に、タイトルと著者を隠した本が流行りましたよね。ポップが面白いところも多い。何を売るか、何を売り場に展開するかすごく考えている書店員さんはたくさんいると思う。
 ジャンルに特化した書店さんも目立つ。絵本中心だったり、それこそ店長さんの目利きで棚が構成されていたり。お洒落な店舗もあるし、イベントが開催された文喫のようなところもある。あ、腐女子御用達店もあります。

 お店の生き残り作戦みたいなものは、とても感じる。あまりたくさん買えなくて不甲斐なくて申し訳ない。
 本を買うときはなるべく本屋さんで、それも地元のお店で、を心がける……くらいしか、わたしにはできることはないなぁ……。

◉レビュアーがプラットホームになる
 レビュアーにファンがつく。友だちからの口コミ。

 この人が面白いというなら買ってみようかな、というお話。
 これはほんとそれな!!!! です。信頼できる本好きさん、文章好きさんがTLにいると、頼りになります。
 書店員さんもそうだけれど、レビュアーさんももっと評価されたり表に出たりしていいと思う。
 レビューって、難しいのです。レビューそのものが面白い人もいる。
 ネタバレはなるべくせずに面白さを端的に伝えるって、それすごい才能じゃないですか。出版社さんはレビュアー大賞とかもっとやってもいいのではないでしょうか。(ちらっと調べてみたら読書メーターさんが開催されていたようですね)
 レビューの質が上がって信頼できるレビューが増えればいいなぁと思います。
 

 その後、質疑応答があり、何名かの方が積極的に質問をされていました。
お時間になり、イベントはお開き。なかなかにぎゅっと詰まった時間でした。

まとまらない

 長々と脱線しつつ書きましたが、まとまりません。えー。
 本来ならここで「まとめ」とか言って締めくくるんですが。

 それで肝心のLINEノベルについてなのですが、前回のイベントでお話されたのでしょうか。今回はあまりそのお話が出てきませんでした。

 小説もそうだけれど、色々なものが今、過渡期にある感じがします。新しい形態も古い形態も上手い具合に混ざり合って、時代に合ったものが生き残っていくのだろうなぁ。

 というわけで、拙いだらだらレポートは以上です。

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