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死ねなかった

死ねなかった。
あんだけ自分はライン超えたから次は行けると思ってたのに、変に自分の認知が歪んでいるのを自覚した直後だったせいか死ねなかった。

夜の霧雨の中、たどり着いた荒川河川敷。
首都高下の一般道を渡って階段を上がればそこには煌々と輝くスカイツリーにビルの灯り。
そして花道のように街灯が照らす、正面に延びた川まで降りる船着き場への道。
それを見た瞬間は、今日死ぬんだと思って涙が止まらなかった。

なのに、隣のグラウンドを通って川の水面が見えるところまで行って、逃げていく水鳥と跳ねる魚の音を聞いていたら、一瞬「何で死ななきゃいけないんだろう」という疑問が浮かんで怖気付いた。
右に3m、そのまま階段を降れば水の中だったのに。
絶好のチャンスに死ねなかった。
惨めでバカで、次は酒と薬持ってリベンジしてやる、なぜかそんな気持ちで泣きながらフラフラと家路についた。

私の適応障害の適応できない相手は息子だ。
今日も彼はやらかした。
外から見れば大した事ないんだと思う。私が許せないのだ。私が怒り狂うのだ。私がおかしくなるのだ。だから、私が消えれば万事解決だと思うのだ。

辛い。
大好きだった息子が、触られるのも嫌なほど嫌いになっていく。
私を病気にしたくせに!と首を絞めてやりたくなる。
何か忘れたりするたびに、その頭をサッカーボールのように蹴り飛ばしたくなる。
殺してやりたくなる。

だから、その前に私が死にたいんだ。
未来ある彼を生かしておくために死にたい。

私はただ、愛したくて彼を産んだはずなのに。なんでこんな苦しんでいるんだろう。

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