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チームを作る-チームの心理的安全性を担保する

「たぬきちゃうで、たの⤴きやで!!」
舌足らずの子供の表現ってかわいいですよね。
息子にたぬきだよって伝えたら逆切れされてびっくりした初瀬野アヤセです。こんにちは。

さて、今日はPrincipalの項目の1つ、「チームを作る」のうち、小項目の「チームの心理的安全性を担保する」を取り上げます。

チームを作るための8つの中項目

近年、フォーカスされることが多くなっている心理的安全性ですが、私もチームを作る上で最初に考慮して環境を作り上げています。


心理的安全性って何?

心理的安全性は、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が組織論で用いたのが初出と言われています。引用します。

A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.

Edmondson, 1999

日本語訳では、下記になります。
“対人関係のリスクを取っても安全であるというチームメンバーが共有する信念”

「チーム内では自分の考えを率直に言っても大丈夫!とメンバー全員が確信している状態」と言えます。
恥ずかしい、馬鹿にされるかも?怒られるかも?など、上下関係や相手の反応に不安感を感じずに、自由で活発な議論ができる状態ですね。

みんな仲良しが良いよね!とか、否定的な事はできるだけ言わない方が良いよね!とか、的外れな方向に進んでしまう事もありますが、いわゆる仲良しこよし状態とは異なり、日本的な空気を読むという状態でもありません。

ではどのような状態で、どんなメリットがあるか、そもそもどうやってその環境を作るのか、注意すべき点を見て行きましょう。環境の作り方は、実際に私がやっている実例で説明しますね。

心理的安全性が担保されるってどういうこと?

まず、心理的安全性が担保されるとは、次の全ての条件が成立した状態を言います。
①人格とビジネスが分離されている。
➁発言内容が評価と分離されている。
➂お互いを尊重し、相手の意見を聞く姿勢が徹底されている
④議論しつくした後に決まったことは、納得して実行する姿勢が徹底されている。

逆に言えば、これらが成立していない限り、チームメンバー全員が心理的安全性を実感していることはないと言えます。
いずれも当たり前だと思われることですが、これらの条件を実際にやってみると、意外に難しいことに気づくと思います。順に説明していきます。

①人格とビジネスが分離されている

ビジネス上の発言は個人の人格とは別のものであり、発言内容がその人となりを表すものではないことを、全員が理解している必要があります。

あいつはこういうやつだからダメなんだ・・・
こんな発言を、一度は聞いたことがあるのではないしょうか。このように人格を決めつけて行く行為も、きちんと人格とビジネスが分離できていたら発生しません。

ラグビーの試合終了後に使われるノーサイドに近い意味合いと言えますね。
ビジネス上で意見が対立することも当然ありますが、激しい議論を戦わせたとしても、終わればいつも通りの関係で話をしているかどうかが、分かりやすい目安になります。

個人の性格に起因する部分もあるので、その人の発言を完全にゼロにすることは難しいですが、特定の環境下で実現することは十分に可能です。
ほとんどの人が人格を攻撃するのは良くないことだと考えていますので、説明すれば一定の理解を得られますし、繰り返し説明していくうちに、徐々に浸透していきます。
まずは少人数で短時間の打合せなど、条件が成立しやすい状況から始めてみましょう。

➁発言内容が評価と分離されている

発言内容がどうであれ、評価とは全く関係のないことを全員が“確信している”必要があります。
条件①のように頭で理解しているだけでは不十分で、確信している状態です。

肯定的な発言をすれば評価が上がり、否定的な発言をすれば評価が下がる。発言したら自分がやらなければならなくなるので発言したら負けだと思っているなど。
このように感じていたら建設的な発言が出てこなくなり、当たり障りのない玉虫色の発言が増えてきます。

チームなど少人数単位よりも上位の組織体や企業文化から影響を受けている場合も多く、人によっては経験的に受け入れがたい状態であることも珍しくありません。
そのため、説明しているだけでは条件が成立することはありません。

この条件は、説明ではなく評価基準を明示することによって成立させます。
明確な評価基準を設けて、発言内容が評価と関係ないことを明示すると、メンバーの納得度を上げることができます。
また、個人の発言内容よりも議論することにフォーカスし、決定事項に対して役割分担を決めるという運用ルールを定め、繰り返し実行していくと、同様にメンバーの納得度は上がります。

まずは評価基準を明確にするところから始めてみましょう。

➂お互いを尊重し、相手の意見を聞く姿勢が徹底されている

発言内容がどうあれ、自分の考えを尊重してくれる、頭ごなしに否定されるのではなく、まずは聞いてくれることを全員が”確信している”必要があります。
本条件も、“理解している”ではなく、“確信している”です。

人の話を全く聞かない人っているじゃないですか。話しているのに全然違うことをやっていたり、上の空で別のことを考えていたり。あるいは発言を遮って自分が言いたいことだけを繰り返し話す人など。
その状態が何度か繰り返されると、ほとんどの人は発言することを止めてしまいます。
経験則として発言に意味が無いことを理解してしまうからです。
そうなると、チームとして成立しなくなり、メンバーが離散していきます。

個人の性格に起因する部分も多いので、個人の問題として捉えて指導することで改善を狙いがちですが、労力のわりに全く成果が出ないので、もしやっているのであればすぐに止めましょう。
過干渉になりがちですし、アプローチがまずければハラスメントと受け止められる可能性があります。

この条件はルール、あるいはちょっとした工夫で成立させます。

例えば、打合せ中は必ず発言が終わってから質問する、発言中に質問などで遮ってしまった場合は、進行役が聞くように促すようにします。
同時に全員が発言する機会を必ず設けるようにします。

これを繰り返し運用していけば、話したくてしょうがない人でも、自分の発言機会があるとあらかじめ分かっているので、遮って話し出すことが減ってきます。

まずはルールを設定することから始めてみましょう。
尚、討論の場と混同してしまう場合がありますので、討論の際は、話を聞く場ではなく、討論する場である旨を明言してからスタートしましょう。
そうすればメンバーも予め理解した上で参加することが出来ます。

④議論し尽くした後に決まったことは、納得して実行する姿勢が徹底されている

役割分担とアクションが決まったら気持ちを切り替えて取り組む、最後までやり抜くことを、全員が納得している必要があります。
本条件は頭での理解ではなく、心情としての“納得感”です。

決定事項を嫌々実行する、ではなく、決定事項と納得した上で実行することには絶対的な差があります。
納得していなければ、うまく行かない場合にその理由を決定事項そのもの、ひいては議論自体に求めるようになります。
決めたのは誰だとか、発言したのは誰だとか、だから最初からこう言っていたのにとか、どんどん原因を自分の外側に求めて行くようになります。
そうなってしまうと、前向きな議論が出来なくなることは明白ですね。

納得感は感情が大きな影響を与えるので、話せば話すほど、ルールで縛れば縛るほど逆効果になってしまう可能性があり、成立させるのが困難な条件です。

そこで焦らずに、時間が掛るやり方ですが、小さな成功事例を積み重ねて行くことで納得感を醸成していきます。

最初から前向きに取り組めれば良いですが、そうでない場合は、決定事項は必ず実行しないといけない、と強く印象付けます。
ここがブレるとチーム活動を重視しないようになりますので、明確に意思表示します。
この意思表示は難易度が高ければ高いほど重要になります。

その上で、自ら率先して実行する、苦戦しているメンバーがいれば、予め決めた役割分担を踏み越えないように進捗をサポートしながら一緒に課題を解決していくなど、チーム全体で決定事項に取り組んでいることを、全員が認識できるように活動していきます。

この際、特定のメンバーを手厚くサポートするなど、メンバーが待遇差を感じるような対応は避け、全員に対して声掛けします。
決定事項が達成されたら、メンバーが少し大げさに感じるくらい喜びを表現します。

難易度の高い決定事項を1回達成するよりも、簡単な決定事項を何回も達成する方が納得感の醸成は早くなります。
スモールステップで小さな成功体験を積み重ねて行きましょう。

これで4つの条件が成立した状態、つまり心理的安全性が担保された状態となります。

心理的安全性が担保されているかどうかって、どうやって判断するの?

4つの条件を成立させたつもりでも、当事者の場合は本当に成立しているのか分かりにくいですし、そもそも客観的に判断するのが難しいですよね。

数字で見えるようなものではないので少し難しいですが、日々のメンバーの様子からどのような状態なのか推察して判断します。
メンバーが何らかの不安感を感じているかどうかが、分かりやすい目安になります。

代表的な4つの不安をほとんど感じていない状態が、心理的安全性が担保された状態です。
①無知と思われるかもしれない
➁無能と思われるかもしれない
➂邪魔と思われるかもしれない
④否定的と思われるかもしれない

心理的安全性が担保されている場合、分からないことは分からないと言う、建設的な発言が多い、議論の場では反対意見も積極的に出す、失敗についても積極的に話題にする、適度な雑談や笑いがある、などの様子が現れてきます。
これらの様子・程度を見ながら、メンバーがどんな状態にあるのかを推察しましょう。

自分で推察するのが難しい場合や、自分の思い込みを排除しておきたい場合は、外部(他のチーム)の人から自分のチームがどのように見えているかを定期的にヒアリングするのも有効です。
より客観性を高めたい場合は、複数の人からヒアリングします。

尚、こちらから聞きに行かなくても、外部の人から雰囲気良いね!と声を掛けられるのであれば、心理的安全性が担保された状態だと思って良いと思います。

実際には100%完全に成立している状態を維持し続けることは非常に困難ですし、厳密にはその必要もありません。
但し、常にその状態を目指していることをメンバーに明確に表現し続けましょう。

では

心理的安全性が担保されると、どんなメリットがあるの?

ここでは私が特に効果が大きいと考えている4つを取り上げます。

①主体的に行動するようになる

これが最大のメリットで、全ての基礎となる部分です。
“言われるまで何もしない、言われたからやる、言われたことだけをやる”
ではなく、
“自分で考えて、意見を表明して、協議して、合意して実行する”
ように行動が変わってきます。
また、モチベーションが上がり、学習意欲が高まります。

➁メンバー同士で刺激を受け合い、個人もチームも加速度的に成長し始める

相互に協力して活動するようになるので、メンバーが担当している役割についても間接的に経験し、本人が意識しないところで学習量が増えます。
結果的に複合的な能力の素地が鍛えられていき、新しいチャレンジへの取り組みがスムーズになります。

➂議論ではなく行動を重視し、失敗を恐れず、新しいことにどんどん挑戦するようになる

失敗や課題からの学びが大きいことを実感するので、議論だけで終わらず、行動するようになります。
それに伴い、議論する内容や方向性が変わってきます。

「こんなリスクがあるから・・、前例がない・・、失敗したらだれが責任を取る?・・」
ではなく、
「どんなリスクがある?解決策は?新しいチャレンジだから承認を取ろう」
というように、まず行動する、という前提で全てを考えるようになります。
チームや関連する組織が大きくなっても維持できると、やがてそれがカルチャーになって行きます。

④悪いことほど早く報告するようになる

考える範囲が個人からチームへと拡大してくるので、チームとして目標を達成することに集中するようになります。
その為、大きな失敗が見つかった、新しいリスクが顕在化してきた際に、一人だけで抱え込まず、すぐにチームで共有し、どうやったら解決できるかを全員で考えるようになります。

「失敗した、どうしよう!怒られるかも・・言い出しにくい・・」
ではなく、
「失敗した!このままだと目標達成できない、どうやって解決するか皆で考えよう」
となります。
当然、目標達成確率が上がり、より大きな目標にも積極的に取り組むようになります。

このように、個人の成長がチームの成長に繋がり、課題を見つけ解決し、目標が達成され、より大きな目標にチャレンジする、というプラスのサイクルが回るようになります。

想像するだけで楽しくないですか?
チームが盛り上がっている様子が目に浮かびませんか?
はい、そうなんです。
実は、心理的安全性が担保された状態だと、基本的にみんなが楽しいんです。
そんな環境を作りたくなってきませんか?

どうやってその環境を作るの?

4つの条件については既に触れていますので、その前提部分と、環境整備の際に4つの不安(無知・無能・邪魔・否定的と思われるかも・・)をメンバーに感じさせないようにするために、私が日常的にやっていることを紹介します。

「全ての情報を開示する」

大前提はこれにつきます。Principalの項目の1つ「立ち位置を確立する」でも中項目として設定しています。

全ての情報を開示し、相手に伝わるように努力します。
情報差をなくして、同じ基準で議論、判断が出来るようにします。
まず自分が歩み寄り、信頼しようとしている姿勢を明らかにするためでもあります。

信頼関係を醸成する要素として、最も汎用的でほぼ全ての人が思い浮かべるものが、素直で正直な人柄です。
誰しも嘘をつかれているかも?秘密があるかも?と一度でも思ってしまうと、本音も出なくなりますし、行動を共にするハードルが上がってしまいます。

その為にチームに影響のある情報はできる限りタイムリーに共有します。
特にメンバーに直接影響のある場合は共有必須ですが、プライバシーに関連する情報は基本的に開示しないように注意が必要です。
自分のアバターについても自然さを感じる程度に積極的に開示していきます。

※アバターについて知りたいと感じたら、こちらの記事を参考にして下さい。
立ち位置を確立する-自己ブランディングを行う

ここからは具体的なコミュニケーションスキルになります。

①笑顔で話す

会話始める前に一瞬の間を作って、ニコッと笑顔を見せてから話し始めます。
相手もつられて笑ってくれることも多いですし、心理的抵抗を下げ、話を聞いてみようかなと思わせる効果があります。
繰り返していると、誰かが真似をし始めて、チームとして笑顔が増えたりします。

会話を始める前に間を取って表情を作ったり、何らかのアクションを加えてみると、相手が話し始めることを自然に認識して、聞く姿勢を引き出すことができます。

➁自ら話しかけ、必ず返答する

話しかけられるのを待つのではなく、出来るだけ自分から話しかけるように努めます。
また、相手から話しかけられた場合は必ず対応するようにします。
特に対面でのコミュニケーションは、作業中なら作業を中断し、相手の方を体ごと向いて、会話するようにします。
そうすることで、相手は自分の話を聞いてくれそうという安心感、期待感を持ってくれます。

➂コミュニケーションの絶対量を増やす

些細な雑談など、何でも良いのでチーム内のコミュニケーション量が増えるように働きかけます。
えー、そんなこと?それだけ!?と相手が思うような、10秒で会話が終わる内容が混ざっても構いませんので、きっかけになるようなワードをちりばめて話します。

会話、チャット、1on1、チーム会議など、様々な場面で意識的に実行します。
チーム発足後は特に重要で、初期段階特有の心理的抵抗感の高さや、意思疎通の失敗をコミュニケーション量でカバーしていきます。

④感情を誘導する

コミュニケーション中に、できるだけ怒りの感情が表現されないように誘導します。
誰でも腹が立ったりイライラすることも当然あると思いますが、特に怒りの感情は影響を受けやすいので、チームメンバー間で怒りの感情が伝播しそうな場合、その影響をできるだけ排除します。

怒ったらダメだよ!と注意しても火に油を注ぐだけで何の意味もありません。
個人の怒りの感情を否定するのではなく、共感する姿勢を見せて、本人の中である程度受け入れて昇華させるように誘導していきます。
感情が強く、他のメンバーに既に影響が出ている場合は、怒りを相殺して打ち消す言動をとります。

脳は順番に記憶を上書きしていく特性を持っていますので、それを利用して感情を上書きしていきます。これだけだと分かりにくいと思いますので、長くなりますが、会話の流れと極端な事例で説明しますね。

フェーズ1:メンバーが怒る→内容を聞いて共感を示す→類似した自分の経験談などを話し、双方向で共感を促す

長くなりすぎない程度に相手の感情を吐き出させます。抑えたら後で爆発するので、吐き出させるのが重要です。

複数のメンバーがいると話しにくい内容であったり、長くなりすぎる場合は、この段階で一度区切って別で話を聞くようにします。
その場にいる全員にその旨を伝え、打合せを継続しましょう。

打合せは余程のことがない限り途中で終わらせず、必ず再開して当初の議題を完了させるようにします。
怒れば打合せを終わらせることが出来るという印象をメンバーが持ってしまう可能性があるからです。

<会話例>
「わかるわー、オレも同じようなことがあってね・・・やっぱりそういう場合はイライラしちゃうよねー・・・」

フェーズ2:その後の経験談を話す(笑い話としてオチを付けるなど)→”喜”や”楽”(笑い)の感情を相互共有する→(上書き完了)

お互いに共感を感じている状態のまま、プラス方向の結果になった経験談を話します。笑い話だとより分かりやすいです。
そうすることで笑い話をしているときの感情が相互共感され、少なからず”怒”から”楽”に感情が上書きされます。

時間経過によって感情が変化し、その当時怒っていたことがどうでも良くなったなど、怒りの感情は一時的なものであることをうまく印象付けることが出来れば、更に効果的です。

他のメンバーがいる場合は、その人が共感することにより、相互共感が更に強化されるため上書き効果が増します。
悪者扱いが無くなるオチがある笑い話などは使いやすいでしょう。

<会話例>
「それがよくよく聞いたら、オレも含めて全員が勘違いしてたんだよ・・・小学生か!って怒ってたことがバカらしくなって、みんなで笑っちゃったわー・・・アハハハ」

これあくまでも一例で、喜・楽の内容であれば、自由にアプローチが可能です。

これら4つのコミュニケーションスキルを日常的に使うことで環境を整備していきます。

取り組む順番は?

記事に書いた順番と、実際に心理的安全性が担保された状態を作り上げて行く手順が異なっていますので、ここで改めて整理しておきますね。

まず、大前提として全ての情報を開示します。
次に、4つのコミュニケーションスキルを使って日常の環境を整備します。
最後に、4条件を成立させます。

心理的安全性が担保された状態は、良いチームを実現するための第一歩です。
自分一人では完結せず、人間関係が絡んできますので、完璧な状態というものはそもそもありません。
無理に頑張るより、少しずつでも良い環境になるように、地道に続けることを優先して取り組めば良いでしょう。

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
自分の人生を、自分で生きて行きましょう!

初瀬野アヤセ

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