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グラスゴー世界選手権観戦旅行記(1)準備~イギリス到着まで

8月3日(木)から10日(木)までの7日間、グラスゴー世界選手権観戦にかこつけて小径車と一緒にイギリスを旅行した。数回に分けてその記録を綴ってみたい。
海外で自転車に乗りたい、ロードレースが観てみたい、という方には役に立つ情報が含まれている。といいなと思っている。


1. 中島とグラスゴー

それは5年前のこと。「おーい磯野ー!野球しようぜ!」ばりのカジュアルさで「アヤさん、世界選手権を現地観戦しましょう」と誘われて始まった私のロードレース現地観戦。
中島の名前は北口さんというが、ここでは普段の呼び名と同じくイギータグチとしたい。もちろんボーラ・ハンスグローエ所属のコロンビア人選手セルヒオ・イギータのもじりである。ちなみにイギータは小島よしおにちょっと似ている。

イギータグチは一体何者かという質問を時々頂くが、端的に言えばオタク友達である。サイクリング仲間にして観戦仲間だ。このカテゴリに属する友人の数は少なくないのだが、海外現地観戦まで行ってやろうという火力強めの仲間は今のところイギータグチだけだ。コロナ禍真っ只中の2020-2021年は中断したものの、2018年からなんやかんやで毎年現地観戦に行っている。

我々はワンデーレースが好きで、特にフィニッシュに必ず見ごたえのある周回コースが設定される世界選手権は大好物だ。毎年開催地が変わるのも旅行欲を満たすのに好都合で、2023年の開催地がイギリス・スコットランドと聞き、すぐターゲットに定めた。
今年はシクロクロスを除く13種目の自転車競技の世界選手権を同時開催する「スーパー世界選手権」となる関係で開催時期が8月上旬と通常よりも1ヶ月以上前倒しになるが、休暇も取れそうで問題はない。いざ行かん、約束の地グラスゴーへ!

2. ブロンプトンといっしょ

「アヤさん、今回はブロンプトンを持っていきませんか?」と中島イギータグチが言う。ブロンプトンはお洒落で頑丈な折り畳み小径車で、イギリス生まれ。つまり里帰りを気取って海外輪行をしようという粋なお誘いである。

ちなみに私が乗っているブロンプトンは元々イギータグチが乗っていたもの。新車購入を機に友人価格で譲ってくれたのである。
ロードバイクよりも穏やかな速度域は鈍臭い私を優しく導いてくれる。イギータグチのおかげで始まったと言えるブロンプトンライフは大層楽しく、私はトーキョーシティライドを満喫していた。是非イギリスも走ってみたい。二つ返事で快諾した。

ブロンプトン輪行に使うツールは折り畳みボックスに決めた。というか海外輪行に耐える頑丈さと狭小住宅でも保管可能という要件を両立するものが他になく、選択の余地がなかったのである。

ネットで調べたユーザーレビューも上々で、たまたま代官山のブロンプトン専門店で出会ったブロンプトン界の重鎮かぶきあげさんも使われていることに安心し(よかったら貸してあげるよ!という親切な申し出までしてくれて感激)お値段は張るが、長く使えると信じて通販を敢行。組み立ててみるとかなり大きいが、余裕がある分ブロンプトンとボックスの隙間にヘルメットや衣類などの荷物も入れられそうである。

毎回機内持ち込みバックパック1つで海外に行く自分としては持参する荷物が増やせるのはありがたい。今回は極限まで荷物を削らずに済む…!と感涙にむせびながら準備を進めた。

3. 不穏な始まり

「アヤさん、突き指かと思ったら小指を骨折していました。イギリスは行けます!」というメッセージがイギータグチから届いたのは出発の8日前だった。なんと渓流釣りの最中に転倒したという。

程なくして「小指にワイヤーを入れました!」という連絡がきた。私は指を骨折したことがないのでよくわからないが、人は骨折した状態で海外に行ったり、自転車に乗ったりできるのだろうか?

ワイヤーを装着したイギータグチの小指。センシティブな画像なのでぼかしています。

数日後「自転車乗ってみました。意外といけます!自転車持っていきましょう!」と連絡があり、イギータグチの海外骨折サイクリングが確定した。
彼はフルマラソンもこなすトレイルランナーであり、私のようなナンチャッテサイクリストとは別次元に生息しているガチアスリートなので、自分の体のことはよくわかっているはずだ。本人が言うならまあ大丈夫か、と納得することにした。

更に「Folden Boxが大きいので、OS-500で行くことにします!何度もロードを国内輪行しているので大丈夫です!」と連絡があった。

ブロンプトンはロードより格段に重いし(倍くらい重い)キャスターも付いていない輪行袋で大丈夫なのかと思いつつ、これもガチアスリート本人が決めたことなら…と思い、強く止めることはしなかった。
が、これが後に悲劇を生むことになる。

4. 8月3日(木):遥かなるイギリス

出国前日、羽田に移動中のイギータグチから「やばいです!輪行袋がめちゃくちゃ重いです!」と連絡があった。

なんということだろう。やはりキャスターも付いていない袋で10kg超のブロンプトンを運ぶのは無謀だったのだ。いくらイギータグチがガチアスリートで筋肉バキバキであっても、私と同じ身長(164cm)で体重は私よりもずっと軽い(キー!)ちびっこピュアクライマーなのだ。もっと強く止めておけば…と後悔したが後の祭り。自分の荷造りを終え、最寄り駅から電車に乗って空港に向かう。

自宅~最寄り駅~空港までのエレベーター動線を事前に確認しておくと落ち着いて移動できます。

夏休みシーズンの混雑を警戒していたが、ANAロンドン便が出発する羽田空港第2ターミナルの人影はまばら。イギータグチと合流して早速自転車を預ける。
重量は規定の23kgからちょっとだけ脚が出る程度に収めたのでノー突っ込みで預け入れ完了。ルフトハンザやオーストリア航空ではこうは行かない。さすが日系エアライン!最高!ブロンプトンちゃん、ロンドンで会おうね…と心の中で呟いて、ベルトコンベアの向こうに消えていくボックスを見送った。

ずっと一緒にいると、だんだん箱に愛着が湧いてくる。
奥はイギータグチの輪行袋。めちゃくちゃ重く、空港まで持ってきただけで凄い。

搭乗開始時間までは出張で飛行機に乗りまくっているイギータグチのおかげで利用できるラウンジへ。解放感と飛行機ビューが素晴らしいが、のんびりするわけにはいかない。搭乗前に一仕事終えなければならないからだ。数日前から執筆している世界選手権ロードレースのプレビュー記事を書き上げるべく、愛用のPCを立ち上げる。

豪華なラウンジ。くつろぎたい気持ちをぐっと抑えて、電源のある席を確保してPC作業。

飛行機の小さなテーブルでは作業がしにくいし、もしWi-Fiが遅かったら色々詰む。ロンドン・ヒースロー空港でPCを広げるのも避けたい。したがって何としても飛行機搭乗前に記事を完成させなければならない。締め切りに追われる作家の皆さん(イメージ)に思いを馳せつつ、完成間近まで進めてきた記事をチェックしていく。気持ちは焦るが、今から自分が観に行くレースのプレビューを書くというのはとても楽しい。
直前の情報変更への対応、誤字や文章のねじれの修正、ファクトチェックなどを行い、無事に記事は完成。晴れやかな気持ちで食べたカレーは大変美味しかった(写真はありません)

ちなみに空港ラウンジで必死こいて完成させた記事がこちらです。

仕事を終えた私にイギータグチから嬉しい差し入れが。イギリスの自転車雑誌Cycling Weeklyのツール・イェーツ兄弟特集号!一気に元気になる。彼は人を喜ばせるのが本当に上手い。

何を隠そうイェーツ兄弟好きの私。今年のツールは最高でした!

肩の荷も下り、心地よい疲労感とともに飛行機に搭乗。14時間のフライトは食事と映画と睡眠で消化した(乗り物に乗るとすぐ寝るタイプです)

機内食。左上、見にくいですがハーゲンダッツバニラ味です。豪華!

いよいよロンドンへ。2019年のヨークシャー世界選手権観戦以来のイギリス上陸である。テムズ川が流れる景色を眺めながら、これからの旅路への期待が高まっていくのを感じていた。

これぞロンドン!という景色。

おまけ:次回観戦旅行に行く私に向けたメモ

  • ブロンプトンのタイヤの空気圧を少し抜いておくこと
    飛行機への預け入れの際に確認される。
    貨物室では気圧が20%程増加するらしいので、余裕を見てタイヤのMAX7.5に対して5.5に設定し問題なし。5.5でも走ることはできた。

  • 機内持ち込み荷物に汗拭きシートがあると快適
    就寝前と起床後に体を拭くとスッキリする。夏は必須。

  • 機内履き替え用の靴は不要
    今まではモンベルのスリップオンサンダルを持参していたが、何気に重い(約344g)ので、締め付けがなく通気性の良いナイキのエアリフトを晴天用の靴として持参、機内で履いて過ごした。
    イギリスは天気が変わりやすいので、雨天用としてゴアテックスのスニーカーをFolden Boxにポン。バックパックのみで移動する場合は靴2足体制は厳しいので、Folden Box様様である。
    ホテル用にはペラペラの使い捨てスリッパを持参し、最終日のホテルで廃棄した。

次回予告

ロンドンからグラスゴーへ向かう電車の中でアヤが見た驚愕の光景とは?
イギータグチの小指とクソ重輪行袋の明日はどっちだ?
次回「グラスゴーを駆けるブロンプトン」、ご期待下さい!

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