見出し画像

[エッセイ]幸せになる覚悟。夢にまで見た東京がくれたものとは?

車窓に流れ込む大粒のネオンたち。


「あ…、あの頃憧れた景色だ。」


私はふとそう心で呟いた。




この街が欲しかった。


なにもかも投げ捨ててこの街に会いたかった。



ここに来れば何かが変わる気がして、
全てが輝き出す気がして…



あの頃、夢にまで見た街が
今、目の前にある。




上を見ても下を見てもきりがない
この街のリアルロールプレイングゲーム。



私はこれからどこへ向かって走っていくのだろう?





雑踏の中、忙しさで心麻痺させて
本当の自分は置き去りにしてきた20代。



どんなふうに笑って
どんなふうに泣いて
どんな自分になりたかった?



何者かになりたくて
ここへ来たはずなのに、
いつからか自分が分からなくなった。



どんなことが好きで
どんなことが嫌いで
どんな自分になりたかった?



そんなことさえ
分からなくなってしまった私がいた。




何度もボロボロになっては立ち上がり、
もう傷つく場所もなくなってから
ようやく自分の規則性に気がついた30代。




誰かが求める私ではなく、
自分のために生きていく覚悟を決めた。




ねえ、
今なら分かるよ。




私はきっとヒーローになりたかったわけじゃない。


称賛が欲しかったわけでもない。


「そのままの君でいいんだよ」って
私は私に言いたかったんだ。


「私は私でいいんだよ」って
私は私をずっと抱きしめたかったんだ。


やっと分かった。


誰かに褒められなくたって
誰かに嫌われたって
誰かに求められなくたって
私は私として生きて良いんだ。




強がりが私の武器で
我慢は正義で
みんなの笑顔が私の正解だった。



いつからかもう分からない
遥か遠い昔から私は誰かを演じてた。




寂しかったね。


辛かったね。




”もう誰かのために生きたりしない。”



”自分に嘘はつかないよ。”



私は私にようやくそう約束ができた。





嫉妬まみれで息ができなかったあの日だって
怖くて迷って泣き叫んだあの夜だって
そんな弱さや生きづらさが
誰かの涙を抱きしめるから。



だからきっと、
もう大丈夫。


私はきっと大丈夫。


幸せになる覚悟はもうできた。









明日の車窓に映るネオンたちは、
きっともっと美しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?