見出し画像

ひとり旅に連れいていく本の選び方

 「そうそう、これ、そのうち読まなきゃと思っていたやつ」と、買ってから開かれていない本の数々。「そのうち…」が溜まってくると何かと焦る。だから、ここぞとばかり旅の荷物にせっせと2〜3冊くらい詰め込まれるものの、結局、開かれることがない。それが度重なった。

 トランクにツンドク。旅から帰ってきたあと、“無駄な荷物”という結果を得た数冊の本を棚に戻す。いつも情けないと感じる。

 それで、あるとき、ふと思った。「適当に選んだ2〜3冊」、これがいけないのではないかと。「旅のお供に」というお気楽な響きに流されるのではなく、もっと真剣に選ぶ必要があるのではないか。2〜3冊だと保険をかけている気もするし、そんな恋愛や仕事がうまくいかないのと一緒で、結果、まとめて負担となる。だから本命の1冊にしよう。その1冊を真剣に選ぼう。そう決めたのだった。

 でも、これがなかなか難しい。本を1冊決めるだけなのに、その1冊に絞るのがキツい。もしかしたら真面目なビジネス書が読みたくなるかもしれない。海外では本を買うことはできない。やっぱアノ恋愛小説を持ってくれば良かったと思うのではないか……色んな思考がめぐる。

 結局、最初に選んだ私の本命本は、挿絵がたくさん入っているフランス料理のエッセイ集だった。たかが本1冊選ぶだけなのに、大げさなプロセスを踏んだ。だけど異国の地に降り立ち、カフェで仕事がひと段落した後、それを読み始めたとき、私は私の選択に感謝することになる。仕事の疲労が吹き飛ぶほど夢中になったからだ。

 それからは、この1冊ルールを続けている。トランクはもちろん、家の中のツンドクもどんどん消えていく。今の自分に必要かそうでないか。その見分けがつくようになってきたからだ。

 旅の読書は楽しくなり、旅全体の満足度も上がる。ベストな1冊を選べるようにと、以前よりも本をたくさん読むようになって、日常の満足度まで上がった。

 とはいえ、ハズレな本を選ぶこともあるし、途中で離脱してしまうこともしばしば。でも、それでも旅から帰ってきて、読み終わった1冊を本棚に戻すときに思うのは「次はどんな本を旅に持って行こうか」ということ。もうそれは、”旅の醍醐味”のひとつだと思っている。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?