『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.16 中納言行平

たち別れ いなばの山の峰に生ふる  まつとし聞かば 今帰り来む

中納言行平(第十六番)

(現代語訳)

お別れして、因幡の国へ行く私ですが、因幡の稲羽山の峰に生えている松の木のように、私の帰りを待つと聞いたなら、すぐに戻ってまいりましょう。


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 「もし君が待っていると言ってくれたのなら、すぐにでも逢いに帰るよ」
 様々な国の現場をこの目で見たいと思い、意を決して日本を離れた。
 そのときに彼女に言った言葉だ。
 それから、何年、何ヶ月経ったのだろう。
 彼女からの言葉は未だにない。
 逆にこちらが寂しくて、今にも飛行機に乗り込んで彼女のもとへ飛んでゆきたい気分だ。
 無口で、何を考えているかわからない娘だけれど、それでも、いや、そここそが僕が彼女のことを気に入った点のひとつでもある。
 もう、他のひととの関係を築いて、こちらのことなんて忘れてしまっているかもしれない。
 しかし、ぼくのことを思って逆に連絡をよこさないでいるのであれば……などと、淡い期待をしてしまっている自分がいる。
 ぼくが彼女からの連絡を待ちながら旅をしているのと同時に、彼女もまた、ぼくの帰りを待っていてくれているのなら、と。
 


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