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『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.17 在原業平朝臣

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

在原業平朝臣(第十七番)

(現代語訳)

さまざまな不思議なことが起こっていたという神代の昔でさえも、こんなことは聞いたことがない。龍田川が(一面に紅葉が浮いて)真っ赤な紅色に、水をしぼり染めにしているとは。

*****

皆の目を盗んで、奈良へとやってきた。
そこにはとても美しい流れの竜田川がある。
それはちょうど、秋の日のことだった。
僕が見たのは、これまで聞いたことのない、見たこともない世界だった。
竜田川が紅色に染まっているのだ。
僕は震撼した。
今、地の世界では戦が行われているのだろうか。
それとも、大きな災害が起こったのだろうか。
それは、人の子の血なのではないかと思ったからだ。
しかし、よく見てみると、それはただの木の葉にすぎなかった。
紅葉というものらしい。
人の子たちは、この紅に染まった木々や川を観賞し、楽しんでいた。
僕もそれに混じった。
夜になると、天の世界にはない灯りが灯され、それはなんともいえない絵巻物だった。
「そんな話は聞いたことが無い。夢でも見ていたのか」
友人は言った。
しかし、この目で見たのだ。
人の子たちは、自ら美しいものを作り出していたのだ。
もう、地の世界に神はいらないのかもしれない。

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