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当時の日記より76@2009 12/22

20代の担当ナースちゃんとはとても仲良しで気が合う。院内ではゆっくり会話もままならないと外でランチをした。その時

「姫(私の母)はね、可愛い患者さんとして有名なんです。可愛い顔に可愛い声。だからね、すごくひいきされてるんですよ。結局人はいくつになっても見た目が9割、なんですね」

肺がん治療のため、入院病棟は呼吸器内科。他科の医師が病棟にやってくるということなどほぼないらしいが、姫のところには皮膚科も耳鼻科も、既に担当を外れたこれまでの担当医でさえちょくちょく顔を出しているそうだ。そして何より

「主治医は完全にひいきしてます」

と笑われた。確かに4人部屋では同室に主治医が受け持つ別の患者さんもいるのに、姫のところへまっしぐら。

得なのはあの顔?人生って不公平。私はそんな姫にものすごく苦労しているというのに。

当の本人は、性懲りもなく同じことを繰り返している。検査に呼ばれる度に『私一人で歩いて行ってきます』と言い、毎回注意されている。一人もダメ!歩くのもダメよ!って。そして検査のない日は『売店まで一人で歩いて行ってきます』と言い、また怒られる。

文字にすると典型的な認知症の症状にみえますが、これがもともとの姫の言動。めまいがしたら歩き回らないでと何度注意されても「今度からそうする」と言って聞く耳を持たなかったのがいい例です。一度決めたことは絶対変えられないのがアスペルガー。変化に適応出来ない。状況が変わったと認識することが恐怖でしかないのです。

そんな姿を子供の頃から見てきた私は、懲りないというか学習能力がないというか、一体何度同じこと言わせるの?と腹立たしく思ってしまう。

姫の脳みそは『365日再放送される30分完結ドラマ』みたいだと感じる。まるっきり同じ内容を毎日放送されたら、嫌でも丸暗記出来てしまうし、展開も読めてうんざりするでしょう。でも姫は違う。毎日リセット。そして翌日同じドラマを新しい気持ちで見て、新たな発見をしたかのように感想を述べる。でも見ているものは同じだから、同じ感想しか出てこない。聞かされる私はイライラするばかり。

アスペルガーで認知症。他の介護者はどうやって日々を乗り切っているのだろう、知りたい。なんだかすごく孤独だ。



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