84円切手を求めて
最近起きたくだらない話を聞いてほしい。
わたしはどうしても送らなければならない書類を持っていた。
とある場所から郵送で送られてきたもので、同封されていた返信用封筒を使って、必要事項を記入した書類を送り返さなければならない。
こういうものは後回しにしてしまうと結局いつまでたってもずるずると作業しなくなるのがいつものわたしの悪い癖なので、封筒を開封した瞬間、全ての必要事項を記入して、返信用封筒に入れて封をした。あとはもうポストにポンをするだけである。
その時に気が付いた。おや、切手がないぞ、と。
その時自宅にあったのは、結婚式の招待状の返信用はがきに貼る用に買ったが少し余ったおめでたい鶴柄の63円切手だけだった。これでは84円必要な封筒は送れない。21円分が足りない。残念。
仕事の行き帰りのどちらかでコンビニに寄って、切手を買って、その辺のポストにでもポンしようと、ひとまずカバンの中に封筒をしまった。
そして数日が経過した。
カバンの中の封筒は、いつまで経ってもそこにあった。
ポストにポンしなければならないことは分かっていたけれど、日中はそのことがすっかり頭から抜けていた。帰宅後にカバンを見て「あ、今日も忘れてた」って、毎晩思っていた。
切手を買って、切手を貼って、ポストにポンするだけ。
それをなぜか日中はすっかり忘れてしまう。困ったものだ。
いよいよ提出先から電話がかかってきた。あいにく業務中で手が離せなかったため、残されていた留守電を再生した。
「書類がまだ到着していないみたいなのですが、ご対応されておりますでしょうか?〇日までに必要なのでもしまだでしたらご対応の程よろしくお願い致します。」
今度こそは出さなくてはいけない。
もう、必ず、今日、何があっても絶対、ポストにポンするんだ。
意気込んだ。
カバンのいつもの部分じゃなくて、もはやものすごく目立つところに封筒を入れ直した。カバンから何かを取り出そうと思ったら絶対に目につくところに封筒を入れ直した。
昼休み、職場近くのコンビニへ切手を買いに行く。その場で切手を貼って、コンビニの前にあるポストにそのままポン。よし、なんてスムーズな流れなんだ。頭の中のシミュレーションは完璧。
そして迎えたお昼休み。シミュレーション通りに近くのコンビニへ入店する。
12時~13時のお昼休みの時間だと、オフィス街にあるこのコンビニはきっとランチを求めるビジネスマンで大混雑をするだろう。そんな中、84円切手だけを求める手ぶらの女が来たらちょっとあれだろうな。と余計な気をきかせ、自身の昼休みの時間を少しずらして、13時過ぎにコンビニに入店した。
ガラガラのレジを見て、やっぱりこの時間にして正解だったなぁなんて心の中で思いながら、店員さんに言った。
「封筒に貼る用の、84円切手ください」
よし!これでようやく切手が手に入る!あとはこのまま「ここで貼りたいです」とかなんとか言って封筒に貼らせてもらって、そこのポストにポンして終わり!よし!いい感じ!ミッションクリア!
なーんて心の中のわたしがガッツポーズをしようとしたとき、信じられない返答がきた。
「84円切手無いでーす」
……は?……無い……??
一瞬、時が止まったようになった。嘘でしょ、せっかく完璧なシミュレーションをしてここまで順調だったはずなのに。コンビニに切手が無い?そんなことある?まじ?こんなにビジネス街の都会のコンビニに、切手が無い?
っていうか「無いでーす」とはなんだ。もうちょっと申し訳なさそうに「すみません、ちょうど切手の在庫を切らしておりまして」とかそういう感じじゃないのか。わたしは友達か?仲良しの先輩かなんかか?「無いでーす」って、その言い方は何なんだ?軽すぎでは?????
とか、もうそれはそれは色んな感情が、ほんの一瞬の間に心の中をぐるぐると回った。そして口を開いて答えた。
「あ、じゃあいいでーす」
おい、わたしも軽いのかよ。
無いものは仕方がないので、諦めてコンビニを出た。
目の前の信号を渡った道路の向かい側に、郵便局があった。
最初っからここに来ればよかったやん。
何でも後回しにせず、ちゃんと余裕を持って行動しようと思った。
今日もおつかれさまでした。
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