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【詩】花火

花火

光る蕾が真っ直ぐ空に向かい潔く花開く
華やかな火の粉が一瞬の命を描く
落ちかけた瞬間に消えゆく光彩は
いつまでも麗しい夢のまま居続ける儚い恋のように
姿を消すのと入れ代わりに胸に刻まれる

全うした愛が底まで落ちてしまうまで  
離れられなかった
それでも美しい思慕はただひとつ

きらびやかな花火が立て続けに打ち上がる
ヒュー ババン
南国の熱気が背中にまとわりつく
エンジン音とクラクションに混じりながら
ボン ブン ボブン 
バババン パパン パチパチパチパチ
子供達のはしゃぎ声が一緒になって踊る
あなたもこの空の下 
どこかで聞いているだろうか

色とりどりの豆電球を纏ったビル達が
機嫌良く笑いかける
見慣れた向かいの窓に
明かりのカーテンが掛かっている
外から見た私の窓もきっと煌めいている
花火は打ち上がり続ける
あなたもこの空の下 
どこかで見ているだろうか

昼間の花火と爆竹は
黄色い太陽に紛れて見えない輝きが
激しい音だけ奏でていた 
祈りの響きの序章のように

今 
音と光が混じり合う 
あなたもこの空の下 
どこかで祈っているだろうか

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