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【詩】飛ぶ

飛ぶ

夏の湿った夕空を飛行機が飛んで行く
真っ直ぐ目的地に向かう意志の塊の如く
細かい濃淡がまだらな
ぬるい灰色の広大なキャンバスで 
ただひとつ
確固たる光を放つ命のように

心はいつも 
曇りのち曇り だった
降水確率50パーセントの
今にも足を掬われそうな
頼りなくて危うい瞬間を
とりあえず一歩ずつ進んできた
痛む胸をあやし 労り 
時には気付かない振りをし
時々晴れ に縋り付き
なんとか歩み続けてきた

これから私は
私のために飛ぶ

記憶の引き継ぎはもういらない
余計な写真も捨てよう
胸の苦しみに立ち止まらず前を向く
必要なら自然と血に染み込むに違いないから

私はきっと晴れる
だって
雲の向こうは
いつも晴れ

明るい未来を見つめながら
今この瞬間のみを生きる

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