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未来のための子育て

子育ては人材育成


人材育成と聞くと、「社員の教育」のような響きですが、子育ての場合、未来の世の中にとって良い影響をもたらす人間を育てる事だと考えています。
会社の人材育成よりもずっと大きなスケールのミッションですね✨

ちょっと大袈裟じゃない?と感じる方もいるかもしれません。でも地味で忍耐力のいる子育てだからこそ、行き詰まった時も「なんのためにやってるんだ?」と思い出すことの出来るスケール大のミッションが必要だと感じます。自分自身を大切に出来て、周りの人にも心遣いのできる、広い視野を持った人間を育てることは、その人と関わる周りの人たちの人生、そして社会へも影響していきます。いい友人関係を持つこと、辛い時にそばにいてくれるパートナーや家族を持つこと以上に私たちの人生を豊かにできるものはありません。

そんな責任重大な子育ての中で、今日は私が子育てで一番難しいと思うことについてお話しします。それは自分自身が抱えてきた不安、自己嫌悪、トラウマ、家族や社会から受け継いだ固定観念の箱を無意識に子供の前で開けてしまうことです。親や家族からの重荷に影響されることなく、真っさらなキャンバス上に自由に人生像を描いていって欲しいと子供に願うなら、子育てをする私たちが、自分自身が抱えてきた重荷を一つずつ開けてコンマリしていく必要があります。

ネガティブ感情のバケツリレー


子供の頃、些細なことで親に怒鳴られて育ち、「絶対に私はこうならない」と自分に誓っていたのに、実際に親になってみると同じように自分の子供にキレてしまい落ち込む、という例がよくあります。自分が育った環境から得た重荷を、途中で整理整頓する機会がないまま受け継いでしまった例です。育った環境のみならず、会社や学校でのネガティブな出来事が、以下の絵の様に転移していく過程を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

"Anger Transference" by Richard Sargent (1954) 

もう一つ、家族内のバケツリレーの例でよくあるのは、夫婦間の仲が悪い時や離婚したカップルが、相手の悪口を子供に言うことです。これは子供にとっては心にずっしり沈み込む重荷になります。

子供のために、、、の裏側


大学へ行っていない事をコンプレックスに感じた経験から、自分の子供には必ず大学に、出来れば’良い大学’に行ってほしいと思うこと(逆に、自分自身が有名大学卒なのでそうじゃないとダメだという価値観)、スポーツで叶わなかった夢を子供に託したい、などといった願望が出てくることは親として自然なことです。

でもその強い願望がどこから来ているのか、自分なりに整理し理解していないと、子供がテストで悪い点を取ると必要以上に怒り、しまいには恐怖心を与えてコントロールするようになったりします。親は子供に自分自身の嫌いな部分を垣間見ると、異常に反応してしまうことがあります。そして成績が良いとコロッと態度を変え、ご褒美をあげます。それを受ける側の子供は、自分の価値を「勉強をして大学に行くこと」だと思うようになります。家族からのリアクションとプレッシャーが周りの空気を吸い取り、自分はどうしたいのかというセンサーが酸素不足で鈍ってきてしまいます。

先入観という曇ったメガネが奪う心の成長


女の子は小学校高学年くらいから、急におしゃれに目覚めてくる子が多いですよね。そこから学年を重ねるにつれ、メイクや短いスカートなどと、可愛い大事な娘に急にそんな姿を見せられた親からすると、ああぁぁぁって心が痛くなります。特にアメリカは、制服が無い学校も多く基本的に自由なので、特に高校生にもなるとピアス、メイク、ヘソ出しルックで車も自分で運転して登校してきます(アメリカは16歳から免許が取れる)。

ティーンの「これをやってみたい」という好奇心を止めるのは不可能に近い、という話はまた他の機会に書くとして、今回はこのあぁぁぁ〜の心の痛みについて考えてみましょう。同性の母親からすると自分自身の失敗や嫌な経験(若い頃に背伸びをし過ぎた、恋愛、Sexなど)から娘の背伸びした格好にイラッとして「そんな格好して外出たら人に勘違いされるわよ!」というようなキツイ言葉が出ちゃうかもしれません。古い感覚ですが、お父さんだと「世の中の男は信用ならん」という心配から娘に外出禁止令を出したりするかもしれません。意図は良くてもどちらの反応も親の否定的な概念から来ているので、子育てにはマイナスになる可能性があります。

自分の娘ではなくても、娘の友達やクラスメートに派手な格好をする子がいて、その子の事を「安っぽく見える」「X Xちゃんは片親だから注意してもらえないのね」といった先入観を親はポロッとこぼすことがあります。友達の例を挙げて自分の娘に「こうならないでね」というメッセージを伝えたい、という意図があるかもしれません。多くの場合、親の先入観を子供に伝えると、子供はどうしてもその否定的で単純な目線でその人の事を見てしまいがちです。これは両方(そう見られる友達も自分の子供にも)にとって決して良いことはありません。人間は複雑な生き物で、どの子供にもこれから成長し変わっていくチャンスがいくらでもあるからです。色々な角度から物事を見て判断出来る人に育てるには、子供のことが心配・不安な気持ちを、狭い先入観を通して表現しないことが大切です。文頭に書いたように、子育てに大きなミッションが必要なのは、常に広い視野と長い目で物事を見ることが大事だからです。

まとめ


子供の未来のために出来ることの中で、一番大切で一番難しいであろうことは、親自身の辛い経験、自己嫌悪、固定観念などを自分なりに認め消化し、肯定化してから子供に伝えることだと思います。それには親の自己理解と継続的な努力が必要ですが、このプロセスで私たち自身も癒され、成長することが出来ます。

子育てをする中で、心の痛いところに触ることがある時、どうしてこのことになるとこんなに苛立つのか、とじっくり自分の心に聞いてみましょう。そしてその心の荷物は子供の前では開けず、「こんなものを抱えながら今までよくやってきたね」という自分への同情心を持って、心静かなところでほどいていきたいものです。

#未来のためにできること #子育て


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