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名前のように、生きる。
私の名前は、わかりやすい。
「彩」と書いて、「あや」と読む。
初対面の誰からも、ほぼ100% 間違えずに呼んでもらえるが、
あだ名にはなりづらい。(私調べ)
昔は、「なっちゃん」と呼ばれるなつみさんとか、
「あっこちゃん」と呼ばれるあきこさんとか、
あだ名で呼ばれるということが、羨ましかった。
愛称があることで、ぐっと距離が縮まる気がするから。
そんなこんなで31年生きてきて、先日、親に初めて、名前の由来を聞いた。
母はあっさり、
「●●という名字が発音しにくいから、誰からも読みやすいことと、
どこにいても、彩り豊かにその場を明るくできる人に育つように」
と言った。
(はなから、あだ名は想定になかったようだ 笑)
周囲を明るくできるように、という理由ならば、他にも色々な名前が思いつきそうなものではと、深堀りしたくなりツッコミを入れてみたら、
「ただ明るくするのではなく、鮮やかにする、ってことよ」
とのことだった。
清々しいほど明瞭簡潔な名づけの理由だったので、
「漢語林」「日本語源広辞典」「人名の漢字語源辞典」などから「彩」の意味を調べるうち、気になることばをみつけた。
「彩り(色取り)」には、
文字通り「いろどること」や「色の配合」のほかに、
「はなやかな変化。おもしろみ。」という意味があった。
また、「彩」の左側にある「采」は、
摘み取る、選び取る、という意味をあらわしていた。
まとめると、「彩」は、
多くの色の中から、人が意識的に選んでとりあげる、というところから成り立つ字だと知った。
調べた結果から、私は自分の名前を
「自分の選択によって、様々な色に変化しながら、誰かの日常に鮮やかな
彩りを届けたい」と、自分なりに解釈することにした。
(2020年5月から参加している「言葉の企画」講義の課題にて)
「鮮やか」も「いろどり」も嬉しいけれど、改めて調べた名前の意味の中で、「自分で選び取る」、「変化やおもしろみ」という2点を、とくに気に入っている。
正直なところ、これまで歩んできた道は、その時々で最も望んだ進路や夢ではないことも多かった。
むしろ失敗も挫折も悔しい思いも、数えきれないほどしてきたが、常に
「自分が選んだ道は、振り返ればすべて正しい」と思いこむようにして、生きてきた。
ときには涙をのみながらもそう思うことで、目の前の選択が自分にとって本当に意味あるものに思えて、前に進む力をくれた。
実際に、これまで選んだ道のすべてが素晴らしい出会いと経験の宝庫で、確かに今につながっている。
なりたかったもの、叶えたかった夢、思い返せば沢山あるが、
自分に開かれた道を意思をもって選択し、
その道で必要とされる様々な色に変化をしながら、
自分の精一杯で誰かに鮮やかな「彩り」を届け、
感謝される喜びや手ごたえを知りながら、生きてきたと思う。
初志貫徹とか有言実行とか、憧れていたかっこいい大人にはなれなくても、
選んだ道で必要とされるような色をつける、
そんな生き方でもいいと、今なら思える。
両親がそこまで「彩」という字のもつ意味をくまなく調べていたかどうかはわからないし、
もしかしたら、両親が名づけた当初、私にかけた願いや期待とは異なる解釈かもしれないけれど、
改めて名前の由来を知ったことで、
自分の31年間を少しばかり、肯定したいと思えた。
阿部広太郎さんが教えてくださった、
名づけることは、自分を自分で育て、どこかに光を当てること。ことばにして、みとめること。
この意味がわかった気がした。
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