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ミニスカートの裏側~長かったスカート丈が、ヒザより上になったわけ~

1950年代、ティーンエージャーには、ある悩みがありました。「着たい服が売ってない!」のです。

今でこそ洋服はお店で買うのが当たり前。それどころか、スマートフォンが一台あれば、自宅にいながら大概のものを買うことができます。

しかしながら、戦後のイギリスではまだまだ「洋服は自宅でお母さんに作ってもらう」ことが一般的でした。

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もちろんお店で買える「既製服」というのも存在していましたが、ほとんどは「大人の女性向け」または「お金持ちのお嬢さん(=debutante:デビュタント)が社交の場で着るためのもの」でした。

つまりは、一般の女の子が望む「今、着たい!シンプルでカジュアル、それでいて可愛い普段着」というのは、ほんの数十年前まで、市場に存在していなかったのです。

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そんな中、50年代の後半に「Dolly Bird:ドーリーバード」と呼ばれるおしゃれな女の子たちの間で、既製品のスカートの丈を短くすることが流行します。

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このストリートの流行にいち早く目を付けたのが、デザイナーの「Mary Quant:マリー・クワント」でした。

彼女は、ミニスカートを含む、これまでになかった「若者向けファッション」を専門に取り扱うショップをロンドンにオープンします。

こうして「発明」されたミニスカートは、若い世代の「こんなの欲しかった!」の声に呼応して、瞬く間に流行します。

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時を同じくして普及したテレビやラジオ、そして「ティーン向け雑誌」のメディアの力によって、ミニスカートは一気に世界的なブームを巻き起こします。(ロンドンのお店まで洋服を買いに行けない子たちに向けた「洋服の型紙付きの雑誌」というのも飛ぶように売れたそう!)

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イギリスにおいて、ファッションは常に「王を頂点とする上流階級が流行を作り、庶民がそれをが模倣する」というトップダウン様式をとってきました。しかしながら、60年代におけるミニスカートの大流行は、「ストリート発祥の文化を上流階級を含む、みんなが真似る」といった「革命」だったのです。

一方モードの世界では、デザイナーのAndré Courrèges:アンドレ・クレージュがヒザ上丈のミニスカートを含むコレクションを発表。

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未だに「女性美=エレガント」といった価値観にあったハイファッション業界のド肝を抜くと同時に、ミニスカートが業界全体を席巻していく契機となったのです。

その後も世界的なミニスカートブームは続き、1970年代には、その丈が最も短くなったんだそーです。

…と、かなりざっくりミニスカートの「歴史」についてまとめましたが、実はミニスカート大流行の背景には、ここに書いた以外のイギリスの「歴史的変化」も複雑に絡み合っているのです。

そもそも、60年代以前は今でいう「ティーンエイジャー市場」というものが存在しませんでした。「子供」の次は「大人」であって、「若者向け商品」というのは存在していなかったんですね。

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