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佐藤文香『そんなことよりキスだった』(左右社)のためのプレイリスト17*cero「大停電の夜に」 #そんキス

『そんなことよりキスだった』、17話目は「ミツルくんと芭蕉」。試し読みできます。

私がceroを聴くようになったのは、2018年5月リリースのアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』に小田朋美さんがサポートで入ったことからです。と言うと「遅すぎる」と言われるのは百も承知ですが、ceroはずっと「オシャレな人しか聴いちゃいけない音楽」だと思ってたんです(そんなはずない)。

その曲が作品として素晴らしいかどうかと、自分がどういう音楽をなんのために聴くかというのは別の話なので、人は必ずしもいつもハイレベルなものを求めるわけではありません。新しいものより懐かしいものの方が落ち着くし。でも、このアルバムを聴きとおすと、自分の音楽を聴く心地よさのレベルが一回り拡張する気がします。言葉にするとなんかダサいですが、こういう曲を気楽に聴ける自分になる。
「魚の骨 鳥の羽根」、いろいろかっこいい曲なんですが、はじまりの打楽器が最高。タラポン、タラタッタッタッタタラポン。

で、です。その話をしたら、彼はceroなら「大停電の夜に」がめちゃくちゃいいですよ、と教えてくれた。

大停電の夜に
君は手紙書くてをとめ
窓を開けて目を閉じ
街のざわざわに聞き入る
                    ーcero「大停電の夜に」
                      歌詞は→こちら

「街のざわざわ」というのが好き。ざわざわって、キャラっぽいというか、愛らしさ、どこか安らぎがあります。ここが「街の喧騒に聞き入る」だったら、この曲はここまで愛されてなかったと思う。そして、いちばんグッとくるのは「普通の会話を愛している」。「普通の会話」に対して「愛している」とまで言ってしまうところ。

次回は、宇多田ヒカル「Stay Gold」です。


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