家族の定義を広げる。住みびらきシェアハウス@神戸 その2
家族の定義を広げる。第二弾。
前回のnoteはこちらから。
今回は、ケレケレのシェアハウスに関わる人や空間にフォーカスを当てながら、家族の形について考えていこうと思います。
さっそくオーナーから訂正のツイートが届きました。ごめんなさい。
まあまあ、落ち着いて、クラフトビールでも飲もうや。
個性の強い住人たち。
ケレケレのもうひとつの特徴は、この家に関わるのは住人だけではないところ。家の一部を解放する「住みびらき」という形式をとっているので、いろんな人がやって来ては出ていく。その中でも何人か個性的なメンバーを紹介したい。
鬼の絵を描く画家。
ケレケレの一部屋をアトリエとして構えるたっくんは、邪鬼の絵を描くアーティスト。彼のアトリエを開けると、カラフルで迫力満点の鬼たちが迎えてくれる。下書きはなしで、感じたままに指やチューブで直接描く。なにやら描くという行為はポケモンと同じらしく、描いてる時は上手く抑え込めるかの格闘で、描かれた後は仲間として一緒に新しい鬼と戦ってくれるという。
ケレケレに住んでいると、ある平日の昼下がりに、突然創作活動に参加することになる。
ランチタイム、仕事の休憩しにリビングに降りると、彼が庭で1.5m四方もあるキャンバスに鬼の絵を描いていて、最後の一筆に描き入れさせてもらった。描き入れるといっても、指にアクリル絵の具をにゅるっと出して、それをキャンバス目掛けて全力で投げ込む。筆や丁寧さに捉われなくてもいいんだと実感できるのは、彼のアートと出会えたのがきっかけだと思う。
卒業の時に描いて渡してくれたオリジナルのiPadケースは、その自由さを全力で表していて、大事なお守り。アートと無縁の人生だったけど、ケレケレにいると、自然とアートと暮らす生活になっていくんだよなぁ。
ちなみに、そんな彼は、犯罪心理学に詳しく、相手の心理を読むことができ、そして運転がかなり荒い。
トマトが可愛い住人。
転職しに九州から神戸にやってきた彼女は、年が近かったが、性格的には私と真逆で、まったりマイペース。話し方のペースも、物事の決断の仕方も、全然違う。それでも、なぜか居心地がよく、よく平日も夜中まで私が下手くそなギターを弾く横で、歌詞を見ながら歌ってくれていた。ケレケレオーナーたちは、私たちが仲良く話すのを不思議そうにしていた。
そんな彼女は、デザイン系の大学を卒業していて、デザインにはこだわるし、感性がとても変わっていた。
ある日の朝、貰い物のトマトが3つ、キッチンに無造作に置かれていったのを見て、『え〜〜、トマトかわいい!!!』と。ここまでは、よくいる20代女性のお決まりの反応。違うのは、そのトマトをまじまじ眺め、光に透かしながら、くるくる回したり。
気づくと、朝陽の差し込む居間のテーブルに持っていき、大きなデッサンノートと広げ、ツンツンに尖った鉛筆を親指と人差し指で握って、なにやら描き始めていた。数時間経って、満足したように、ほったらかされたデッサンノートには、青と黄色で描かれたトマトがあった。
占いとゲーム作りができる猫氏。
たまたま出会ったルームメイトたちは、私にとってここでないと話す機会もないような人たち。その中でも一段とレアキャラな、通称「猫ちゃん」は、1日1回会えばラッキーという存在。
ペットにトカゲやニワトリやネズミ(故)を飼っていて、冬はそのペットたちと同じように冬眠するかのように部屋から出てこない。
かと思えば、3月になり春が近づくと、冬眠から覚め、活発化する。朝6時から散歩に行き、手作りのアクセサリーを縁側で編み、ハーブを育てる。
ちなみに、オラクルカードの占いもできるので、ケレケレ住人たちは猫氏のタイミングを伺っては、仕事やキャリアや恋愛についてよく占ってもらっている。
その他にも、
ふらっとご飯を食べたり遊びに来る人や、1泊の予定が5泊くらいしちゃう大学生カメラマン、コーヒー豆で絵を描くアーティスト、出家を目指す女性経営者、ピエロ、エチオピア人起業家など。
個性が強烈に強くも、そこに流れる空気はなんだか優しく温かい。誰に会えるかは、全くもって未知数。住むだけで旅しているような。そんなケレケレのメンバーにまた会いたい。
火のある場所に人は集まる。
2ヶ月だけの滞在だったのに、気づけば参加イベントは自分で開催したのも含めて5回以上。
その全てになぜか薪ストーブがそばにあった。
ケレケレの古民家ハウスは、縁側を開けるとすぐ庭で、そこにすくっと立つのは、年季の入った薪ストーブ。
オーナーはケレケレスタート当初、なけなしのお金を叩いてメルカリで買ったらしい。今となっては英断として、褒め称えたい。
さて、コロナ禍になって巷ではキャンプで焚き火がブームらしいが、この家では年中家キャンプができるのだ。
新年会は料理人のスパイスカレーで、0度近くで寒いのに、わざわざ薪ストーブを囲んで、ギターに弾き、歌を歌う。
段ボール窯でのピザ作りは3回。炭を薪ストーブで作っては、段ボール窯で手作りピザを焼く。
畑とおにぎり、というイベントでは、薪ストーブを炊いてコーヒー豆の焙煎から薪ストーブの上で。
大体これらのイベントでは、知らないゲストが複数人いる。薪ストーブのために一緒に枝を集め、火を一緒に起こし、ご飯を食べていると、知らないうちに仲良くなっているから、不思議だ。
イベントの時間が終わってもみんな大抵は長居して、暗くなってからようやく重い腰を上げるように帰っていく、あたかも実家に帰って来たかのように。
燃やす材料の枝や葉っぱたちはすぐそばに庭に落ちているので、それを集めて適当な長さに折り、投げ入れる。
炭用の太い薪はいい長さのものがすぐ足りなくなるので、都度ノコギリで切らなきゃいけないし、火が弱くなると慌ててみんなで葉や小枝を集める。
ゲスト/ホストは関係なく、手が空いてる人が、やれることをやって場を作っていく。
そんな軽作業を共にした後、ゆらゆらしている生の火をぼぉっと見ているのはとても落ち着くし、薪ストーブから離れても伝わる熱や光は確かに自分たちで起こしたエネルギーのかけらだからか、満足感まで与えてくれる。
パチパチという音のおかげか、あったばかりの人たちと無言でいても気まずさを感じない。
火を焚くことへの癒しの効果は科学的にも証明されていて、目・耳・鼻・皮膚など、五感を満遍なくマインドフルネスな活動でもあるし、炎の規則的でも不規則的でもない1/fゆらぎという周期をもつゆらぎによって、癒しを与えるらしい。
そんなことはどうでもよくて、私たちは火が好きだし、ケレケレにはその空間があるということ。古代から火を活用して生きて来た私たち人間は、きっとデジタルに移っていくこれからの未来も、火に魅了されながら生きていく。
もし興味があればこの詩集を読んでみてください。
火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば 山尾 三省 https://www.amazon.co.jp/dp/4787718878/ref=cm_sw_r_tw_dp_ZC4GRRRWZ91D777GP6K7
家族が増える。
最後に、家族の定義について、改めて考えてみたい。
そんなこんなで慌ただしく、でもゆったりと過したたった2ヶ月の間で、家族みたいな人が増えてしまった。
タンザニアで日々必死に働く今でも、ふとピザを焼いていた景色や、娘氏と鬼のパンツを踊っていたあのリビングを思い出す。なぜこう思えるのだろう。
きっとそれがケレケレに人が集まる理由でもあるのだろう。
ケレケレに人が集まる理由
お世辞にもスッキリ綺麗とは言えない古民家のがちゃがちゃしたキッチンも、テレビやゲームもないがらんとしたシンプルすぎるリビングも(掃除はしやすい)。
そんな場所に、不思議と、人が人を呼んで集まる。
ケレケレメンバーでもある、ピエロ師でんちゃんの言葉。
自然と「ありがとう」「いってらっしゃい」「またね」が言える場所。
ここでは、ゲストをあまりもてなさない。(語弊があると困るので、、ちゃんともてなしてはいます)
むしろ、子供のお守りを手伝ってもらったり、お昼ご飯の準備を手伝ってもらうことも多い。
勝手にきていいよ、ちょっと手伝ってね、好きなだけそこにいてもいいよ。
そんな、give & takeでも、giveばかりでもない関係。
これは私の持論だが、人はエネルギーの授受の幅が大きすぎると、居心地が悪くなると思う。
高価な贈り物をもらう、あるいは、仕事を中断して何時間も話の相手になる。
同じ金額感の品物で返さないと、とか、また仕事邪魔しに行くことになるからしばらく行くのやめよう、とか。
恋愛も同じで、どちらかがもう片方の何倍もの愛情を伝え続けてたら、相性が合わないと感じてしまうこともあるだろう。
一方で、ケレケレの対応はこう。
今から子供の幼稚園迎えに行くので、住民と話したりしながら待っててね。ランチ一緒にどうですか?あ、そうそう、配膳手伝ってね、とか。
わざわざ「ありがとう」の言語化にも満たない、小さい想いのやりとりが多数発生する。
そこくらいのエネルギーの授受だと、疲弊しない。
よくケレケレオーナーは『自分たちはただ住んでいるだけなのに、なぜか沢山の人が居心地がいい、と言ってくれるんだよね』と不思議がる。
ある畑作業を手伝ったゲストは『自分が労働したから、遠慮なくごはんのおかわりができる』と、空になったお茶碗を元気よく差し出していた。
居場所を求めている人、いやそうじゃない人にとっても、そこに「勝手にいてもいい」、というバリアフリーな関係性のおかげで、自然とケレケレ家族と住民の輪に勝手に入り込むことができ、ケレケレに関わる人々・社会の中で生きている感覚が、多くの人にとって心地いいのでは、と思っている。
長くなってしまったけど、改めてケレケレメンバーには、濃くて優しくてダイナミックな日々をありがとう、と伝えたい。
きっと次に会う頃には、違ったメンバーで、違った雰囲気のケレケレになっていると思うんだけど、それでもまた面白い家族が増えているんだろうなぁと楽しみだ。
このnoteを読む人へ、神戸に来ることがあれば、ぜひ半日時間を空けて、ケレケレへ来てみてください。
きっとそれが、1泊になり、2泊になり、気づいたら家族みたいな何かになっているかも。
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