見出し画像

徳島県神山町で心を整える旅

「神山町に呼ばれた気がする。。」

言霊的な気持ちを込めて『近々ここに行く』という言葉と、google mapのスクリーンショットとともに、Instagramのストーリーズに載せた日から1ヶ月後。そのストーリーに反応してくれた友人と話がとんとん拍子に進み、本当に徳島県神山町に来てしまった。

2020年7月13日。田んぼでの草取りを手伝った私は、徳島県神山町の小野の町の山奥にたつmoja houseの縁側からこれを書いている。(途中で寝落ちしたので後日書き上げました。思い出すままに、自分の過ごした生の証としてつらつらと好き勝手書きます。)


神山町に興味を持つより少し前、自分の生き先に迷ってた私は、知り合いに紹介された「自分の仕事をつくる」という本に出会った。そこで、背伸びをした就職をするでもなく、現状転がっている仕事をむやみに選ぶでもなく、自分で起業するでもない、自分なりの仕事との関係性をつくっていく、という仕事感に心を救われた。得意でない読書も、ページをめくる手が止まらず、エピローグに入る頃には、読みおわるのが惜しくなっていた。そのまま、その本の作者で、働き方研究家の、西村佳哲さんのことばを追いかけていくうちに、彼が今住んでいる徳島県神山町と出会った。

スクリーンショット 2020-08-09 0.14.31

徳島県神山町は、地方創生に精力的に取り組んでおり、成功している町として様々なメディアや記事に取り上げられている。また『神山再生論』といったまちづくりの本も数々出版され、神山の魅力はすでに全国区である。神山では、役場と民間と、一般の住民が一体となって、町の力を高めようとしているのを感じる。働きながら暮らす体験を提供する宿とシェアオフィス(Week神山&コンプレックス神山)や、移住した人が働き方を学べる神山塾、外部からの旅行者も町民にも優しい地元の飲食店の数々、移住希望者がオンラインで建設中の家を見学できるイベントなど、時代にあった発信にも力を入れている。

面白いまちづくりの仕掛けを例に挙げるとキリがない。ネットで調べれば調べるほど、新たなまちづくりの仕掛けと出会ってしまうので、「こりゃーもう行ってみらな、わからんぞ。」となったのである。

到着初日。Day1。


事前に調べていた場所を巡った。
道の駅が神山町の入り口にある。情報収拾しに立ち寄った。一緒に来た友人が、移住先&テレワーク先を探しているため、Week神山&コンプレックス神山に立ち寄る。シェアオフィスのコンプレックスは週末はしまっているため、外からのみ。コンプレックスの向かい側にあるWeek神山は、川沿いに立つコテージ。川の流れの音が心地よく、1Fに設置されたベンチに15分ほどぼーっとしていた。このBGM音聞きながらPCをカタカタ仕事するのは、贅沢だと思った。共用スペースのキッチンとテーブルが美しかった。キッチンをみて美しいと思ったのは初めてだった。

スクリーンショット 2020-08-09 0.13.41

宿に向かう途中、小さな珈琲屋さん兼エシカル衣類商品を取り扱う、豆ちよさんにお邪魔。入り口のドアを開けると、コーヒー豆の香りがブワッと鼻の奥にまで広がる。コーヒーをいくつか試飲しながら神山について伺ったのだが、町のことを聞いているのに、なぜか自分のことを話されているかのようだった。「〜らしい」とか「たぶん〜」といった感じではなく、自分の店の商品でなくてもまるでそうかのように紹介してくる。作り手の熱意が売り手や紹介する人にまで伝染している。

すぐ隣のFood Hub Projectさんは手作りパン屋さん。
めちゃくちゃな目新しさはないけれども、よもぎを使ったベーグルやブルーベリーマフィン、ガラスケースの中のお惣菜がなんだかほっこり可愛くて、「明日の朝ごはん用!」と言い訳をつけて買った。

雨が降りだす。一旦チェックインするため、宿に向かった。
宿泊予定のmoja houseは、神山町のメインのおおどおりを北に直行する方向に山の奥の方に車で5分ほど進む。すだちが植えられているかなり急な傾斜の畑の間の細道をくねくね上がる。先ほどの降り始めの雨は、滝のような大雨に変わっており、山の天気の変化の早さを実感した。あれ、道に迷った。車を止め、洗濯中のおばちゃんにmoja houseの場所を聞くと、大雨の中傘もささず案内をしてくれた。「これから畑にいくけ、どうせ濡れるんよ。」

雨の白い大滝をくぐりぬけ、ようやく宿に到着。
玄関を入るとき、山を一望する素敵な縁側が目に入って、ワクワクした。
moja houseのオーナー、mojaさんは明るく元気な若い女性だった。地域おこし協力隊を経て移住し宿を開業したらしい。家に入ると、新しいのに古くて懐かしいような雰囲気を感じた。泊まったのは6畳くらいの畳の和室。布団が3つ畳んで並んでいる。和室の奥には、さっきみた木の縁側と、山からもくもくと湧き上がる白い霧の景色が、静かにあった。

スクリーンショット 2020-08-09 0.13.25

その日の夜ご飯は神山グリーンバレー理事のりゅうじさんの家のお好み焼きに呼ばれることになった。moja houseからmojaさんに車で連れて行ってもらった。moja houseまでの細道を時速5kmくらいの速さでそろそろと登ってきた私たちとは違い、mojaさんはジョットコースターのレールのような曲った道をスイスイ進む。「神山に住んでるとなれますよ〜ハハハ。」助手席の私にとっては、アトラクションだった。
会は、すだちを作っているひでおさんのトークとりゅうじさんが奉行をつとめる美味いお好み焼きでとても盛り上がった。商社マンだった現役時代から定年を機に農家をはじめた話、最近では新しい柑橘に挑戦している話、神山にたくさんある”粟”の文字の由来など。18時すぎに始まった会も気づけば23時を回っていた。

スクリーンショット 2020-08-09 0.14.01

神山町2日目。

一緒に行動してた友人は車で別の街に行くため、1人旅が始まった。mojaさんのご好意で私物の自転車を借りた。友人の車に自転車を乗せ、一緒に大粟神社に参拝した。本堂までの坂は緑で四方が囲まれており、朝露の匂いが透き通っていて、とても好きだった。

スクリーンショット 2020-08-09 0.15.17


そのあと行きたかった535(ごみさんく)のお弁当屋さんへ。11:30開店だったのに、12:00過ぎに行くとお弁当たちはすでに売り切れていた(電話で予約してたのでなんとかget)。1日目に行ったパン屋さんが偶然通りがかり、「あなた水筒忘れてたわよ!」と水を詰め替えてくれた。これから滝に行くと言った私に「おやつ代わりに食べて」と蒸しパンを手渡してくれた。

スクリーンショット 2020-08-09 0.15.06

滝登り、というより”滝への道のり”が想像以上に大変だった。
訪れるのは日本滝100選にも選ばれている、雨乞いの滝

スクリーンショット 2020-08-09 0.14.53

滝の駐車場に着くまで2km。google mapで徒歩22分と書かれていた道は、ずっと上り坂。肘を顔の高さよりも上にして、自転車を押し上げながら登り続ける道のりはおそらく40分以上かかっただろう。小雨が降ってきたのでお気に入りのカッパを着て、しんどさを元気に変えるために大声で歌を歌う川沿いの2km。神山に来るまでの苦しかった色々な感情や、今現在感じる太ももの筋肉の痛さが溢れてきて、泣いた。歌いながら泣いた。
滝登り自体も45度くらいの角度がありそうな800mの急すぎる道を登る。一番上に着くと、左右2箇所から轟々と流れ落ちる滝の真ん中で、自分のちっぽけさと生きている実感から、自然と笑った。泣いたり笑ったりして、お腹が空いたので滝を降りて、535のお弁当を食べた。たぶん一番美味しいお弁当だった気がする。

画像6

画像10

その後は、広島から来た(パン屋さんのところで出会った)二人組と待ち合わせのため、神山ビール(ブルワリー)に向かった。滝からの帰りはずっと下り坂だとるんるんしていたのに、ビールのブルワリーは山の上の方に位置しており、また自転車を30分近く押し上げる思いをするはめになった。
15:30。山道にも迷い、ぜえぜえ言いながらブルワリーに到着。3人で飲んだエール抜群の神山ビールは死ぬほど美味しくて、また生きている楽しさを思い出した。深緑の木々を窓の外に見下ろすビールの爽快さは格別だった。
二人組の内の1人は同郷出身で盛り上がったり、後から来た団体客にオーナーの代わりに、勝手に神山ビールを営業したりもした。いつかやってみたい、クラフトビールを通した”場作り”とは、きっとこんな感じなのだろうか。いい時間を過ごした。

画像7

ブルワリーのある山を下り、神山温泉で汗だくの体をリセット。数百円で温泉に入れるのは最高だ。
帰りに近くの道の駅で地元の野菜を買い、moja houseに戻った。
今晩は宿でスパイスカレーを作る。
mojaさんは元バングラデシュの協力隊だったこともあり、現地で仕入れてきたたくさんのスパイスがキッチンにしまわれてるのを見つけ、カレーを一緒に作りたい!と、お願いしたのだ。さすが、mojaさんの手際には驚いた。私が1つのカレーを作る間に、手早く2種類のカレーを作り上げてしまった。
そうこうしている間に、神山町に住む仲良しの2人も加わって、4人でスパイスカレー&ワイン会が始まった。この日もとても盛りあがり、翌日朝から仕事のある2人はここに泊まることに。このままここに住み着きたいと思える人たちと出会えたなあ、そんな余韻に浸っていたら知らぬ間に眠りについていた。

画像9

神山町3日目。

朝起きると、2人はいそいそと仕事に出かけるところだった。雨上がりの山の朝は曇っているが、涼しくて気持ちがいい。
この日の朝は、田んぼの野良仕事を手伝わせてもらうことにした。軽トラに乗せてもらい20分、くねくねと山道を走ると川沿いに並んだ田んぼに到着した。神山町の田んぼは山の中にあるため、小さくて様々な形の(四角ではないいびつな形の)田んぼが段々状に広がる。機械は入れづらく、ほとんどが手作業だ。この時期の日々の雑草取りは、共同管理しているメンバー同士で協力し、行なっているそうだ。手袋と長靴を借りて、雑草を抜くため田んぼに踏み入れた。
ぬるっとした土が、長靴の隙間から靴下を濡らす。気持ち悪いはずなのに、土がやわらかくて冷たくて、童心にかえったように、わくわくした。プチプチと音を出してぬける雑草、一歩足を前に出すと足に染み入る土、だんだんと疲れが表れる手の握力と腰。そして、作業後、川に足を洗いに行く時には、背の高い草を搔きわけ、田んぼ脇の川へ降りる秘密の通路。流れる川の水の冷たさ。

ここは、生きている感覚に溢れている!

宿に戻ってランチを食べると、そんなこんなで、心もお腹も一杯。PCを開いてこの日記を書き上げようとしましたが、縁側でyogiboに埋まっていたら、くたびれて寝落ちし、すっかり夜になってしまいました。

画像13


夜は、神山町役場で行われる、【徳島県神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」成果と課題の共有会】に参加。
1期の5年間の取り組みを振り返り、次の2期目の5年間の取り組みに生かすための共有会。役場の人だけでなく、街出身の人や、移住者、NPO団体、いろんな立場の人が参加し、神山町の未来について考える。オンラインで他県の人も会議に参加でき、録画配信も後日されるという先進的な地域創生会議。(詳しくは、こちら)
会では、主催者の共有スライドの発表があったり、4~5人一組で椅子を寄せ合いテーマについて話し合ったり。地方のコミュニティづくりはこういう関わりの積み重ねなのではないかと、考えさせられるものが多い2時間でした。
最後に、神山に来るきっかけになった本の著者の西村さんとお話しすることもできて、この旅と本のお礼を言えて本当に良かった。

最終日の朝。

一緒にカレーを食べた、Sansanで働くエンジニアの方がサテライトオフィスを見学させてくれた。サテライトオフィスとしては、ちょっと有名な場所。そこは、もともと小さな牛舎付きの古民家だったのをリノベーションして作られたそう。同じ敷地内に全部で3棟ある。今は、駐在しているエンジニアが1人。あとは年に数回、新入社員用などの研修施設として使われるそう。オフィスの建物は、杉(?)の木が部屋の全面にあって、ITと自然のぎこちない融和みたいなものを連想させたり、牛舎小屋の土壁の中に建てられたセキュリティ万全のスタンディングワークスペースの画期的な雰囲気を感じられたりで、感動した。

スクリーンショット 2020-08-09 0.14.12


だがそれよりも、その場所で覚えているのは、うっかり乗り過ごした市営バスの次の時間を急いで調べてくれるエンジニアの方の真面目な横顔だったり、「次30分後だって。よかったね〜終電とかじゃなくて。」と、慰めてもらい感じるおだやかな時間の流れだったりしている。

建物は写真に残せるけれど、結局、心に残るものは目に見えないものなんじゃないだろうか。(と、焦って写真を撮る余裕がなかった事への言い訳を思いついた。)

ようやく乗り込んだ市営バスの乗客は私1人きりで、この思い出をくれた市営バスがずっと無くなりませんようにと、4番の乗車切符をぎゅっと握りしめて神山町をあとにしました。


P.S.
勝手にspecial thanks.
3日間泊めていただいた、moja house  mojaさん、
初日食事会に呼んでくださった、りゅうじさん(粟カフェ&グリーンバレー)、ひでおさん(すだち農家)、
神山町に来るきっかけと、本からエネルギーをくださった西村佳哲さん
その他、神山町で出会ったたくさんの方々。

最後に、冒頭の『「神山町に呼ばれた気がする。。」』は、
宿にあった【Welcome to Ono】ボードでその正体がわかりました。(私の苗字が小野)

スクリーンショット 2020-08-09 1.20.42


いいねと思ってくだされば、サポートよろしくお願いいたします。 シェアやお友達に紹介いただくともっとうれしいです!🙇🏻‍♂️