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武田砂鉄 「日本の気配」 を読んで

武田砂鉄の書くものは密度が濃い。まるで和菓子の羊羹のようなので一気にたくさん食べられないというか読めない。

ここ最近、ネットで記事を読む人が増えているからか読みやすい文章が好まれる傾向が強いっていうのに、こんなに密度が濃くて集中力を求められる武田砂鉄の新書「日本の気配」はずいぶん売れているという。

うれしい。

日本を離れて暮らすと、「今の日本はどんな空気があるんだろう?」

と、いつも気になるけれど、実際に日本という国に足を踏み入れてみないと感じられない空気の手で触りのようなものがある。

ひさびさに日本に帰って全身の感覚をわさ〜っと広げ、日本食をたらふく食べて体臭が日本人に引き戻されていることに気がついたりしながら、今の日本ってどんな空気があるのか感じ取ろうとする。

面白いことに、毎度微妙に違う。

これは私が日本に住んでいないから持てる感覚だと思う。もし、また日本で生活し始めたらわからなくなる。

日本のなにが変で妙で狂っていて、美味しくて、素晴らしいかということは、日本の空気にどっぷり浸かっていると麻痺してくるからだ。

日本にいるとなぜか日々の流れに流されやすくって、忙しくって、疲れてしまう。日本の空気とかどうでもいいし、とりあえず今の自分の生活の大変さしか見えなくなって、政治なんかどうでもいいという具合に。

それがそれが、武田氏は日本の東京に住みながら麻痺してしまうことがないのに驚く。

この本では、日本人たちが日々の忙しさに流されて麻痺したり、気にする余裕がない「とんでもない今の日本の事実」を指摘してズバズバ刺して行く。

武田砂鉄は「ひねくれた視点の持ち主」だとか「考え過ぎ」だと思う人もいようだけれど、彼はとってもまともだ。

彼がまともだと思えない空気がある日本が、やっぱり異常だよなぁ。

今の、そしてこれからの日本で生きて行くならば、自分の視点で、自分の頭で考えることをしないと、実態のない多様化や不安に押しつぶされてもっと生きづらくなると私は思っている。

この本は、読む事でバシっと現実を解説して直視させてくれる上に、考える訓練にもなる。

もっともっと、この本が日本で売れてたくさんの人に読まれますように。

この本を読む人が一人でも増えることが、これからの日本にまだまだ希望が持てるのは間違いないはずだから。


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