北九州のサブカルイベントはムダなのか(後編)

では、何故結びついていないと断言できるのか。
KPF…北九州ポップカルチャーフェステイバルの会期は2日間。その間だけイベント目当ての観光客が来るのは当然だが、それで観光客が増えたと喜んでいるのであれば、話にならない。それ以外の360日以上にも、観光客増と云う利益を享受できているかが問題だ。
北九州は門司港駅周辺のレトロ地区の建造物が知られるが、それ以外はこれと云った観光名所が有るワケでもない。北九州中心部から車で50分の平尾台と云うカルスト台地と、2017年に閉園したスペースワールド跡地に近い、東田地区の博物館ぐらいだ。ここは2001年、政令指定都市と云う地位を濫用して北九州博覧祭と云うイベントを山口県阿知須町の博覧会、きらら博にブッキングさせたが大赤字で大失敗した時のレガシーだ。

また、自身は何度も東京や名古屋、大阪に遠征に行っているが、宿泊費はやはり大きい。宿泊とそれに伴う飲食需要が有るワケだが、日帰りではそれが無い。事実、フォロワーにビジネスホテル勤務者がいて、小倉駅周辺ではあるがKPFの期間中に宿泊客が増えたことは無い、と話していた。
単に地元や近隣からの日帰りで、期間中に会場周辺と云う局地的な範囲のファミレスやファストフード店とコンビニの売上が、多少普段より伸びればよい方。それも多少程度で、年間を通じて恩恵を受けるかと云えば否だ。
大阪のストフェス…日本橋ストリートフェスタのような、局地的なエリアの地域活性化が目的であればともかく、観光経済の掘り起こしも兼ねる以上はそれに留まってはいけないが、局地的な活性化すら果たしていない。そもそも自治体の旗振りとは対照的に、メイン会場に隣接するオタク向け商業ビル以外は、イベントに対して冷めているのが現状だ。それはイベント直前から当日にかけての街中を見ていると判る。
自身も、単にこの期間中だけ撮影で使用可能なロケーションが有ることに唯一、イベントの存在価値を見出している。逆に言えば、それ以外はどうでもよいが、同行のコスプレイヤーが着替えている間の暇潰しに、会場を見て回る。だから、どうでもよい割には色々知っているのだ。

毎年8月に開かれるWCSが、2020年をオンラインイベントに変更した。オンラインでは配信とTwitterのハッシュタグを使った写真掲載ぐらいしかコンテンツが無く、盛り上がりに欠けたのは仕方ないが当然のことだった。オンラインイベントはどうしても、画面の奥の出来事であり他人事になるのが課題だ。
その決定は、主催である実行委員会に外務省と愛知県、そして名古屋市が一枚噛んでいると云うものだった。最早東海地方を代表する巨大イベントの一つではあるが、名古屋市としては時期尚早だと判断した。その後の愛知県を見ると、結果論では正しかった。
KPFは北九州市の単独主催による官製イベントだが、その会場でクラスタが発生した場合、そうなるリスクを認識していながら「強行した」として、市長の北橋以下イベント責任者の引責辞任に発展する可能性も有る。日本最先端の高齢化都市でもあり、自治体として高齢者に住みよい街をアピールする自治体で、高齢者へのリスクがイベントを機に跳ね上がった…とすれば、目も当てられない。


北九州は長年、重工業による公害問題に悩まされてきた教訓から環境問題に先進的に取り組む環境首都を自負している以上、環境関連の産業に経済復興の期待を担わせればよい。そしてサブカルは、長年ロケ地の誘致を行い実績を残してきたフィルムコミッションによる映画が有る。自治体の宣伝のために、わざわざ税金を投入してまで失敗だらけのサブカルイベントを開く理由は無いし、コスプレ公務員などとふざけた話題作りをする必要も無いのだ。
2020年を見送ったKPFは間違いなく、2021年の復活を目指すだろう。それでも可能か否かは現時点では全く読めないが。しかし市民として言えば、もうこのまま打ち切りで構わない。その分、もっと有意義な税金の使い方をすべきである。だから、このイベントの話を最初に知って以降、自身は市長選や市議会選は恐らくKPFの事業に反対するであろう候補に票を投じることに決めている。泡沫候補だし、自身が投じたところで当落結果が変わるとは思っていないが、それも抵抗の一種だからだ。

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