時々、なにかに取り憑かれたように、好きな作家の文章を「写経」してしまう。そしていつもため息をつく。
なんでこんなふうに書けるんだ、とぼう然とする時間も写経の醍醐味である。
多くの人が言うように、良い文章にはリズムがある。声に出して読めばリズムがわかりやすいのは当然ながら、不思議なことに、タイピングをしてもそれを感じることができる。その感覚がたまらなくて、むしょうに写経したくなるのだ。
昨日、その波が(いつものように)唐突に訪れた。
それも、いろんな人の文章を写経したくなった。
なので冒頭だけを写経してみることにした。
「これはどの作家の、どの作品かな?」
イントロクイズのように予想しながら読んでみてほしい。
そして、冒頭を読んだだけで引き込まれるものがあれば、ぜひ作品を読んでみてほしい。(読み直したくなる人もいるかもしれない)
いちばん最初に目にとびこんでくる文。その始め方。語り手はだれか。一人称はひらがなか、漢字か…というか、ひらがなと漢字をどう使い分けているか。どこに句読点を打っていて、どこで改行しているのか。
すこし切り取っただけで、書き手の個性があらわれる。
冒頭文は、ファンからすれば「これぞこの人の文章!」と感じられる喜びがあるけれど、作品によってまったく違う書き方で始める作家さんはいて、(同じ作家さんの冒頭文をいくつか写経してみて気づいた)ここにはプロの技巧がつまっているのだなとあらためて思った。
自分が思い込みでタイプしてしまった箇所を原文どおりに修正するとき、その作家がどうしてそのように記述したのかが気になる。想像する。
いつか直接尋ねてみたい……
次は、締めの文章を写経してみたくなってきた。
大変だ。時間が足りない。(楽しい。)