6月に読んだ本を紹介します

6月は人生を覗き見させてもらえる読書が多かった。2000円足らずで他人の考え方の深いところまで教えてもらえる。ありがたい時代だ。


住宅営業マンぺこぺこ日記 / 屋敷康蔵

以前から気になっていたお仕事日記シリーズをようやく読んだ。不動産営業。体育会系で、理不尽で、ガツガツしていて、というイメージそのままの内容。

保険営業マンだった父からもよく聞いたが、歩合制の世界って本当にピンキリらしい。誰でもなれるので底辺は有象無象、しかし上は天井知らずの稼ぎで付き合う階層も全く違う。

著者は底辺でもトップクラスでもなく、一般的な住宅営業マンなのかなという印象。ただ、文章がとてもわかりやすくて、ご本人が書かれたのならすごい…!(ゴーストライターを疑うレベル)

いつか家欲しいなーと思っているので、売る側の世界を垣間見えたのもよかった。

他にもタクシー運転手、交通誘導員、メーター検針員など色々あるので読んでみたい。


苦しかったときの話をしようか / 森岡毅

資本主義の本質は「欲」

私は、資本主義の本質は人間の「欲」だと考えている。人間の欲はさまざまにあるが、たとえば最も基本的な「より便利で、より快適な暮らしがしたい」という欲のベクトルは、人類の歴史の中で決して逆行したことがない。

同書

本筋からはずれるのだけれど、この「欲」の話が一番印象に残った。常に「欲」に従って人は動く。言い換えれば、自社都合での商品やサービスを提供しても「欲」に沿っていなければ伸びるはずが無い、ということ。


ポストイットで強みの分析

強みの分析が面白そうだったのでやってみた。詳細はこちらの記事に。



日本のエネルギー、これからどうすればいいの? / 小出 裕章

原発を概観したくて

石油や天然ガスは輸入依存、加えて脱炭素もあって火力発電は減らしていかにゃならん、でも再生可能エネルギーだけでは補えないし、原発しかないのでは?そもそも原発ってどういう仕組みで、なにが問題で、今後の展望はどうなってるんだっけ。そう思って書店を歩いていたら見つけた本。

原発はとてもデリケートな話題なので、書籍は多くてもどれを読むかが悩ましい。とりあえずこの本は科学的根拠を交えて落ち着いたトーンだったので読んでみることにした。著者は小出裕章氏。何度か見たことのある名前。原子力工学が専門で、立場は反原発。


三択

日本の今後のエネルギー政策は、ざっくり三択あると自分なりに理解した。

  1. 原発再稼働
    事故時のリスクや放射性廃棄物(200, 300年単位で管理が必要)を考えると、将来は原発をなくしたい。ただすぐには厳しいので2040, 50年?くらいまでは原発を併用しつつ、他のやり方(再エネ?)を探す。

  2. すぐに脱原発
    再稼働しないし、稼働中のものも止める。新たに建設もしない。再エネでは足りないので火力発電を増やすことになる。石油や天然ガスへの依存が強く、国際情勢の変化に対して脆弱。脱炭素にも逆行。

  3. エネルギー使用量を減らす
    そもそものエネルギー使用量を減らす。日本は過去130年の平均で言えば、50年ごとに10倍のエネルギーを使うようにして経済成長してきた。このペースではいつか破綻する。使うエネルギーを減らして、持続可能なレベルに抑える。


3は異色の選択肢。私は3を選びたい。しかし森岡さんの本にもあったように、現代社会は欲で動く。50年後、100年後困りますよと言ったところで目先の欲を変えることはできない。そもそも消費を競うGDPを指標にして、大量生産・大量消費で生計を立てている時点で、エネルギー使用量は減らしようがない。

未来の世代に負担を押し付ける、事故時に取り返しのつかなくなる原発はできればすぐにやめたい。本当にやめたい。でも、特にウクライナ侵攻後の綱渡りな電力事情を見ているとまず今日明日の生活を回すのに電力は足りていなくて、不安定な国際情勢の中で体外依存をこれ以上続けるのは厳しすぎる。

だからいまの私は、1が現実的なのかなと思っている。(ただしあくまで国家政策の話で、一個人としては3を意識して行動していきたい。)詳しい方、ぜひ教えて下さいませ。


以前挫折したこれも、改めて読んでみようかな。



自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと / 清田隆之(桃山商事)

「無能がバレるのがこわい」サラリーマン、「スペックの掛け算なら負けない」東大生、お笑い芸人、不妊治療の当事者、元DV加害者、シングルファザーなど10人の「一般男性」のおどろくほど赤裸々な身の上話。


性の話、多くね?

「え、そんなことまで話しちゃうの!?」と驚いたことのひとつが性の話。赤裸々どころじゃないし、そもそも多い。10人中5人?で出てくる。女性10人にインタビューしたとして、こんなに多く出てくるのかなあ。私は出てこないな。外見コンプレックスとかコミュニケーションとか、頭でっかちな悩みばかりだった。


「大宮康平」さん

2人目の大宮康平さんは、あーこういう人いるんだろうな、なんで勝手に神格化して絶望するんだろうという感想。でも、自助グループに参加したり、こうして他人に赤裸々に自己開示できているのはすごい。自己開示していない、自覚していない人の方が圧倒的多数なのでは。


自分の外側と内側

外側は仕事や趣味、社会や経済のこと。内側は感情や欲望、価値観や個人史。男性は外側を語りがちで内側が見えづらい傾向が強いとあり、そうだと思う。読んでいて惹きつけられるのは内側がにじみ出ている文章。特に価値観。

事実の羅列ではなく、その人の色眼鏡を通した世界を見てみたい。


男性も女性もわからん

女性たちは「男の考えていることがよくわからない」と言う。

同書

とあるけど、うーん、女だってわからん。そもそも「他人の考えていることがわかる」状態なんて想像も期待もしたことがないので、「(ある集団)の考えていることはわからん」と思ったことが無い。

特定個人の特定事象に対してならあるけれど、男女というラベルは関係無いなあ。


スターよりも隣の人生

この本を知ったきっかけは6/10の日経新聞の記事。

経済が成長期から成熟期に入ると、画一性から多様性へ、スターから隣の人生へ目が移るという話。私は断然後者に興味があり、そういう性格なのだからだと思っていたけど、あくまで時代の風潮にすぎないのだな。

考えてみれば、さっきの住宅営業マンの本も隣の人生の話だ。


ホカツと家族 / アサダ ワタル

これもまた隣の人生のひとつ。保活を入り口に、家族の形の試行錯誤を描いたエッセイ。

私自身子育てをしていて、外とのつながりのありがたみを痛感していた。例えば義実家、育児ボランティア、保育園、スーパーの店員さんなど。つくづく、子供は二人だけで育てるものじゃないと思う。

『ホカツと家族』にはシェアハウス / 三世帯同居 / 二拠点生活などが登場する。いずれも核家族の拡張版で、核家族の限界を感じている身としては楽しく読んだ。

詳細はこちらに。



Kindle、やっぱり便利だ。ほとんどの本は二度は読まないので、読後に場所を取らないのが嬉しい(わが家には本棚が無い)。

とはいえ、できるだけ紙の本を買いたい気持ちはある。

  • 書店応援

  • 書店で気の向くままに買う楽しさ

  • ふとした拍子に目に入る(Kindleは見ようとしないと見ない)

  • 「読んでる」感

  • ページを繰る楽しさ

など…

いつか大きな本棚を置ける日が来るといいな〜。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?