りんご【短編小説】
「しかし、こんなご時世なのに仕事にありつけて、ほんとよかったな」
「ああ。失業支援制度のお陰だよ。一体何人の労働者が救われたことか」
公園のベンチに二人、労働者風の男が並んで座っている。
「所でお前は今どんな仕事をやっているんだ?」
痩せこけて、落ちくぼんだ目をした男が聞いた。
「リンゴをハ当分に切るだけの作業さ。そんなにやり甲斐のある仕事ではないよ」
それに対し、無精髭を生やした大柄な男は驚いたような口調でこう言った。
「奇遇だな、俺はカットされたリンゴを継ぎ合わせて一つのリンゴに戻す仕事をしているんだ」
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