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フランスから、食関連ニュース 2020.11.11

今週のひとこと

本日は11月11日で、第一次世界大戦の休戦記念日で祝日。ロックダウン下、今週はテレワークでは間に合わない仕事があり、事務所に出てきています。事務所からほど近い11区のビストロ「ポール・ベール」へ、仕事帰りに自転車でひとっ飛び。このロックダウン下でどうしているのか、インスタグラムでも状況がわからず、かといって、電話をするのもこの時期に憚られて、気になっていた店の一つでした。ウィンドーが明るくなっており、近づくとテイクアウトの食品が並び、エピスリーのような様相に。オーナーのベルトラン・オーボワノーがちょうど店に入ってきて、奥様で共同経営者のグエナエルは立ち働いていました。ベルトランは、本意ではないが、グエナエルの強い希望でテイクアウトを始めたということ。通常は日月休みですが、初めのロックダウン明けから、夏休みもなく、今も無休でオープンしています。レストランやワインカーブ、エピスリー、八百屋などが連立する、俗称食い倒れ通り「ポール・ベール」通り。その通りの重鎮でもあるビストロのオーナーとして「この通りの賑やかさを、失わせるわけにはいかないだろ?」とベルトラン。「25年間店をやってきて、それがこの1年ですべてがふいになったといってもいい」と、いつもになく弱気の彼に、返す言葉もありませんでした。ウィンドーには「茹でたオマール」、「自家製スモークサーモン」、「仔牛のフリカッセ」、「牛肉のロースト」、「ニシンのマヨネーズ添え」などの料理に「パリ・ブレスト」のア・ラ・ミニュット(注文が入ってから仕上げる)のデザート、そしてグエナエルの実家、牡蠣養殖業の老舗「カドレ」からやってくる牡蠣を中心にした海鮮が並び(活きたオマールも!)、さながらエピスリーですが、売れるハンバーガー販売のみに転ばぬ、ビストロ魂を深く感じました。また近い日に、ワインを飲みながらゆっくり語り合える日がやってくることを祈って。

1度目のロックダウン後、ベルトランから、アメリカのあるレストランから、フランスのビストロ文化を感じながら、食事ができるということをコンセプトにしたイベントをしたいという依頼があり、その話を受けたと聞いていました。店や伝統的なビストロ料理のストーリーなどを案内する映像が、先方のスクーリン上に映し出されて、同じ料理が味わえるという内容だったそうです。肌でパリの空気を感じさせるわけにはいきませんでしたが、評判は上々だったよう。遠距離を繋ぐデジタル化は、経済的にも文化的にも必須となり急速に進んでいます。物理的な商売が不可能になった企業に対して、政府もできる限りのサポートするという約束をしてくれているのはありがたいことです。

ところで、ヒップ・ホップJAZZ専門の振付師Mehdi Kerkouche氏に、注目が集まっています。本来は、パリ・オペラ座にて、彼の振り付けによるコンテンポラリーダンスの作品の公演が、他の振付師2名の作品とともに、この11月の間に開催されるはずでしたが、このロックダウンで中止になってしまいました。それを惜しんだパリ・オペラ座バレエ団芸術監督であるオーレリ・デュポン氏の決断で、代わりにFacebookの有料オンラインイベントとして、今週金曜日13日20時からの公演が行われることになりました。4.49ユーロのチケットを、私も早速入手しました。オペラ座の案内はこちらです。

以下、今週のトピックスは、今週のひとことの後に掲載しています。【A】「カルフール」、独立系小売業者、生産者に、自社ウィブサイトへの無料参加を奨励。【B】仏トップパティシエ4人が共同で生み出す唯一無二のパティスリー販売サイト。【C】チョコレートメーカー「ヴァローナ」社、業務用パッケージの全面再利用のため、テスト開始。【D】フランス産キャビア誕生、100周年。

Mehdi Kerkouche氏は、前回のロックダウンでインスタグラムにアップした、動画数本で一躍注目された人。ヒップ・ホップJAZZ専門ならでは、自由で楽しいメンバーの動画をモンタージュした作品で、ロックダウン中の人々をハッピーにしてくれました。また、パリ病院基金への寄付を目的に、プロのダンサー仲間と「On danse chez vous/あなたの家でダンスします」を立ち上げ、一般の人向けに自宅で楽しむことのできるダンス教室をリモートで行って、15000ユーロが集まったというイニシアティブにも注目が集まりました。ブリジット・マクロン大統領夫人からも、お礼の電話をいただいたそうです。Kerkouche氏は、カンパニーEMKA主宰で、6年前からミスフランスのショーの振付けの監督としても活躍していますが、貧しい家庭の生まれでスペクタクルに行く余裕はなく、テレビを通してダンスの文化に触れてきたといいます。ストリートでダンスを学んだKerkouche氏へ、ロックダウン後にオペラ座のデュポン氏から突然舞い込んだ朗報のストーリー、今回氏の演出する舞台に登場するオペラ座のダンサーたちの心温まるエクスチェンジが報道されていました。そのうちのあるダンサーが、振付師とこれほど自然な関係を得られたのは初めてだと語っていた、そんな様子は、Kerkouche氏がインスタグラムで、オペラ座ダンサーたちと、一般の人向けにエクササイズ教室を公開する動画からも伝わってきました。Kerkouche氏は、亡きピナ・バウシュ氏の「踊れ、踊れ、自分を見失わないために」という言葉を胸に作品に挑んだとのこと。17日に公開される、クラシックバレエとヒップホップの接点がとても楽しみです。母親をオペラ座に招待するはずだったのに叶わなかったのが寂しいと漏らしたKerkouche氏に応え、オーレリ・デュポン氏は、このオンラインイベントに加え、ロックダウン後の公演延期を検討しているということ。実際の舞台も、首を長くして待ちたいと思います。

今年のシャンゼリゼ大通りのクリスマスの点灯は例年通り行われます。点灯式は11月22日。ロックダウン中なので、やはりオンラインイベントに。オンラインで参加者が言葉を書き入れると、その言葉がまるで点滅する光のように、オンライン上で浮かび上がるという設定にするそうです。

例年とは異なる年末ですが、いままでとは異なる方法で、人々とつながりあえることを皆が模索しています。心に優しさ、灯火を。https://illuminations-champs-elysees.com/


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