見出し画像

フランスから、食関連ニュース 2020.09.02

今週のひとこと

写真は、もとドン・ペリニョンの醸造最高責任者リシャール・ジェフロワ氏。富山県立山町白岩で酒造りに挑戦し、誕生したばかりの「IWA 5」の、世界初のテイスティングの機会に。

今年4回目になる日本酒コンクールKura Masterの様子を拝見させていだだきました。ロンドンのIWC内で2007年から開催されているSAKE部門など、様々な日本酒のコンクールが世界中にありますが、Kura Masterはフランスの現場で働くフランス人ソムリエが評価する、フランス人のためのコンクール。クリヨン・ホテルのシェフ・ソムリエであるグザヴィエ・チュイザ氏が委員長で、日本酒の輸入業者ギャラリーKの宮川圭一郎氏らが主催しています。フランスのレストランでサービスされる日本酒の選択に直接繋がる、またフランス人への日本酒の啓蒙ともなる非常にインテリジェントな品評会と言っていいと思います。今回は、コロナ禍で通常の開催日から大幅に遅れての設定となりましたが、824銘柄の日本酒がエントリー。MOFソムリエは4名、パラスのソムリエの方々など、力のある有名ソムリエたち52名が集まり、厳密に審査が行われました。受賞結果のオフィシャル発表は9月10日。https://kuramaster.com/

第1回目から参加させていただいていますが、今回は特に、Kura Masterを通じて、フランスのソムリエ業界に日本酒への認識と評価がしっかりと根付いてきたことを肌で感じました。日本酒のマーケットもさらに確実に広まっていくでしょう。1992年の世界最高ソムリエであるフィリップ・フォール・ブラック氏の閉会式の演説が印象的でした。「我々ソムリエは、ワインだけではなく、ドリンクのスペシャリトだ」、そして「日本酒の多様性は、ワインと同様であり魅力的である」とも。フランスワインが至上であり、他国のワインを受け入れない素地が昔からありましたが、それも近年は溶けつつあり、消費者の嗜好も多様化してきたことに合わせ、好奇心が開かれて、レストランのワインリストも多国籍になってきたのでしたが、それは日本酒という存在にも及んできた。レストランのプロとして説明する側の日本酒の知識も、Kura Masterによって磨かれ、興味も愛情もより深まってきているのでは、と。

閉会式の最後を締めくくったのが、もとドン・ペリニョンの醸造最高責任者リシャール・ジェフロワ氏でした。彼は今、富山県立山町白岩で酒造りに挑戦しています。今回は誕生したばかりの「IWA 5」の封が切られ、世界で初めてのテイスティングの機会となりました。酒米には山田錦、五百万石、雄町の3種の米を選び、それぞれにパーセンテージの異なる行き過ぎない磨きをかけて、5種の酵母によって醸したレシピですが、これがレシピとしての完成版ではなく、毎年異なるレシピで挑戦していきたいということ。さすがブレンドの名士としての極みを感じました。ボトルはポール・ニューマン、蔵の建築は隈研吾。そして全ての企画は、満寿泉・桝田酒造の桝田隆一郎氏との友情によって、実現に漕ぎ着けています。味わいは、ノートはオレンジ、マンダリン、ピーチ。味わいはアプリコット、クルミ寄りのアーモンドが強く芳醇で、フランスでよく使用する言葉の「グルマン」な驚きがありました。来年、再来年と時をかけて素晴らしい日本酒が誕生していくだろうと予感をさせられる体験に感謝しています。リシャール氏は「人生で今がもっとも喜びを感じているときだ」と告白していました。

日本酒を味わうグラスは、ワイングラスではなく、日本酒のために作られたグラスで味わってほしいと、様々な日本酒のグラスを製作されている、手作りガラスメーカー菅原工芸硝子さん。光栄なことにフランスでのプロモーションを我々のDOMAが担当させていただいています。日本酒ディレクターの田中順子さんと2020年に新作として発表したKIKINOのシリーズは、お酒の個性を引き立てるステムのない8種のグラス。そして艶消しをしたブラックのステムが粋な「お酒グラス」もあります。「お酒グラス」は口が上品に開きつつ、繊細な流れるようなフォルム。上質な日本酒が口にすっと入ってくるのは、ワイングラスでは得られない、日本人ならではの感性による完成度だと感服しました。ステムつきのグラスで日本酒を味わうことは、フランスの土壌から教えられたことですが、日本人ならではの感性を再度気づき、深めて、我々からも発することの探求への努力を怠らないこと。菅原工芸硝子さんから「お酒グラス」が届いたばかりのタイミングでした。

今週のトピックス 【A】パリのテラス無料拡張、来年の6月末まで。【B】2021年1月開催、世界最高峰のフランス料理コンクール「ボキューズ・ドール」、アメリカ、イギリス、ベルギー棄権。【C】ホテル「ル・クリヨン」が、スイートルームのテラスを9月末までルーフトップスペースに。【D】オンフルール市2つ星「SaQuaNa」、ガストロノミーからリーズナブルなスタイルに。

今週のトピックス

ここから先は

1,790字
食関係者にとどまらない多くの方々の豊かな発想の源となるような、最新の食ニュースをフランスから抜粋してお届けします。

フランスを中心にした旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。有名シェフやホテル・レストラン・食品業界、流行のフードスタイル、フラ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?