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フランスから、食関連ニュース 2019.11.26

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

写真は今週のトピックス【D】の話題でGRTgazが作成した、実際にバスを1台走らせることのできるオーガニック・パブリシティ。

1. 今週の一言

去る日曜日24日、シャンゼリゼ大通りの老舗ブラッスリー・カフェ「フーケッツ」が創業120周年を祝ってイベントを開催していました。「フーケッツ」は、セザール賞のガラ・ディナー開催地であることはもちろん、二コラ・サルコジ元大統領が、2007年に大統領選で当選勝利したときに、祝賀パーティーを催したことでも知られる場所。客室は歴史的建造物にも指定されていますが、今年の3月16日に黄色いベスト運動で標的になったことは記憶に新しく、火災もおこすなどの大きな損害を被って、一時閉店。革命祭前の7月13日に再開業するまで、4ヶ月にわたる工事を余儀なくされていました。

今回のイベントで世界的にイメージを払拭することも狙ってでしょう。トゥーリストも含めて新たに人々に愛されるシャンゼリゼ店としてのアピールのため、カフェのテラスにスタンドを設けて、パティシエたちがアニバーサリーケーキと称してミルフィーユをその場で組み立て、ミニサイズのそれを街行く人たちに配ったのです。ミルフィーユは当店のスペシャリテの一つで、通常は1つ14ユーロでサービスしている高級デザート。足を止めた観光客やパリジャンなどが、「フーケッツ」のテラスを何重にも取り囲み列を作っていました。

ところで「フーケッツ」は、1998年、カジノを中心に高級ホテルやレストラン運営でも知られる「バリエール・グループ」がオーナーとなり、2017年からは3つ星シェフ、ピエール・ガニエール氏がメニューを監修。従業員は110名で、そのうちパティシエは10名。「バリエール・グループ」の資金力から、黄色いベスト運動から発した暴動にも屈することなく、従業員たちも守られ、こうして無事開店にこぎ着けたのだとも思います。

配られたミルフィーユを黙っておいしく食べるのはトゥーリスト。黙って食べることがないのはフランス人。これを一生懸命に組み立てているパティシエたちの気持ちもよそに、ミルフィーユの厚さが足りないやら、クリームに入っているバニラの量が満足できないなど。意地悪というよりも、自分の意見を主張したい、彼らならではのコミュニケーションを存分に発揮していたのには、かえって微笑ましくもありました。

ある若い母親が父親に肩車してもらっている、おそらく5歳くらいの息子に「私が知っているミルフィーユじゃない。時間がないからグラサージュしなかったのね」と一言。「グラサージュってなに?」と聞く息子に、「白と黒のマーブル模様の砂糖がけよ」と母親。今は、このマーブル模様の甘いグラサージュをかけたミルフィーユは時代遅れ、パリのパティスリーではほとんど見ない代物だと思っていたので、こんなことを発言する人はどんな年齢の方かと思って後ろを振り向いたら、かなり若い女性だったのに驚きました。料理業界に浸りきっている、あるいは人気の若手シェフの店や新店などのクリエーション、あるいはSNSで発信されるパティスリーが、知らず世界の中心だと信じきっていたという自分に気づかされ、恥ずかしく思いました。鵜呑みにしない、様々な角度から物事を眺める精神というのは、小さな頃から彼らは養われるのでしょう。また、言い過ぎかもしれませんが、クラシックと言われるパティスリーの魂が、こうやって家族の会話の中で自然に受け継がれていくのだということにも嬉しさを感じました。

2. 今週のトピックス【A】レストランにもオーガニックラベルであるABを認可。【B】大統領夫人ブリジット・マクロン氏、摂食障害をもつ子女への支援を検討。【C】禁酒月間は延期?【D】第24回「市長と地方自治体サロン」で、生ゴミによるバイオガスへの関心が高まる。

3. 今週の日本@フランス、ワールド【A】Time Out Parisによるベストレストラン50に、日本が関わるレストランが11軒もランクイン。

以上の本文は以下です。

2. 今週のトピックス

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