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フランスから、食関連ニュース 2020.05.26

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

1.今週のひとこと

先週の木曜日はキリスト昇天祭で、フランスは祝祭日に当たりました。ロックダウンが緩和されて初めての祭日であり、100㎞圏内の移動が許可されたため、週末を挟んで、自宅を離れて田舎で過ごす人々も多くいたようです。私自身もパリの南西部50㎞離れた田舎のオーベルジュへ足を運びました。人混みを避けるため、木曜日は遅く出て、帰りは土曜日の午後に。思惑通り、人が密集した状況に陥ることはほぼありませんでした。宿泊したオーベルジュでも、通常はおそらく25人程は宿泊できるでしょうが、客は10名のみに留め、満室に。マスクや消毒液の完備、キッチンの使用も控えるなど、細心の注意が行き届いていました。この辺りの他の宿泊施設でも、同じように定員を減らし、収容を低く設定していることも手伝って、少し前からパリジャンたちの予約でいっぱいになっているということでした。少しでも客が戻ってきていることは嬉しいが、恒例で毎年泊まっていた北の国からのトゥーリストが当然ながら軒並みキャンセル。観光地ではなく、自国民に支えられているかのように思えるようなこうしたパリ郊外のホテルでも、大きな損害を被っているのだなと、身を以て感じました。通りかかった市街地も人出は少なく静まり返っている。しかし、そこにある自然は、人類に忍び寄る世界的な危機を知らず雄大で、初夏の美しさを盛んにしているという対比が印象的でした。

この小旅行は、友人の家族と一緒に過ごしました。12歳になった双子兄弟の子供と旦那様は留守番と決めた友人との4人旅行。双子兄弟は、学校が始まらず、持て余しているエネルギーを田舎の大自然で存分に発散しているようでした。その子供たちとのひと時も、私にとって有意義でした。学校や社会でたくさんのことを吸収している、育ち盛りの2人。歴史上の人物で誰が好き? 今なんの本を読んでいるの? 物事の分岐点に人徳を選ぶか、政を選ぶか、どちらが大切だと思う?など、大人顔負けの質問を次々に投げかけてきます。真剣に生きている彼らに、子供と思って接するのではなく、一人の人間として揺るぎない考えを、正直に伝えていくことの大切さ、あるいは、常に真摯に生きていくことの大切さを考えさせられたひと時でもありました。2人はハーフで、フランス語はもちろん日本語も驚くほど流暢。ニュアンスから落とし込む言葉も的確で、語彙力もあり、脱帽でした。

朝食での出来事。庭のテラスにテーブルセッティングされた席につくと、たまたまスプーンが一本足りませんでした。そこで、友人は「スプーンが一本足りないので、持ってきてほしい」と頼んだのですが、その言い方に対して、子供たちが大抗議。「足りなかった」の指摘は、相手の非を責めることになり、心ない発言だ。子供たちの解釈ですと、フランスでは、ダイレクトに要求を伝えるというマインドを持つことが大切とのこと。「スプーンを1本いただけますか」とだけ、ストレートに伝えるべき、といいます。なるほど「ここにない」というのは問題ではなく、「1本欲しい」という気持ちがあるだけで、それさえ遂行されれば良いことだ。「〜だから、こうなった」や、「〜だから、不満なのだ」という理由付けの思考回路は、人に伝わりにくいし、自分の感情が人の心をざわつかせてしまう。子供たちの意見は一理ありながらも、もしも、働く人への気づきを大切とするならば、「足りなかった」ということを伝えることも大切かもしれないと、子供たちに伝えたのですが、彼らにどう伝わったか。何れにしても、どちらが間違っているとか正しいということではなく、色々な考え方があることを、こうやって、大人も子供も学んで、お互いに成長していくのかもしれません。

「そこに、ない」ということで、主張をしているレストランがあることを思い出しました。例えば、最近の傾向で、パンを置かないという店。あるいはバターは決しておかないなど。料理の繊細さを壊してしまう考えから、基本的なサービスさえ排除する。そして客が欲しいと伝えると、店の料理の哲学に反するので置いてないと返答を受ける。私としてはこうしたあり方は、どうかなと思います。レストランは、お客様に最大限に楽しんでもらえることを第一義にするのであり、自分のエゴのためにあるのではないのでは、と。決して自分のフィロゾフィーには見合わなくとも、彼らのために予測し、準備をしておくことが、レストランとしての使命ではないかなと。「人を試す」というやり方が、文化を磨いてきた側面もあるかもしれませんが、本質的な禅問答ではない限り、それがひいては芽をつぶす行為となっているかもしれないことも、心しておきたいと思います。


⒉ 今週のトピックス。【A】コロナ後を見据えた、メニュー表アプリの発展。【B】スペイン『カン・ロカ』の予約状況。【C】『メトロ・フランス』、レストランの営業ガイド作成。【D】ブルゴーニュのワイン生産者、医療施設支援オークション。【E】南仏某レストランの厳戒態勢下対応。


2.今週のトピックス

【A】コロナ後を見据えた、メニュー表アプリの発展。

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