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はしりのトリュフ@パリのシークレットレストラン フランスの食関連ニュース 2021.12.01

今週のひとこと

もう随分前から、パリのこの店に再訪したいと思っていました。オープンしたのが2015年。そのころから評判が立っており、フィガロ紙では最優秀食卓賞にも輝き、ニューヨークタイムズでも2015年にオープンした最高ビストロ10軒の中にも選ばれた。私も無論、関心を持ちました。ところが、予約のために電話をしても、なかなかつながらない。そこで、その店に直接訪れて、席が取れないかを懇願した。すると、たった今、ちょうど席が1つ空いたから、今からどうだというので、ディナーにあずかることになりました。そのサプライズでいただいた食事が素晴らしかった。ビストロ料理と呼ぶのにはもったいない、繊細な技術、仕事による料理、行き届いたチャーミングなサービスにも感激をして、責任者に再訪を誓い、ダイレクトコールナンバーをいただくことを許されたのですが、その直後、その責任者、シェフに改変があって、また白紙からコンタクトをとらなくてはならないのを残念に思っていました。電話はあるのに通じないという、一見客は予約の取れない店であることは変わらず。敷居の高い店になってしまっていました。

そうはいっても、実はこの店のオーナーは10年来の知己。他にもホテルやらレストランをパリで何件も展開している、注目される経営者です。彼に電話をすれば予約は取ってくれるでしょうが、私自身の方法でたどり着けない限り、お店の実際のアクターたちとは親密な関係にはなれないことは、よくよく心得ているので、時期を待っていました。そうこうするうち、パリには他にも魅力のある店が次々にオープンし、パンデミックの時期が訪れて、、など、タイミングを逃し今に至っていました。

時々食事を共にする友に、この店の素晴らしさを伝えていたのですが、それが功を奏したか、またその友人の交友関係が運を運んでくれた。たまたま、その友が別の友人にこの店の話をしたら、その方が責任者と親しいということが判明した。すぐに席を特別に取ってくださいました。

6年前、オープンしたての頃の内装は少し変わっていました。窓のない正真正銘の客席に迫るオープンキッチンが取り付けられていて、席数は20ほど、というところでしょうか。夏は外にテラスをキッチンは客席と密着しているのに、換気設備がしっかりとして、まったく臭わない。石壁、赤いバンケットがビストロの暖かな雰囲気を醸し出す小さな空間。サービスの方々のやりとりから、常連の方ばかりというのが伝わってきました。ワインのチョイスの幅は広く、30ユーロ前後から1000ユーロ越えまで。自然派ワインからクラシックまで。周りのお客はボルドーの銘醸ワインのボトルを開けて楽しんでいらっしゃいましたが、アルザスのとても面白いオレンジワインが50ユーロ以下で見つかったのでそちらを。「ポレンタと半熟卵、トリュフ」、「チコリとハムのグラタン」、「ヴォライユの蒸し焼き、季節の野菜とキノコ、アルマニャック風味」、「タルトタタン」と、前菜からデザートまでパフォーマンスの高いマリアージュでした。

お客が立ち去る際の、お店のサービスの方々とのやりとりを観察していましたが、ほぼ全てのお客は次の予約をして帰ります。中にはまた明日、また来週、という言葉を残して帰るお客も。最後、責任者とソムリエの方といろいろとお話をさせていただいたところ、やはり、電話をつけるまでもなく、予約はこうして毎日埋まっていくのだそうです。

最後に、次回はどのように予約を取ったらいいかという質問をすると、いつでも立ち寄ってもらえたら、その場で予約はできますよという。自宅が近いので、いつでも寄りますね、というと、「近所ですか、近所のお客は大歓迎です」と言って、ダイレクトコールナンバーを渡されました。「次回はこちらに電話してください」と。近所の客がいかにお店を裏切らないかということを知っている、正直な反応だと思いました。

いかにも食通な体格のいい方が3人の会食者とともに、ポイヤック・ド・ラ・トゥールを2本あけていらしたのが、印象的でしたが、元老院がそばという立地でしょう、元老院議員の方で、この彼も常連なのだそうです。また大型犬のグレートデーンをお供に連れて、遅い時間に訪れたカップル。到着と同時に男性の方にはドラピエのシャンパーニュ、女性にはサヴォワの白ワインが2人に注がれた。愛称で呼び合うサービスとお客の心地よい会話。料理中心のガイドだけでは語れない、食べる人もともに作り上げる雰囲気と磨かれる感性、そして人と人が紡いでくれるご縁が幾重にも繋がり運んでくれる関係性にも、フランス料理がフランス料理たる所以が詰まっていると改めて感じさせてくれる良店でした。

今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載されています。今週もフランスの食業界の動きがわかるニュースばかりです。【A】仏版ミシュラン・ガイド2022発表、3月22日に延期。【B】次回のボキューズ・ドール国際料理コンクールの出場シェフに、24歳の最年少でフランス発の女性シェフを選出。【C】「ルイナール・ソムリエ・チャレンジ」2021年、本場フランス開催で、日本人女性のソムリエが優勝。【D】ミシュラングループ、エアフランス・マガジンに参入。

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