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CHANEL LE 19M@パリ19区 フランスの週刊フードニュース 2022.03.12

今週のひとこと

パリ郊外もすぐ隣の19区に、今年1月にオープンしたシャネルの工房「La 19 M」へ行く機会をいただきました。シャネルが抱える職人芸の11つのメゾンを集結させ、工房としたという全部で2万5千平米もある表面積で、1階が展示会スペースとなっています。

「オープニング展」は4月23日までの開催。各メゾンが使用している代表的な作品や道具、素材を展示して、さらに参加型のアトリエがありました。

とくに楽しかったのは、飛び入りで参加できた、3つの刺繍工房「Lesage」と「Lemarié」、「Montex」による作品作り。各メゾンがそれぞれ、Le 19M周辺地図をプリントしたキャンバスと、それぞれの素材を用意。地図に刺繍を施して、期間中に完成させることを目標としています。ヴィジターは誰でも、その1刺しに参加できるというもの。職人さんが常駐しており、指導を受けながら、刺繍に参加できます。
基本的な糸の刺し方、針の持ち方、手の運び方。素材との距離感など、刺繍がどのように完成されるのかということを、職人さんとの会話の中で触れて楽しみながら体験できる、まさに職人と一般の人々をつなぐ、有意義なイベントでないかなと思いましたし、また、同じ地図をプリントしたキャンバスでも、3つのメゾンそれぞれが持つ素材や考え方で、異なる表情を生み出すことができるということも、目の当たりにできました。
写真にあるのは「Lesage」主導のもの。シルバーのスパンコールが縫い付けられた硬質の建物のデザインは「La 19 M」を象ったもので、スパンコールやビーズや布、糸で3次元に浮かび上がる地図が、最後にはどのように出来上がるのか。たくさんの人が参加することで生まれる作品の厚みも、想像するだけで心が高鳴ります。
また期間中にさまざまなアトリエも用意されています。例えば、自身のポートレートを撮影してもらって、ドットで落とし込んだキャンバスに、刺繍アーティストの指導で、刺繍で立体的な作品に仕上げるというもの。また「Lesage」による指導で、ポプリなどを粗く織り込んだ、ツイードの作品に挑戦するというもの。職人芸を、日常の中に生かすという創造力も刺激されそうです。

パリの3つ星「アレノ・パリ」では、コロナを経験し、新しいガストロノミーの楽しみを生み出すために、インテリアを改装しました。
象徴的なのは、テーブルとテーブルの間に設けた薄い布の仕切り。四季をあしらった繊細な動きのある刺繍が施されており、それが「Montex」による作品でした。
受け継がれる職人芸により、空間では時間を超越することができる。
だからこそ、そこで提供される料理はもちろん、おもてなしなどの瞬間的に提供される芸術の心も、その職人芸と同じくらいの重みが求められることになります。
そして、コロナ禍はもちろん、戦争を身近とする今、より一層に、この一瞬一瞬の大切さについて考えさせられる、思い知らされる時代になったと思います。
ひと針ひと針が、一つの作品になることを忘れずに。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載しています。食関係の方々の日々のヒントになるようなフランスからの情報をピックアップしています。【A】「海底二万里」を再現したようなレストラン登場。【B】Sushi Shopの点字ボックス。【C】プロヴァンス地方の3つ星、ショコラトリーオープン。【D】P&Gプロフェッショナル、MOFランドリー・染色士とのコラボレーション。

今週のトピックス

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