葉月文

小説を書いたり、書かなかったり。まあ、マイペースに。

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  • にちじょうスケッチブック

    過ぎていく昨日。触れている今日。夢見る明日。特別なことなんてなにもない。僕と君の日常を瞳にスケッチした、オムニバス集。

最近の記事

天使の胸に、さよならの花束を 番外編

 天使の胸に、さよならの花束を ~余命マイナスなわたしが死ぬまでにしたい1つのこと~ 『幕間 Book - 君に読む物語』  黒い髪の天使とうさぎのぬいぐるみに封じ込められた悪魔は、今日も旅を続けています。  どこかの町で、まだ見ぬ誰かと出会うために。  幽霊となってしまった人たちの胸に埋められた、未練の花を咲かせるために。  ――ねえ。あなたの未練はなんですか?  アイは翼を持たない天使です。  彼女はとても大切なものをなくしてしまいました。  だから、二本の足でそれ

    • 葉月文新作ラノベ『さんかくのアステリズム』本日、発売!!

      二年ぶりに電撃文庫さんより新作が発売されます。 『さんかくのアステリズム 俺を置いて大人になった幼馴染の代わりに、隣にいるのは同い年になった妹分』 著:葉月文 イラスト:U35先生 とある病によって七年眠ったまま成長できなかった主人公。 目が覚めると両片思いだった幼馴染が学校の先生に。 妹としか見れなかった少女が、魅力的な同級生へ。 変わってしまった女の子たち。 変わらないままの俺。 変わってしまった三人の関係。 変わらないままだった三人の想い。 これは、三つの輝きによる三

      • 卒業アルバムを開いて

         生まれて初めての恋をしたのは、まだ小学生の時。  友達とケンカした放課後、買ってもらったばかりの靴を隠されてしまい泣いていたわたしに、どうしたの、と尋ねてきた男の子だった。  わんわんと泣くばかりで言葉は断片的になり、うまく形になっていなかっただろうに、彼はとても真摯に耳を傾けてくれた。日が暮れるまで一緒に靴を探してくれたけれど、結局、靴は見つからないままだった。  しかし次の朝、靴は実にあっさりと靴箱に戻ってくることになる。きっと、親に叱られでもして、でも直接謝ることもで

        • 春の歌を、もう一度

           また桜を一緒に見てくれる、なんて。  そんな在りきたりな約束に期待をしてから、随分と月日が流れた。言葉だけの、なんの制約もない約束だった。守らなくても、誰も罰を与えない。誰も罰せられることはない。  故に、誰をも強制させることはできない。  去年とも、その前とも、そのさらに前とも同じ暖かな風が頬をなぶる。そうすると、まるで一つだけ欠けていたピースがぴったりとはまるみたいに、僕の中にあの日の僕が帰ってくる。  確か、そう。  花見をすることになったんだ。  クラスのみんなで。

        天使の胸に、さよならの花束を 番外編

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          指先に、片思い

           ああ、やっぱり今朝もだ。  目を覚まして、空気を吸う。それから思いっきり吐き出す。朝の空気は無色透明、無臭。だけど、少しだけ甘い気がするのはどうしてか。  夢から覚めたわたしが、まず最初に想うのはいつもおんなじ人のこと。そんな日々が、もう四年も続いている。ちゃんと言葉にすると、その長さに思わず驚く。  そうか。  わたしの片思いはもう四年生なのか。  と、そんなことを、つい最近、ゆうちゃんにさらっと告白したら、まるで何かの宗教のようだね、なんて言われてしまった。先日、テレビ

          指先に、片思い