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天神デビュー

オーディオショップ

オーディオが趣味の大人たちと知り合った。わたしは音楽が好きなので、自転車で行ける距離に、オーディオ専門店があると知り覗いてみたのだ。買えはしなかったけど。そこは高級オーディオが並び、視聴が出来るサロンの様になっていた。数百万円のスピーカーが並び、10万円のものは安く感じるくらい値段に関してはバグっていた。場違いな感じはしたが、温かく迎え入れてくれて、椅子に座るのをすすめてくれた。コーヒーが出てきた。無料だった。とても嬉しかった。わたしは淹れたてコーヒーが大好きだ。実家では毎日みどりさんと一緒に飲んでいたのだが、大学生になり越してきてからはご無沙汰だった。

年上の友だちが出来た

すすめられたテーブルには先客がいた。常連のおじさん達だった。後からわかったのだが、おじさんと言ってもアラサーくらいの人達だったので、まぁ若い部類に入るのだが、その時はおじさんにしか見えなかった。ごめんなさい。わたしは最年少だったし、可愛かったから(自惚うぬぼれにも程があるが)色々質問された。楽しかった。音楽や趣味の話もした。
ショップの社長さんも話に加わり、音楽をかけてくれた。その生々しい音にびっくりした。まるでそこにプレーヤーがたってサックスを吹いている様にリアルだったのだ。

天神に行こう

わたしは、あっという間にショップの常連になった。美味しいコーヒーも目当てだったし、友だちも増えて大層楽しかった。ふらりと寄っても必ず誰か知った人がいるって素敵だと思った。
ゴールデンウィークに皆でオーディオ・フェスに行くと聞いた。場所は天神、一緒に行こうと誘われた。交通費が心配だったが、連れて行ってくれると言われ大きく何度も頷いた。

初めての大都会

わたしにとって都会は、それまでは小倉だった。九州の高校生は、長崎佐賀熊本の子たちは天神で遊び、大分の子は小倉で遊ぶ。鹿児島は特別な文化圏で、宮崎は陸の孤島だ。わたしは、天神に行った事がなかった。
着いてみると驚く事ばかりだった。小倉も都会だが、規模が違った。キョロキョロして完全にお上りさんだった。ここで迷ったら帰れなくなる。必死でおじさん達に付いて行った。天神が大好きになり、後に通いつめてキョロキョロしなくなるのは、また別の話。
その時は、迷子にならない様に、ひたすら、おじさん達の背中を追うのに、必死だった。人込みをかき分け、時には、おじさんの裾の端を掴んだりした。
その様を見て、なぜか皆でわらうのだ。「可愛いね。」って。
やっぱり、わたしは可愛い。

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