見出し画像

777 トリプルセブン/伊坂幸太郎

■ 感想

殺し屋界の不運部門代表と云っても過言ではない天道虫こと「七尾」が、シンプルなはずの依頼をどうしてこうまでもと拗らせていく殺し屋シリーズ最新刊「777」。七尾にこれ以上相応しくないタイトルは存在しないんじゃないかと思えるトリプルセブンがどう彼の運命と重なるのか。

仲介人・真莉亜に「部屋に行って荷物を渡す。それだけだよ。本当に簡単。びっくりするくらい」と云われても、不運が螺旋となって襲ってくるタイプの七尾は気乗りがしない、が行くしかない。仕事の場所は「死にたくても死ねないホテル」と噂されるラグジュアリーなホテル・ウィントンパレスホテル。

依頼の内容は、誕生日を迎える父にプレゼントを届けて欲しいと心温まる素敵案件。これは事件性も人の生き死にも香る要素がないだろうと思えるが、死体は増えるよどこまでも。誰が味方で誰が敵なのか、ウィントンパレスホテルには一体何人の殺し屋がどんな理由でこんなにも犇めいているのか、これが七尾の生きる道と云わんばかりの茨道が七尾を絡めとっていく。

蜜柑と檸檬を彷彿させる奏田(ソーダ)と高良(コーラ)、布を巧みに使う殺し屋・モウフとマクラ、人生を鮮やかにリセットしてくれる頼もしいココさん、美しい容姿で人生スイスイ渡って来た残忍集団六人が、一度覚えた記憶は忘れることがない、記憶の天才・紙野の捕獲と保護、死体処理の役割に分かれて大混戦。そこに元政治家の暗殺計画や暗殺者の暗殺計画まで加わって、今回も安全性皆無の超絶怒涛の伊坂ワールド満開。

「リンゴが薔薇を羨む必要はない」不運と幸運の狭間で抗う七尾にまた会いたい。

■ 寄り道読書

<<<漂流読書>>>

■マリアビートル/伊坂幸太郎

ビビりで不運な七尾と云えば「マリアビートル」。うだうだしながらもやると決めた時の格好良さと、捨てきれない人の良さが七尾の魅力。予想外の山積みの不運を乗せて走る、殺し屋狂騒曲。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?