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「役に立ちたい」と言える強さ。▶︎ 『それってパクリじゃないですか』1~3巻 読書感想エッセイ

「守りたい」「役に立ちたい」は、頑なな人の心も、私の書きたい欲も動かす。
どんな小さなものでも、心と技術があるならば、今不要だからと捨ててはいけないのだ。

『それってパクリじゃないですか』1~3巻
 読書期間︰2023.06.14〜10.?

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2023年放送のドラマから入りました。
珍しいお仕事物語が好きなので、
知的財産を扱ったドラマなんて面白そう!
と思って見始めたのですが、エリート弁理士(重岡大毅)と新人知財部員(芳根京子)のコンビ感が良くて、これは原作も読みたいと手にしました。
「読み終わるのもったなーい」と言いつつ、シリーズ一気読みです!

私はものづくりが好きだったり、家業が自営だったりするので、なんとなく知的財産とか弁理士という言葉や仕事は知っていましたが、それが実際にはどんな内容なのかは知りませんでした。
きっと大多数の人たちがそうでしょうね。(だから小説になる)
この小説を読んで、今自分が手にしているものは、小さなものも全部いろいろな技術が隠れていて、それを守る権利が付いているんだなぁと実感しました。
今打っているMacBookなんて、どんだけあるんだろう?

知財って人間の骨みたいだな、と思います。
見えないけれど、とっても重要。
見えないけれど、体をしっかりと支えている。
個が個として成り立たつために、外からは見えないところで、仕事をしているのです。
見えないものを知っていくのは、素直に感心したり、ワクワクしますね。

知財という難しくも地味な話(すみません)をこんなにも面白く読めるのは、身近な出来事を題材にしているのもありますが、登場人物たちのキャラクターも良いのです。
ぼんやりしているようで切れ者だったり、厳しいようで柔軟だったり、エリートで自信たっぷりに見えて芯が脆かったり。
そんな癖のある人物たちの中で、主人公・藤崎亜季はまっすぐで、一生懸命で、明るいのです。
知らないことにも、素気なくされても、「みんなの汗と涙の結晶(開発成果)」を守りたい、「役に立ちたい」一心で必死で食らいついていく。

ーーそうか、やっぱりこういう素直で懸命なキャラクターが応援されやすいのだな

と改めて感じた本でした。

それは、現実でも同じかもしれません。
ダメ元でも、失敗しても、一生懸命な人にはやはり応援者がつきます。
頑張らないことがカッコいい時代に10代を過ごして、スマートに物事をこなすことが素晴らしいと評価されがちな今を過ごしている私には、亜季のような性格はむしろシンプルに羨ましいのです。
「役に立ちたい」と、役に立ちたい相手に言えてしまうことが、勇気ある行動に思えるのです。

この亜季のまっすぐな言動に戸惑いつつも受け入れていくのが、上司で弁理士の北脇です。
若くして弁理士の資格を持ちながら、一企業の知財部員として働き、しかも人気のない子会社(亜季が務める会社)へ出向しています。
クールで堅物で合理的でこだわりが強いので、なかなか他人からは誤解されがちな性格ですが(そりゃそうだろうな)、亜季と関わるうちに少しずつ感情が出てきます。
実は北脇も亜季も、元々は研究職。
事務よりも、実験に実験を重ねてものづくりをする側の人たちです。
だからこそ、みんなが作り上げたものを法律の力で守りたいのです。

亜季の知らないところで北脇が、知財にいまいち理解のない開発部長(ドラマでは瀬戸朝香だった)を説得するため、こう言い放つシーンがあります。

「もし今発売できなくても、製品として失敗しても、必死の開発の結果が財産なのは変わりがない。きちんと守れば、また必要とされるときが来るかもしれない。
せっかく掘り当てた石なんだ、今輝かないからって道ばたに捨てるべきじゃない

1巻より

亜季にも私にも、素直にさくっと刺さりました。
北脇が言いたいのは、物理的なことではなく、権利や成果のことです。
でも、まだポンコツ新米知財部員の亜季自身のことも含めて言っているような気がします。
人の感情や考え方、その価値観なども、「今役に立たないから」と拒否をしては、後に必要になったときに誰のことも救いません。
他の誰かが拾った瞬間に、もう自分たちの元には戻らないのです。
ただの思いつきでも今後考えを重ねていけば役立つかもしれないし、どの段階で価値が出るかなんて、未来が見えない私たちには解りません。
ムダと思われていたことが別のアイデアと重なって、びっくりするほど世の中を救ったりすることもありますから。


3巻まで出ていますが、物語はまだ途中で、「いよいよ強敵現る」という感じになってきました。
キャラクターをとっても、物語をとっても、知財というミステリアスな仕事をとっても、
「私書きたかったなー、羨ましいなー」
書きたい欲にかられた本です。
早く4巻出ないかなー?


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本日もきっとたくさんの知財にあふれているであろう相棒・MacBookAirからお送りしました。
また次の本でお逢いしましょう。

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