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私と夫とブルーボトルのマグカップ

とある土曜日、私は朝からそわそわしていた。その日は夫に内緒で準備したバレンタインのプレゼントが届く日だったから。

***

遡ること3日前。

「そういえば、バレンタインどうする?」
そんな会話を夫婦でしていた。

今年は出産も間近に迫ってるし、手作りはしんどい。かといっておしゃれなお店に買いに行くのはコロナ感染リスクから避けたい。ということで、IWAIのお祝いケーキ便を注文しようとふたりで決めた。

「でも、それだけじゃなんだかな〜」
私は悩んでいた。

妊娠がわかってから、夫は以前に増して家事や料理をしてくれる。今や彼の方ができるのではないか?と思うほどだ。

そんな彼に改めて感謝を伝えられるせっかくの機会、バレンタイン。妊娠しているとはいえ、何かできることをしたかった。

そうして絞り出したのが、ブルーボトルコーヒーのマグカップをサプライズでプレゼントするというアイディア。彼はコーヒーが好きだし、テレワークが主流になってからより飲むようになった。ちょうど買い換えようと思っていたし、ペアにすれば私も使える。

よし、これだ。
そう思って早速オンラインストアでポチったのだ。

***

「どんな反応をするだろう」
「喜んでくれるかな」
ワクワクして待っていると、宅急便がやってきた。

私はあくまで平然を装う。(ちょっとニヤついていたかもしれないが)そして、夫は自分の名前が伝票に入った荷物を持ってきて、言った。

「はいこれ、プレゼント」

は?と思った。思ってた反応と違う。こっそり注文したけどバレていたのだろうか。それに、私に対しての”プレゼント”とは一体どういう意味だろう。

「いや、これ私からのプレゼント」

そう言うと、夫も驚いていた。彼もどうやら、思ってた反応と違ったらしい。焦っていた。

夫:「いや、ここに俺の名前あるやん」
私:「だって私があなたの名前で注文したもん」
夫:「は?」
私:「バレンタインのプレゼントだってば」
夫:「???」
私:「内緒で注文したの」
夫:「……いや、俺は愛妻の日(1月31日)のプレゼントで」
私:「ブルーボトル?」
夫:「うん」

お分かりいただけただろうか。偶然にも夫婦でお互いにプレゼントを用意していて、これまた偶然にもそれがブルーボトルのマグカップだったのだ。

ちなみに選んだマグカップはお互い違うもの。同じだったらさらにややこしいことになっていたかもしれない。

しばらくふたりで笑いながら、「ありがとう」と言い合った。この人と結婚してよかったな〜なんて思ったりして。

***

あの日から毎日このマグカップを使っている。ふたりで朝ごはんを食べる時、コーヒーブレイクをする時。このマグカップを使うたび、おかしくもちょっとほっこりしたあの出来事を思い出す。

”ただのマグカップ”なのに、ふたりだけの特別なストーリーがあるだけでなんだか嬉しくなった。

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