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私が見た、日本におけるブラジル音楽の現状

似たようなタイトル、似たようなエピソードはたくさんありますが、
今回もある日の出来事をお話しさせてください。

数年前、悲しいことが起こりました。

知り合いがパーティで突然ボサノバを歌い始めた

あるセミナーを数ヶ月ほど受講していました。
その講師陣、受講生、卒業生の皆さんが集まるパーティがあったのですが、
講師のうちの一人が、ブラジル音楽を歌う歌手の方で、
余興で数曲、披露なさったのです。

他のジャンル(外国語の歌)をメインで歌っていらっしゃっていて、
ボサノバも歌ってみよう、という軽い気持ちで始めたそうです。
セミプロで活動していらっしゃる方でしたが、
その先生が歌を歌っていることは誰も知りませんでした。
受講生の皆さんは、長年の付き合いがある先生が歌を歌っているとその場で初めて知り、
かなり興奮した様子でしたが、
私は顔が真っ青になりました。

正直申し上げて、ひどいものでした。
発音どころかポルトガル語も
おそらく全く勉強していない様子で、
カタカタを読んでいるだけの印象でした。
音源もカラオケなので、
ブラジル音楽のグルーヴなども全く関係ありません。
音を流して、聞き馴染みのないカタカナを並べて、
「歌っているという状態」を披露しているだけだと感じてしまいました。

聴くに耐えられませんでした。
大勢の方が歓声をあげ、弾けんばかりの拍手を送る中、
「こんなのボサノバじゃない」
「こんなのポルトガル語じゃない」
「こんなものを広めてはいけない、拍手を受け取ってはいけない」
「私の方が正確に伝えられる」
良くないことばかりが頭をめぐり、顔が引き攣り、
呆然としてしまいました。
もちろん、拍手なんか送れませんでした。

聴衆は100人くらいだったかと思います。
先生の立場からしてみれば、
ご自身の活動内容を発表しているに過ぎません。
自分のフィールドを広げたいとか、
意外な一面を見せてパーティを盛り上げたいとか、
英語ではないカフェで流れてるようなオシャレな音楽を聴いてもらいたいとか、
そういったポジティブな理由でボサノバを歌ったのだろうと察しがつきます。

私が最も問題視したのは、
「これをボサノバだと明言して発表していること」
「これがボサノバなんだと聴き入ってしまうこと」
これらのことです。

つまり、日本でどれだけブラジル音楽の認知度/レベルが低く、
ポルトガル語の認知度/レベル/需要度が低いのか。
それを目の当たりにして、悲しい気持ちになりました。

英語との認知度の乖離

もしその先生が英語の歌を歌っていたのであれば、
また話は変わってきます。
受講生の中に、英語が堪能な方がいらっしゃるかもしれません。
そういう方が聴いたら
「英語の発音が変だな」
「英語のリズムに乗れてないな」
そういう感想を抱く方が現れる確率はかなり高くなります。
そうすると、発表する側も、
かなり自信をつけてから発表することでしょう。

それが、ブラジル音楽、ポルトガル語になったらどうでしょうか。
指摘してくる人は、おそらく0に近いでしょう。
そして、聴いたこともない音楽を生で、しかも知り合いの歌で、無料で聴ける!
となると、聴衆が喜んでくれる可能性が跳ね上がるのですから、
こちらを選ばない理由はありません。
この時はなんとも不幸なことに、
それを専門にしているプロである私が、居てしまいましたが。笑

本物の人

どういう理由でボサノバを選んだのか分かりませんが、
「聴いている側が分からないから」
という理由で
音楽を蔑ろにしてはいけません。
「聴いている側が分からなくても、自分はきちんと分かっている」
本物の人であれば、そう在るベきではないでしょうか。

もし「聴いている側が分からないから」という理由でなかったとしても、
音楽を披露し、報酬をいただき、
セミプロとして活動しているのであれば、
ブラジル音楽に対しても真摯であるべきです。
せめて開口音と閉口音くらいは知って、区別して発音するべきです。
その考えすら浮かばないのであれば、
「セミ」であっても「プロ」と名乗ってはいけないと思います。
本質を見落としてはいけません。

パーティーが終わった後、私はその先生のところに行き、
音楽専門のポルトガル語の先生であることを伝え、
「今のままではブラジル音楽ではない」と、
感じたことをきちんと申し上げました。
ブラジル音楽への認識を変えるために、
お試しだけでいいから私のレッスンを一度受けて欲しいとお願いし、
その後も何度かやり取りをしましたが、
結局、受講してくださいませんでした。
ご家庭の事情が突然変わり、それどころではなくなったと、
去年、久々にお会いした時にお話ししてくださいました。

あまりにもひどかったことが忘れられず、
メッセージのやり取りの中で、
「elaは開口音だから口を開かないといけない」
「『エーラ』の伸ばし棒がないと不恰好になる」
「これが音楽に大きな影響を与える」など、
少しだけ、つい解説してしまいました。笑
それでも、私の話(ポルトガル語をきちんと学ぶこと)に
ご興味がないようなので、
それはもう仕方がないです。
ご本人からするとつまみ食い程度に始めたものでありますし、
強制はできません。
ただ、「音楽に対して本気ではないんだろうな」という印象を
今でも持ち続けてしまっています。

「プロ」である自覚と責任

このような経験を経て、
私は「ポルトガル語とブラジル音楽を正しく伝えないといけない」と
強く感じながら、活動しています。
私のレッスンに来て欲しいから申し上げているのではありません。
信頼できる先生、
自分に気付きを与えてくれる先生、
「本質」を理解している先生であればどなたでもいいのです。

ただ、何事も、プロである以上、
相応の知識、技術を体に染み込ませて、
「自分は、何も知らない人たちにブラジル音楽を広めていく存在なんだ」
という自覚と責任を持って、活動に取り組んでいただきたいと願っています。
みんなで一緒にブラジル音楽とポルトガル語の発展に貢献していこうじゃありませんか。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
・「ポル語グルーヴ」のブラジル音楽への落とし込み方
などを教えています。
YouTubeでミニ講座を投稿している他、オンライン無料レッスンも行っています。
ご興味がある方は是非YouTubeチャンネルHPをご覧ください.*˚✩
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✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』

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