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ポルトガル語の母音は17種類【音声学】

まずは基本

ポルトガル語の母音の文字は、7つです。
a e i o u
ã õ
それに対して音は、12個あります。

口母音
[i] [e] [ɛ] [a] [ɔ] [o] [u]
鼻母音
[ĩ] [ə̃] [ɐ̃] [õ] [ũ]

※ポルトガル語の「あいうえお」はa e i o uですが、
この並び順は、口の開きの移動経路を参照にしたときに使う並べ方です。
横開き→大きく開ける→中央に窄めるの順番で移動

この12音は基本です。

これはブラジルに限ります。ポルトガルでは+2で合計14種類くらいあると思います。
私はポルトガルに1ヶ月のセミナー留学に行ったとき、ブラジルには存在ないこの2種類の発音だけ出来ず、苦労しました。

日本語の文法書では、口母音と鼻母音と、別で紹介されているかもしれませんが、ポルトガル語の本では「12個」と書かれています。
まあ、5+7でいずれも12音ですね。

これは必ず順守しないといけません。口母音のeとoの閉口音/開口音を守っていない、知らない方が多いので、注意しましょう。

研究の末に見つけた『日本人が知らないポルトガル語の音』

「知らない」と言うより、「学ぶ機会がなかった」
と言う方が正しいと思います。

先にお断りしておきましょう。
私が研究して見つけたのではなく、
「ポルトガル語の音声学業界ではとっくに明らかにされていた『事実』を、研究の過程で見つけた」という意味です。
この『事実』は、日本では一般的に出回っていない情報だと思います。
日本の母校の大学の音声学の教授の先生方は研究していましたが、一般の方がここまで探し当てようと思うことはほとんどないと思います。

aはぜんぶで5種類

私が研究しているうちに見つけた母音の音は、この12音以外に、aはあと3つあります。

[a] ... 開口音の[a]と同じだが、アクセントがないところでは少しだけ閉め気味に発音する

[ɐ]  ... 閉口音のa。鼻音n/m/ nhの前にあるときのaの発音。
ポルトガルでは基本の口母音のひとつとされていて、頻繁に出現する。
ブラジル発音の、上記の閉め気味の[a]をこの[ɐ]とすべきだとするポルトガル語話者の学者さんもいる。

[ɑ] ... alの文字列のときのa。alto, almoço, carnavalなど。音節末のlは[ɯ]「弱いウ」で発音しますが(ブラジルのみ)、このlを正しく発音すれば[ɑ]の音(舌の位置)は勝手に発音されるのではないかと考えています。

ポルトガル語の弱母音はeとoだけ

また、基本の12音と同じ音ではあるけれど、文字と発音の組み合わせが異なるパターンの母音もあります。弱母音です。

o [u] ... oの弱母音。唇の形は[u]にして、oを発音する。唇と口の中の状態で、[u]と[o]の2つをチグハグにさせる、或いは共存させる。日本語にはない音のため、多くの方が「ウ」で発音してしまっている。oと書いてあるのだから、「ウ」であるはずがない。

e [i] ... eの弱母音。音節末や、ブラジルだとtやdのあとのeに現れる。「〜と」という意味のeも[i]「イ」になる。

例) Eu e você.「私とあなた」
× エウ エ ヴォセー
⚪︎ エウ イ ヴォセー

接続詞eを「エ」と間違えている方が多いので、シビアな注意が必要。この接続詞eはポルトガルでも[i]「イ」。

弱母音と半母音の違い

弱母音とは、強勢のない音節で現れる、強度が弱い母音のことです。日本語には、明確に弱母音に分類される音声はないそうです。

半母音は、日本語で言うとヤ(ya)ユ(yu)ヨ(yo)、ヰ(ゐ/wi)やヱ(ゑ/we)など、母音に似てるけれども子音のような扱いをするものです。
つまり、同じ音節の中で他の母音を伴わないといけないものです。
yやwだけで存在することはできないから母音を伴うけれど、yはiっぽいし、wはuっぽい。
ポルトガル語では、二重母音の後ろの母音の音素が半母音/j/や/w/と認識されることがある。

ちなみに日本語の「ウ」は[ɯ]と表記するので、国際的な基準からすると、日本語の母音「ウ」は半母音くらいの力加減で発音するものだと言われている。

音素と音韻

音素は、発音記号とは異なる概念で、音の最小単位のことです。

音素 ... 抽象的な音の単位のことで、//で表記される。

音韻 ... 具体的な発音の変異形で、[ ]で表記される。これが「発音記号」と呼ばれるもの。
音韻は、音素がどのように発音されるかを示している。

先に挙げた二重母音の/j/や/w/は、「イ」や「ウ」の「音の素」が入っているという意味の表記。
発音するときには[i][u]の要素で構成して発音する。

ポルトガル語の母音の音は17パターン

余談が長くなりました。
まとめると、ポルトガル語の母音については以下のことが言えます。
※先述の通り、ブラジルに限ります。ポルトガルはもう少し複雑で数も多く、一筋縄ではいかない印象です。

文字: 5種類
a e i o u

音声:12種類
《口母音: 7種》
[i] [e] [ɛ] [a] [ɔ] [o] [u]
《鼻母音: 5種類》
[ĩ] [ə̃] [ɐ̃] [õ] [ũ]

aの種類: +3種類
[a] [ɐ] [ɑ]

弱母音: 2種類
o [u] e[i]

Ay Mariângela

音としては12種類ですが、文字が現れる場所や、特定の文字列によっては、更に5パターンが追加されるということです。
これらを使い分けられていますでしょうか。
辞書を見れば、これらの発音記号はすべて書いてありますので、ぜひ確認してみてください。

閉め気味の開口音[a]だけは、通常の[a]としか書いていませんが、アクセントがある記号[ ́]の直後にaがなければ、ほぼすべて閉め気味の開口音[a]になります。

例)
abandonar [abɐ̃do ́naɾ]「見捨てる」
最初のa...アクセントがないので閉め気味の開口音
an ... nasalの[ɐ̃]
最後のa ... 直前にアクセントを示す[ ́]があり、アクセントがあるaであることが分かる。つまりここは開口音のa。

日本語とも違うポルトガル語の母音

先ほど述べた「ウ」[ɯ]とu[u]のほか、
全てのポルトガル語の母音は、厳密に言うと、日本語の母音とは違う音になります。

[i]のみは同じ概念になっていますが、国際的な基準であるため、実際は異なります。
息を当てる方向や喉の状態など、日本語ネイティブにしか分かり得ない「クセ」を考慮すると、ポルトガル語の[i]を出すにも工夫が必要です。

「エ」や「オ」はポルトガル語の閉口音と開口音の間の音と言われていますので、日本語の状態で話すと「閉口音、開口音、どっち?」と受け取られてしまいます。

文字だけ見ると「日本語と同じだ!」と思って安心するかもしれませんが、蓋を開くとまったく別の言語であることが分かります。

私がいつも「日本語とポル語は、人間が話す言語であること以外の共通点はない」と申し上げているのは、この「母音の罠」がに気をつけもらいたいという願いもあります。
もちろん、他の面でもまったく異なります。いずれにせよ、正しくポルトガル語と向き合っていただきたいという願いが込められています。

せめて基本の12種類だけでも、使い分けられるようにしてください。

今回の話題に役立ちそうな動画

手前味噌で恐縮ですが、今回の内容と関連性が高い動画がいくつかあります。
ぜひご参照ください。

以下、鼻母音に関するものです。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
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꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』

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