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発注者がすべきは「デザインのジャッジ」ではないという話

「デザイン依頼」に関しては過去にこんな投稿↓もしていますが、今回は、デザインを依頼する側(発注者)がすべきは、決して「デザインのジャッジ」ではない、という話です。

発注者が「デザインのジャッジ」をしないのであれば発注者は何をすべきなのか?という疑問が浮かんでくると思います。私も発注者側(編集者)だったとき、「こんなビジュアルイメージにしたい」とか「こんな色を使いたい」とかいうヤツ、やらかしてしまっていたのですが、これ、依頼されるデザイナー側になってみると、かなーり困ったヤツだということがわかってきました。

ただ、そもそも依頼する側だっていろいろとわかってないわけなので、どうしたらいいかわからないですよね。ホントその気持ち、よくわかります。↑の過去の投稿でも書いたように、制作工程とかスケジュールの組み方とかは、遠慮せずにデザイナーに相談してもらったらいいと思ってます。前提としてこまめなコミュニケーションはほんとうに大事です。その上で、発注時やデザインチェック時に、発注者は何をしたらいいのかということについて、まとめてみたいと思います。

●依頼時(発注時)にして欲しいこと

発注者に徹底的にこだわってほしいのは「企画」です。具体的には、以下のような点を明確にしておきたいです。

・どんなシーンで活用する媒体なのか
・誰に受け取って欲しいのか(ターゲット)
・どうなって欲しい、どう感じて欲しいのか
 (どんな行動変容を望むのか)

ここがあきらかになっていることが、デザイナーがデザインを提案する上での判断基準になっていきます。デザイナーも、これらの「発注者の意図」を明らかにしていくための「壁打ち」のお付き合いすることが可能です。おそらく優秀なデザイナーであれば、壁打ちの材料としてさまざまな方向からデザインの例を提示し、発注者の持つイメージを広げて固めていくお手伝いをしてくれているはずです。私も自社のロゴマークをデザイナーである友人に依頼した際に、複数の方向性を示してもらうことで、自分の意志を確認していく体験をさせてもらいました。逆に上記のような「企画」が明確になっていないと、ターゲットの視点ではなく「自分のひとりよがりの視点」に寄った依頼になってしまい、結果として媒体の効果が薄くなってしまう可能性もあります。本当にここは要注意です。


●デザインチェック時にして欲しいこと

文字校正などのチェックはもちろんなのですが(完全原稿での依頼が望ましいのですが)、色をどうするかとかレイアウトをどうするかとかに関する修正指示は必要ないと思います。と言われると、あがってきたデザインの何をチェックしたらいいのかわからなくなりますよね。とはいえ、ぼんやり眺めて好みで判断するわけにはいきません。
こだわって判断すべきは、以下の点だと思っています。

・自分がターゲットの立場だったら、ここから何を感じるか?
 それは望む行動変容なのか?
・自分がターゲットの立場だったら、どんな違和感を感じるか?
 (わからない、読みにくい、など)

色やレイアウトをどうするかという解決策の指示は必要ありません。あがってきた課題に対しての解決策(デザイン)を再提案するのは、デザイナーがすべきことだからです。むしろ、上記の「課題感」なしに色・レイアウトの修正指示だけいただくのは、意味がわからないことが多くて実はけっこう困るってことがわかってきました。必要なのは徹底的にターゲットの立場に立って客観的に見て「どんな課題を感じるのか」を素直に伝えていただくということ。「自分がターゲットの立場だったら」という視点は、発注者だからこそ持てる視点。発注者がこだわるべきは、この媒体で目的が達成できるのか(ターゲットに望む行動変容が起きるのか)ということだからです。もちろんデザイナーも、常に視点を変えながら考えていますが、制作物を詳細まで見て向き合っていると、それがむずかしい側面も出てくると思います。ここは役割分担と連携が大事なのです。

で、こういう、「発注者である自分は何をしたらいいのか」がわからない場合はデザイナーに相談しちゃった方がいいですよ、ということは、声を大にして言いたいと思っています。「発注者と受注者」という単純な構造で効率的に処理しようとしたり、「依頼した通りにやれ」と迫ってみたり、丸投げにしたりするのが、一番良くないです。めんどくさがらずにこまめなコミュニケーションを取った方がいいです。(という意味では、クラウドソーシングの仕組みって、よくない部分もあるよなぁ・・・と思っていたりします。)

↓全くデザイナー色のないプロフィールですがデザインの仕事もしてます↓

松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」「クリエイター」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。2020年京都造形芸術大学通信教育部(グラフィックデザイン)を卒業。デザインで学びをおもしろくします。
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