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「大丈夫?」と小学生に心配される(一人暮らし3週間目)

※今回は痛い話なので注意です!

目覚ましよりも10分早く目が開いた。さて、待ちに待った土曜日だ。今週はとにかく大変だった。連続で出社したり連続で医者に行ったりバーチャル世界で自分を殺してすごしたり。金曜日はもう燃えカス状態で、椅子に座って虚空を見つめて8時間をやりすごした。

いいこともある。木曜日、ようやくドクターストップが解けた。ようやく走れる。でも、その前にまずはミッションがある。

髪が伸びてきたから切りにいかねば。そして初対面の人と30分ちょっとしゃべる。さあ、がんばろう。そのあとにやっと走れるぞ。

美容室に入る。「雑誌を読むならタブレットでどうぞ」と差し出された。が、今日は話す気だったのでタブレットは使わずにあえて話しかける。結果から行くと、成功だ。ちゃんと話せた。


帰宅し昼を食べ、さて、ようやくランニングだ。慣れないランニングコースへ足を踏み出した。

3週間ぶりか。一人暮らしを始めた。2日目で医者に止められた。バーチャルでのやりとりに心をすり減らした。ようやく家が快適になってきた。思えば、とても濃密な時間だった。

久々だから10キロにしておこうか。でも楽しくなってくる。景色が移っていく。慣れないオブジェがかわいい。結局6キロ走って折り返すことになった。


10キロ。足が重くなってきたけどまだいける。あと2キロだ。家に帰って餃子を焼くのが楽しみだ。

足がもつれた。
必死に受け身を取る。
右手がアスファルトにぶつかる。
眼鏡が吹っ飛んでいく。
頭に軽く衝撃。

起き上がる。

左足、異常なし。
右足、異常なし。
左手、異常あり。
右手、異常あり。
顔、ぬるっとしてる。
眼鏡、曲がってる。

状況は。スマホを使って顔を見る。

良かった。幸い、全部擦り傷だった。たくさん擦りむいたけど、どれも出血は重くない。


こうなったら仕方ない。近くの駅まで歩いて電車で帰ろう。赤と白のまだら模様になったタオルを頭に当てて乗る青年が駅のホームに一人。

最寄り駅に着いた。そういえばばんそうこうは買ったけど消毒薬はまだだった。薬局へ入る。

「すいません、消毒薬はどこですか」と血が付いたTシャツで店員に話しかける青年が一人。あえて突っ込まずに事務的に対応してくれた店員の気遣いがありがたかった。


レジ袋代がかかるので裸の消毒薬を持ちながら歩く。ようやく家が見えてきた。と、小学生の少年3人とすれ違った。

「痛そう」

後ろから小さく聞こえた。大丈夫、痛みは大したことないからと心の中で答えると、

「大丈夫ですか?」

振り向くと眉をへの字にした少年と目が合った。心配してくれた。

「消毒薬も買ったし家近いから大丈夫だよ。ありがとう!」

自然と笑顔がでた。転んだあと初めての笑顔だ。心配させないように消毒薬を持った左手をぶんぶんと振った。ありがとう。やっぱりこの場所、いいところだ。


家に帰って鏡を見ると、頭から顎まで乾いた血痕が線になっていた。なるほど。この状態で電車に乗っていたのか。さらに、シャツを脱ぐと右肩に真っ赤な入れ墨ができていた。どうやら受け身をとろうと肩全体から地面とぶつかったみたいだ。幸い全体に分散したおかげで傷は浅い。体育で柔道を学ぶのは意味があったんだなと感心した。


意図せずに「血を流しながら電車に乗る」「血を流しながら薬局に行く」「小学生に心配される」と物語みたいな実績を解除してしまった。

しかしいきなり転ぶとは。もう前のように無理できない年齢になってしまったのかもしれない。

しばらくはおとなしくしていようと思います……。

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