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コルドバへ、ようこそ。 〜スペイン一人旅日記〜

※このnoteは、2019年5月〜6月にかけてのスペイン一人旅の記録を振り返りつつ綴った旅日記です。

アンダルシアの旅の終着地はコルドバだった。

わたしにとって、コルドバはスペインに興味を持ち始めた高校生の頃から特に憧れていた街だった。それが、旅を経てもっともっと好きになり、思い返すだけで胸がきゅんとするような大切な場所になった。

マラガからコルドバまでは、ALSAという高速バスを使って2時間15分の距離だった。14時頃にコルドバのバスターミナルに到着し、そこから旧市街にある滞在先のホテルまで市バスで移動した。

コルドバといえば、イスラム系王朝、後ウマイヤ朝の首都として繁栄を極めたイスラム文化の残る街。特にメスキータはキリスト教とイスラム教の文化が入り混じった歴史的にも美術的にも素晴らしい歴史遺産である。この日はメスキータのナイトツアーを事前に予約していたので、それまでのんびり街を散策することにした。

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高速バスから見えた景色。アンダルシアの街と街の間にはオリーブ畑やヒマワリ畑が一面に広がっていた。景色を眺めお気に入りの音楽をイヤホンで聴きながら、次の目的地を目指す。

バスがコルドバに到着し、駅を降りてまずびっくりしたのは、ターミナルの端でティーンエージャー(いや、中学生くらいに見えた)の男の子数人がタバコを吸ってたむろしていたことだった。「コルドバを降りたら、そこには歴史情緒溢れる街並みが…!!」とワクワクしていたのでちょっとびっくりしてしまった。

予約していたホテルはコルドバ歴史地区の中にある小さなホテルだった。建物の真ん中に吹き抜けのパティオ(中庭)があり、白を基調としたとても清潔な雰囲気。フロントの女性は笑顔のステキな優しい人だった。料金は1泊35€で、他の街に比べてもコルドバは宿泊代がとても安かった。それなのにお風呂場にはバスタブが付いていてエアコンもしっかり効いて、大満足のお宿であった。

チェックイン後は街を散策しレストランで夕食を食べ、いよいよお待ちかねのメスキータの予約時間となった。開場の時間まで入口で並んでいる間にアナウンスがあり、ナイトツアーは写真撮影・録音が禁止だということを知った。そのため、この場で写真と一緒に中の雰囲気を伝えることができなくて、申し訳ないです…。

メスキータの中に足を踏み入れると、想像の何十倍にも厳かな雰囲気が伝わってきた。アーチが美しい赤と白の円柱は、まさに木々のように堂々とまっすぐ佇んでいる。百聞は一見に如かず。建物内は天井は高く、ピンと冷たい空気が張り詰め、ここは祈りの場だということが肌から伝わってきた。

建物内はとにかく広かった。こんなにも広い場所で、何千、何万人もの人がこれまで神に祈りを捧げてきたのだ。メスキータの歴史は6世紀頃から始まるとされているから、もう1400年以上も、この場所が祈りの地として人々に大切にされていることになる。美しい柱の一本一本を眺めながら、こうしてこの建物が今も変わらず残っていることが何だかとんでもない奇跡のような気がした。

ナイトツアーは、音声ガイドに沿って進んでいった。一つの箇所で説明が終わると今いる場所の灯りが消え、次の場所がパッと明るくなり、進む方向が見えてくる。

教会内部もほぼ真ん中まで来たかな…と思っていたら、新たな場所が光でぱっと灯された。その先にはキリスト教の教会の祭壇が堂々と黄金に照らし出されていた。イスラム教様式の円柱の森、そしてキリスト教のカテドラル。それらが合わることで、言葉では表せない、荘厳な雰囲気を醸し出している。この場所に来れたことにもう充分感極まっていたが、カテドラルの美しさにさらに感極まり、ポロポロと涙が出てきそうだった。

メスキータは、言葉にならないくらい素晴らしいところだった。

観覧後、興奮冷めやらぬまま歩いていると、メスキータそばにアイスクリーム屋さんを見つけた。この旅では体重を気にして夜のデザートを控えていたが、今日は特別!ということでアイスをダブルサイズで注文した。

ちょうど外の席が空いていて、そこからメスキータが見えた。ライトアップされたメスキータと街の景色を愛でながら、アイスクリームを頬張る。初夏の暖かい夜風が、さっと肌をなでる。その気持ちよさといったら最高だった。アイスクリームも美味しかった。特別な日のアイスクリームは、なおさら美味しく感じる。

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右の大きな建物がメスキータ。街はライトアップされてとてもキレイだった。

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歴史地区の道幅は狭く、白い建物が軒を連ねる。ちょっと迷路に迷い込んだような、そんな錯覚を思わせる。

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アイスクリームを食べた後街をぶらぶらしていると、フラメンコの衣装を着た人をよく見かけた。そういえばメスキータに向かう途中でフラメンコの衣装を着た女性やスーツを着た男性グループを見かけたことを思い出した。地元のイベントで、終わって帰るところなのかな。みんなワイワイ何か話していて楽しそうで、わたしまで楽しい気分になった。

イスラム文化の残るメスキータ、迷路のように入り組んだ街、そしてフラメンコの衣装を着飾った女性。ああ、わたしが思い描いていたコルドバそのものだ。

そんな雰囲気を味わいながらゆっくり歩いてホテルに着いた。歩き疲れたのでバスタブに熱いお湯をためてゆっくりお風呂に入った。

お湯にのんびり浸かりながら、「ねえねえ、わたし、コルドバに一人で来たよ。メスキータは想像の何十倍も素晴らしいところだったよ。」と、10年前のあの頃の自分に向かって、心の中で呟いた。








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