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企業研究所の役割とスタートアップの関係

突然ですが研究者の動機はどんなものだと思いますか?個人的には以下の2つの要素がグラデーションのように混ざっていると理解しています。それは、

①好奇心(curiosity)
②貢献心(contribution)

だと私は考えています。研究は個人でやる場合もありますが、何らかの研究組織でチームでやることが多いと思います。①好奇心と②貢献心のグラデーションの中に世の中の「研究組織」をプロットしてみました。完全な主観です(笑)。

研究の動機と研究組織のポジショニング

純粋な基礎研究は大学や公的研究機関で行われるべきでしょう。具体的な社会貢献がまだ見えていなくても、人類のあくなき好奇心、探究心でドライブされるべき研究です。これは図の左端になります。一方右端は貢献に焦点が当たっている研究。これは企業の商品開発部門あたりのイメージです。

近年イノベーションの中心的役割を果たしているスタートアップは特にTech系のスタートアップは研究的な要素もありつつ比較的短期の市場成果を求められるので、右寄りにプロットしてみました。

さて、今回のテーマは企業研究所(Corporate Research Institute)の位置づけです。1960~1970年代は産業のイノベーションはもっぱら企業研究所で生まれました。日本でも昭和40年代にいわゆる「中央研究所ブーム」がありました。これは欧米に肩を並べた日本企業が新しい事業創出に基礎研究が必要だという考えを持つに至ったからです。

しかし国内の企業研究所はバブル崩壊後から徐々に力を失っているように見えます。環境背景としては、自前主義からオープンイノベーションへの環境変化、さらにスタートアップエコシステムの発展などがあげられます。外部リソースを活用するオープンイノベーションはとても大事な考え方ですし今後もより洗練されていくべきですが、その一方で企業研究所が軽視されるなど機能不全を起こしていることも多くあるように思います。

スタートアップはVCの出資を基盤としているため比較的短期の事業創出を求められますが、企業研究所は本来、長期安定した研究予算により、不確実で時間のかかる研究成果をものにしてきました。旭化成が数十年の研究でカーボンファイバーの事業化に成功した例はよく知られています。

私も電機メーカーの研究所で20年近く研究員を務めた経験があります。80年代から90年代の輝かしい研究所の記憶もまだ残っています。企業研究所はその企業の戦略意図を明確にし、新しい事業を創り出す見識を持たねばなりません。世の中の優秀な研究人材を結集させればそれは可能だと考えます。そのためには、オープンイノベーションやスタートアップエコシステム、CVCと有機的に連携した、新しい組織マネジメントが必要です。

具体的な方策案については別の機会に書きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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