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美しい瞬間は孤独で、愛にあふれてる



今日は散歩をしよう。

そう言って布団をたたみ、身支度をした。


我が家から100mほどのところにある、山に続く道の入り口に向かう。

ふわっと、湿気を含んだ、山の匂いに包まれる。


整備された道に、木々や石が転がり、
いつしか自然にのまれていく。


カエルが跳ねる。

水が土に吸い込まれていく音が聞こえる。


細くなった道が途切れる場所で、空に響く鳥の声に耳を澄ます。




来た道を戻る途中、振り返ると木々のあいだから光が差し込んでいた。



「何かを本当に美しいと感じる瞬間は、孤独だね」

そう言うと彼が不思議そうな顔をする。

「だって、美しさはその瞬間にしかないでしょう?
 写真に撮っても、言葉にしても、
 わたしが今この瞬間に感じた本当の美しさは誰にも共有できない。
 自分の心の中でしか感じられない」

それを聞いて、

「今、一緒に感じているよ」

と彼が笑う。



昨晩降った雨で濡れた草花が揺れる。




山道を降りながら、「大好き」と伝えたくなっている自分に気づく。


「美しいものを見ていると、なぜかあなたに大好きと伝えたくなるよ」

「心が澄んでいるのかな。僕も同じだよ」




山を出ると、家の周りの景色も鮮やかさを増していた。




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