「マクベス」
原題:「Macbeth」
監督:ジャスティン・カーゼル
製作国:イギリス
製作年・上映時間:2015年 113min
キャスト:マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール
説明するまでもなくシェイクスピア四大悲劇の一つの映画化。予告は見事なほどに良い場面を凝縮しておらず全くこの映画の本質を伝えていない。このことは観る側にはとっては幸い。シェイクスピアの耳慣れた台詞を随所で戯曲集を読むのではなく台詞として聞くがそれが不思議なほど演劇の様な大仰さではなく自然な台詞回しとして響く。但し、シェイクスピアの作品にこれまで全く触れていない人にとっては独特の詩的表現や暗喩は字幕に追われ難解と感じるかもしれない。*歌舞伎を口語で演じられない様にシェイクスピアもかみ砕いた台詞は意味をなさない。
演劇の舞台では不可能なスコットランドの荒涼とした風景を背景に「映画」「演劇」「写真集」この全てを観ているような計算しつくされた映像美に息を飲む。中世はこうであっただろう採光、建築、衣装、時代考証が或る故に絵空事ではない叙事詩の世界が立ち上がる。美と醜、明と暗、静と動、対極に位置するものを見事に低いcelloの絃の音を纏い物語を紡いでいく。正気と狂気は相容れないものではなく共存していることをマイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤールが演じる。衣装からメーク一つ、何一つ見逃せない。観ている間、通奏低音のように黒澤監督の色彩感覚「黒と赤」が離れなかった。
★★★★★
*二回観てしまいました
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?