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「もののけ姫」

監督:宮崎駿
製作国:日本
製作年・上映時間:1997年公開 133min 
キャスト:(声)松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦、上條恒彦、美輪明宏、森光子、森繁久彌

 時代設定は室町時代。この時代でも既に自然と人間の共存関係が崩れ、日本的な自然界に属する神と人々との関りを描く。
 その意味では主旨的に「風の谷のナウシカ」と重なるが、内容的にはまるで歴史の勉強をするかのように世相が反映し書き込まれファンタジー要素からは離れる部分がある。

もののけ姫3

 エボシ御前の存在は、「風の谷のナウシカ」のクシャナとの単なる敵対する対立よりもその存在は奥が深く描かれる。

もののけ姫2

もののけ姫6

 いつの時代にも存在する社会的弱者がここでは虐げられた女性とハンセン病という形で町から離れた場所ではあるが、偏見に苦しむことから解放され生き生きとした姿を描く。しかし、エボシ御前が守るこのたたら場部分は単にジブリ作品の括りで来た幼い子には伝わらないだろう。

もののけ姫5

 自然と人間と対立が容易に見えはするが、少なくとも作品内で描かれる対立はこの一つだけではない。絡み合って対立する様相は現代の利権を伴い争う姿と何ら変わりはない。

もののけ姫4

 そうした作品観の中で、古事記の遠い昔から神の使いとして存在していた鹿をここではシシ神と存在させているあたりは至って違和感がない上同時に宮崎駿氏的ではある。

 「風の谷のナウシカ」と圧倒的に異なる点は声優陣に専門の人々を充てずに俳優を配した点だ。本来なら知名度(認知度)がある俳優の方々を適用することは俳優個々のビジュアルが浮かび作品を邪魔する要素が非常に高い。
 しかし、見事に俳優の皆さんが本来自身の姿を消し、まるで作品内のキャラクターに乗り移った吹き替えは見事だった。

もののけ姫1

 一度壊した自然が容易に元通りにならないことを伝える辺りは現実的であり、かなり辛口の警告で終わる。
 それを超えてキャッチコピーにまでなっている「生きろ」の意味も、また、多くの死を描くことで印象に残す。
★★★★



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