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「ブルックリン」

原題:BROOKLYN
監督:ジョン・クローリー
製作国:アイルランド、イギリス、カナダ
製作年・上映時間:2015年 112min
キャスト:シアーシャ・ローナン、エモリー・コーエン、ドーナル・グリーソン、ジュリー・ウォルターズ

 先週から今週は観たいIrelandの映画が3本続く。Easter Rising 1916-2016の為にわざわざこの春二度目のDublinへ行った私に関してはかなり「Ireland」のバイアスがかかってのreviewとなる。
 Ireland在住の知人が「IrelandとIcelandを未だに間違われる」と嘆くように一般の人にはこの映画の背景Irelandはそれほど気にならないのだろう。おそらく移民の女性が頑張りながらも彼の地でホームシックにかかり、しかしながら恋人を得て乗り越えていく、と予告のベタ通りの印象で終了か。
 映画のtitleこそ「ブルックリン」だが全編通して描かれているのはIrelandのあの当時。シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソンのお二人はアイルランドの俳優。自国を描くとなるとそこには思い入れもあったに違いない。

 現在はこの船が出た場所はメモリアル的な場所になっている。移民せざるを得なかった背景は「職が無い」程度に留まり深く描写されない。寧ろあの時代、父親を亡くした後母と娘二人暮らすことは非常に困難であった筈だがあまり悲壮感は描かれていなかった。確かに彼女が用意しているスーツケースの中身は貧相だったが瀬戸際に追い込まれた感は無いために、観る側には余裕が生まれ予告にある恋愛も許容内に入っていく。
 カトリック教会の後援でアメリカに渡る。同じく、住まいも準備され其処で会話されることも如何にもいった感の教会管轄寮の趣き。夜間の大学通学への諸経費もカトリック教会が資金援助をする。ホームシックの心配をするのも神父さま。彼女の生活とカトリックは切り離せないが無宗教の日本人にはこうした部分はスルーかもしれない。
 アイルランド伝承曲『Castle Finn』『Casadh An Tsúgáin』『The Stack of Barley』が映画の中で歌われる。特にクリスマス奉仕シーンでの歌(Casadh An Tsúgáin)は其処がブルックリンではなくアイルランドへ皆をいざない、心に残るシーン。
 キャステイング、特に助演、脇役が良く、期待していなかった映画だったが最後までそこそこに纏め上がっていた。寮母役のジュリー・ウォルターズさんは個性強く印象に残り、また神父役のジム・ブロードベント氏の演技も全体を浮き上がらせずに出番は少ないながらも外せない好演。三角関係の夫々男性役二人も演技を観ていると結末は自ずと解る、適役だった。

 エモリー・コーエンとの共演についてインタビューで「私たちには初めから不思議な結びつきがあった。二人の間ですぐに化学反応が起こったの。…役を演じていない時は私のアイルランドジョークに彼が必死について来ようとするという、私が常に彼を試しているような関係だった。つまり、エイリシュとトニーと同じように冗談を言い合える仲なの。すぐにそんな関係になれたから一緒のシーンを演じる時には既に役に入られる状態だった。」と振り返り、一方エモリーも「僕たちは完璧な組み合わせだったかもしれない。シアーシャはアイルランドの女王のようで、僕はニューヨークの廃品置き場の犬のようだからね。」と語り、役さながらだったと云う。

 時代背景とカトリックの私から見ると「それは…」という部分が数カ所あり、こうしたところが映画演出ではあるが誤解を招き残念。
★★★






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