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「虐殺器官」

原作:伊藤計劃
監督:村瀬修功
製作国:日本
制作年・上映時間:2017年 115min

 私は好きな物は最後に食べることが殆ど。似た所でこれはとインスピレーションに触れる本は日々の遣り繰りした時間ではなくて落ち着いた時間に読みたいと並行読みの本をグループに分けて行く。「虐殺器官」もいつか読もうと置いている内に映像に先に触れてしまった。

 原作未読での感想になる。話全体としては時間不足、詰め込み過ぎだろうことが伝わる。それでも、近未来の映像をCGオンパレードで現実感を無くすよりもアニメーションの選択はよかったのではないか。所々に入って来る情報管理の話は執筆されてから10年経つと絵空事ではなくなっていることが怖い。
 [10日間。これが、伊藤が『虐殺器官』の執筆に要した日数だった。転移発覚の翌月に肺の一部を切除し、約9カ月間抗がん剤治療を続け、寛解した06年5月に一気に書き上げた。]この本は彼にとって序奏であり、エッセンスだ。おそらく、この後生き続けることでこのエッセンスは更に精度を増し、変奏曲よろしく新たなテーマを生んだだろうことを考えると彼を追い込んだガンが悔しい。「両足がなくなっても書きたい。僕はこれから20年、30年書きたいことがいっぱいあるから、どうしても、何を失っても生きたいと、そう言っていました」足から始まったユーイング肉腫と闘いながら彼は希望を云っている。 *AERA 2015年10月26日号より抜粋

 冒頭で月光の旋律が流れる。映画の終わり近くで月光の元展開するシーンは意図的だったのか、此方の深読みか。描かれる場面は殺戮が多く決して綺麗な類の画ではないが、明度が落ちた画は印象に残る。マシンガントークさながら言葉が連射される。実写であればそこにもっと演技が入り言葉の全体量は減っていただろう。映画の中での言葉もまた無意識にスクリーンの此方に働きかけ繰っているのかと苦笑い。館内は9割が男性だった。
★★★☆


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