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「彼らが本気で編むときは、」

監督:荻上直子
製作国:日本
制作年・上映時間:2017年 127min
キャスト:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか

 奇を衒わずに丁寧にLGBTQを描いている。この映画を観た後に大阪で男性二人に養育里親の認可が下り(2017/4/5)、映画がフィクションに走らずに描かれていた分まるで映画のその後を聞いているようなうれしい錯覚があった。

 最近気になる邦画の時は生田斗真がキャステイングされていることもあり、彼のファンでは決してないがこのところ様々な役をこなしているところを観る。予告のlevelでも実際映画が始まってからも、しばらくの間は生田が演じるリンコに馴染めなかった。リンコの台詞にもあるように手も大きく華奢ではない、本当に男性?と云われても首を傾げるタイプではない。でも、現実では躰と心が大きく隔てられて苦しむ人の方が多数を考えるとこれはrealに近いキャステイングになる。

 桐谷健太も誠実なパートナーと不甲斐無い姉を持つ弟を好演。トモ役のりんかちゃんも又演技過剰にならず今時の小学生のいい演技だった。
 脚本には遊びがあり日本ではまだ認識が一般的とは云い難いLGBTQを描きながらも笑いを起こし全体の緊張を自然と和らげている。*もしLGBTQが世間一般に受けいれられているのであれば冒頭の大阪の件にニュース性はない。

 LGBTQとほぼ同じ割合でネグレクトが描かれている。実際に仕事の関係上ネグレクト児童の実態を知っていることもあり描かれている風景は演出ではないことが悲しい。映画のようには現実は解決はしないことも多々あり、エンディングは些か甘いかと映る。それでも、声高に叫ぶでもなくまるで春のさくらの季節の様なやわらかさに包んで問題提供したことは日本では良い形なのだろう。偏見をなくすことは容易ではないが諦めず知らせ続ける必要はある。
★★★☆

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